迷宮探索10
その後、魔物を狩るスピードと歩く速度を上げたのでわずか30分程度で第十五階層への階段を見つけた。
「本気を出せばこんなもんだな」
「そうだね、まだまだ余裕もあるし。それよりこの階層のボスってどんなのかな?」
「分からないけどもうほとんど人はいないからな。さっさと攻略してしまおう。ここを抜けたらもう人に会わなくて済むだろう」
この階層にはわずか5人パーティー一組が野営の準備をしているのみだった。
「誰も並んでないからこのまま突っ切っちゃうか」
「そうだね。この階層迄は私にやらせてほしいな」
「分かった。なら俺は万が一の為の後方支援をするよ。そろそろ油断してると日向は危ないだろうから」
「ありがとう、じゃあいくね!」
今回は日向が扉を開ける。
でかい、全長10メートルはあるんじゃないかと思われる程に大きなオーガだ。
これをオーガと言ってもいいのか分からないが。
とりあえずステータス確認っと。
ーステータスーーーーーーーーーーーーーーーー
オーガ(異常種)Lv38
種族 鬼族
体力 1500
筋力 1000
敏速 300
知力 300
魔力 50
幸運 100
スキル
状態異常無効 Lv5
身体強化 Lv2
ユニークスキル
渾身の一撃
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だいぶ強くなってんな。これ、ふつうにAランク冒険者いるんじゃないか?
とりあえず日向に攻撃力アップと防御力アップの支援魔法をかける。だがしっかりと手を抜いたぞ!どちらも2倍までしか上げていない!
『普通の魔法は一割しかステータスに影響されませんよ…』
この位はセーフにして欲しいな…
「日向支援魔法はかけた、こいつはなかなか強いぞ。今の日向では互角と言ったところだまぁ魔力は圧倒してるから魔法でなら余裕だと思うがそれだけが戦闘じゃない。いかに隙を作るかが大事だからな」
「ありがとう!うん!分かった!」
日向はそう言うと空を飛んでオーガとの距離を縮める。
ほう、その手があったな。そういえば日向もこの前ので飛行魔法はものにしてたな。
日向はどんな戦い方をするかな?前の階層のゴーストキングの時もなかなか工夫してたし今回も楽しみだ。
「爆裂魔法!」
日向は初手で爆裂魔法を選びやがった…工夫もなにもないただの力技だ。故に威力は高く油断していたオーガはもろに日向の爆裂魔法を受ける。
中級魔法の中でも威力が1、2を争うだけあってオーガの右肩から下の機能を停止させている。
これはでかいな。オーガもまさかこんな小娘ごときにやられるとは思ってなかったらしく怒りの咆哮を放ち日向に駆け寄ってくる。左手に持っていた剣が光りだす。
やばい!あれが渾身の一撃か!
渾身の一撃とは次の動作迄が決定的に遅くなる代わりに一撃のスピード、威力が桁違いにアップする。あれをもろに食らえば日向も死にはしないだろうが重傷だろうな。どうする?ちょっかいを入れるか?などと俺が考えていると何故かオーガの左腕が構えたまま動かない。
「残念だけど風の魔法であなたの腕を擬似的に拘束してるから動かせないよ。しかも切り傷程度なら入っていくから早く抜け出さないと鬱陶しいよ?」
日向は風魔法を使いこなしてオーガの一撃をカバーしているみたいだ。そのまま日向は水魔法で日向の前に大きな水の塊をだしそれを圧縮していく。そして出来上がった圧縮ボールをオーガの口の中に入れる。そして10秒くらい経つと…
バァーン!
轟音とともに水の球はオーガの口の中で弾けオーガもろとも破裂していく。うげ、なかなかグロいな。それをやった日向さんといえばやりきったような顔をしておでこの汗を拭う仕草をしている。
この子なかなか容赦ないかもしれない。
怒らせない様にしないと…
「お疲れ、なんかドロップ品はあったか?」
「うん!私より少し小さい杖が手に入ったよ!」
日向は自分より少し小さい杖を嬉しそうに抱きしめている。なんせ初めて自分の力で手に入れた武器だ。嬉しいに違いない。
「それじゃあ普通の時はそれを持って歩くといい。そしたら俺達二人共武器を持っていない丸腰野郎と見間違えられる事はなくなるだろ」
「そうだね。あまり重たくないから持ちやすいしそれがいいね!」
日向はご機嫌である。
「なんだかんだでオーガの異常種に対して圧勝してたな。最後のあの魔法は俺もびっくりしたよ」
「そう?ありがとう。まぁオーガも私を見て油断してたところもあるから偶然と言えばそうなんだけどね」
日向の言っていることは間違いではないがそろそろ本当に日向に一般的な力を見せないと俺基準でものを話すから日向が自分の強さを自覚していないのである。
『すでに遅いですが、マスターは日向さんに一般的な冒険者達と戦わせてあげてください』
ナビちゃんだけがこの中でその事に気付いていたが、肝心の俺はまったくナビちゃんの独り言を聞いてなかったので二人の勘違いは一向に直る気配がないのだ。
「偶然でも勝ちは勝ちだ。今日はもう遅いだろうから下に降りたらすぐに夕食の支度をしよう。今日は少し力を入れて料理を作るよ」
「ほんと?やったー!」
二人は嬉しそうに野営の準備を始めていくのであった。そろそろ人類では到達しうる最高の所迄行くのだが二人は全く自覚がない。
それと少し力を入れて作った俺の料理は日向が気絶する程の美味しさだったとつけ加えておこう。




