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神の力、そしてそれを穿つもの 2


「うっ! やば……」


「悪いな。吹き飛べ」


 先ほどは一段階解放させただけで今は全てを出し惜しみなしで解放させたのだが、マーズも思った以上の力に少しだけアルとルシフェルに迫る速度が落ち、さらに目を顰めてしまう。


 その瞬間をルシフェルたちが逃すはずがなく、しっかりとその隙を見てルシフェルはマーズの脇腹に蹴りを一発入れ勢いよく吹っ飛ばす。


 マーズはルシフェルに蹴りを入れられ顔をしかめていたがやられっ放しのマーズではなく飛ばされている最中に魔法陣を生成してルシフェルの着地地点に設置式の魔法を発動した。


「ルシフェル、そこ危ないよ」


「わかっている。全く、負けず嫌いにもほどがありすぎるだろう」


「それ踏んでたら一瞬で消し飛んでるからね。マーズさんも本気で僕たちを殺しにかかっているわけだ」


 そう、マーズが仕込んだ設置型の魔法陣の威力はとても牽制と思われるものではなく踏めば確実に今のルシフェルたちでも無事ではいられないほどの魔力が込められていた。


 それを一瞬で組むことができているマーズはマーズですごいのだが、今までまだ両者ともに模擬戦の範囲の威力で相手が死ぬような威力での攻撃は一切なかったのだが、先ほどの魔法陣に込められた魔力は確実に致死性の魔力が込められていた。


 別に両者ともに致死性の威力を込めることを禁ずると明確に言っていなかったのでマーズの魔法陣が反則というわけではないのだが、マーズが本気でやってきたことにアルもルシフェルも少しだけ動揺してしまった。


「まぁ、最悪カエデか創造神が我らを復活させてくれるだろうから問題はないんだろうが……」


「向こうがやる気なら僕たちもその気でやっていいってことだよ。あと始末はカエデたちに任せて僕たちも殺す気で行こう」


「わかった」


 向こうがやる気ならばこちらもということでアルもルシフェルもマーズを明確な敵と認めて殺気を隠すことすらしなくなった。


 最初は若干不服そうだったルシフェルも殺気を出す頃にはやる気満々の様子でかなり張り切っているようでマーズから同等の殺気が発せられるとそこに向けて神眼を発動させた。


 今回ルシフェルが使用したのはいつものような妨害系のものではなくれっきとした攻撃性のあるものでルシフェルの目が赤く光るとマーズがいるであろうところから天まで貫く火柱が上がっていた。


「見た感じ神眼の威力も上がってるみたいだね」


「あぁ、この威力だと結構なダメージが入ってそうだな」


「まさかその神眼が攻撃性のものも使えるなんてな。全く誤算だったぜ」


 アルとルシフェルがのんきに話をしているとマーズが右腕から血を流し、苦々しげな表情を浮かべながらそう悪態をついた。


 マーズは先ほどのルシフェルの神眼の攻撃を右腕で受け切ったのか右腕の袖だけこんがりと焼けており血も流しているが、他は特に大きな被害はなく最小限でルシフェルの攻撃を受け切ったようだった。


「チッ、もう右腕は使い物にならないみたいだ。お前たちとの戦いはすげぇ面白かったが、次で終わりにさせてもらうぞ」


「その様子じゃその方がいいだろうね。僕たちも全力で対処させてもらうよ」


「もともと本気だったが、頑張って受け切ってみせよう」


「いうね。死んだらカエデくんか創造神様が生き返らせてくれるだろうから全力で行かせてもらうぜ?」


「さっきからそのつもりだっただろ? 今更無粋なことを言うな」


「ハハッ。それもそうだな! じゃあ、本気で殺しに行かせてもらうぜ!」


 マーズはそう言うと瞬間移動を使いルシフェルとアルから距離を取り今までで一番大きい太陽を発生させる。


 直径100メートルはありそうなかなり大きな太陽でそれが地面に落ちるだけで世界が崩壊しそうなものだが、現在進行形で急いで楓とイリアが補強を開始しているので多分大丈夫だろう。


 まぁ、楓はともかくイリアが「後で一回殴る」とマーズの方を見ながら何やら物騒なことを言っているが、自己責任なので仕方がないだろう。


 マーズが太陽を精製している間にアルはブレスを、ルシフェルは神眼に魔力を貯めてそれに応戦するための準備をしており、こちらもこちらで先ほど覚醒したこともありかなりの威力になることが想定されさらに楓たちが頭を抱えることになっているが戦っている本人たちはそんなこと一切考えてもいないのだろう。


「さぁ、これで最後だ! 溶けて死ね!」


「ルシフェル! 行くよ!」


「あぁ、行くぞ!」


 マーズの太陽とアルのブレスとルシフェルの神眼がほぼ同時に放たれ3秒もしないうちに両者の魔法はぶつかった。


「クッ⁉︎」


「これはっ⁉︎」


「ガッ⁉︎」


 両者の魔法がぶつかった瞬間、ものすごい衝撃波が発生し一応相殺はしているもののその余波だけでアルとルシフェルはもちろんのことマーズでさえも瀕死の状態へと陥ってしまった。


 観戦席の結界も一度剥がれてしまいもう少しで日向たちにもその余波が来そうになったが寸前で楓がさらに強力な結界を張ったのでなんとか巻き添えを食らうことはなかった。


 だが、やはり直で食らったルシフェルとアルはもう立つ気力も残っていないようで同時に倒れこんでしまう。


 アルの場合ドラゴンの姿のままぶっ倒れたのでそれだけでさらにダメージを負っているだろうが、それでも死ぬことはなかった。


「はぁ、はぁ、これで、俺の、勝ちだ」


 マーズはまだギリギリ立つ気力は残っているようだが、それでもこれ以上動くことはできないようで手を膝に置いていきをかなり乱していた。


 だが、それでもアルたちに勝利したことが嬉しいのか自分の勝ちを喜んでいる。


 まだ一人、一切戦っていないものがいることも忘れて……


「「あとは託した」」


「かしこまりました」


「何⁉︎」


 そう、最初に姿を消してから安全圏でアルたちのことを見守っていたセバスがマーズを倒すためにここぞと言うところで現れたのだ。


 セバスはこのチャンスを逃すまいと一発の拳にかけるため、マーズの目の前に現れると拳に魔力を纏わせ全力全開のパンチをマーズの鳩尾にめがけて放つ。


「ガハッ、ま、さか、俺が、負けるとは、な……」


「おいしいところを持って行ってしまったようで申し訳ございませんが、私たちの勝ちでございます」


「お、も、しれぇ、な」


 最後に、マーズは自分がやられたにも関わらず嬉しそうな笑みを浮かべてアルたちと同じように地面に倒れアルたちの勝利が決まるのであった。


 なお、模擬戦が終わったあと四人とも楓によって回復魔法をかけてもらい全回復したのだが、その後楓とイリアによって一発ずつげんこつをくらい戦った時以上のダメージを負うことになるのだが、四人ともまだそんなことなどつゆとも知らずに模擬戦の余韻に浸っているのであった。

 

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