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転生者の力(笑) 3


 第二ラウンドはもう一方的な戦いであった。


 日向たちが攻撃を仕掛けるようになった瞬間、転生者たちは防戦一方となってしまい、このままでは倒されるのも時間の問題となっていた。


 その中でもまだ日向たちが本気を出している様子はなく、簡単に言えば前衛と後衛を逆にして日向たちは戦っている状態なので日向はともかくミルも物理攻撃で転生者たちを追い詰めていた。


 後衛のルミナやナビも一応魔法が使えないわけではないので適当に日向たちのサポートに回っているがやはりどうしても日向たちと比べると劣ってしまう。


 それでもなお転生者たちからしたらルミナとナビの魔法も十分脅威なもののようでかなりうざそうな顔をしていた。


「チッ、俺たちも本気で行くぞ! このままだとマジでヤバイ! シュンスケ!」


「あぁ、任せろ。『時間停止』」


 とうとうしびれを切らしたのかシュンスケと呼ばれた転生者の一人が異能を使うと辺り一面の色がなくなり灰色の世界が出来上がってしまった。


 異能の力は名前の通り周囲の時間を止めてしまうものでシュンスケ以外の戦っているものたちは皆その状態で固まってしまっていた。


「ふぅ、まさか俺が異能を使わないといけなくなるとはな。全く、厄介なことだ」


 シュンスケは時間さえ止めてしまえばこっちのものだと自分の武器を持ってゆっくりと日向たちの元へと歩いていく。


 この異能の弱点は集団で協力することができないことや、持続時間があまり長くないので連続での使用ができないことにある。


 だが、四人を倒すレベルならばなんとか時間を停止させてられるのでそのまますぐに日向たちを倒せばいいのだが、ここでシュンスケは邪な考えが頭の中をよぎってしまった。


「そ、それにしてもやっぱり可愛いなぁ。ヒナはあんまり可愛くないし好みじゃないけど、この子達は四人ともめちゃくちゃタイプだ。ち、ちょっとくらいなら楽しんでも大丈夫だよね?」


 これは当時、シュンスケがこの異能を開花させた時からずっと妄想していたことなのだが、なかなかシュンスケが好む女性と出会うことができなかったためこうして遊ぶ機会がなかったのだが、今は絶好のチャンスだと言いながら日向たちの服を脱がすために武器を地面に置いてまずはと自分が裸になり始めた。


 自分だけの世界。


 時が止まっているためシュンスケがそう錯覚してしまうのも無理のないことだが、あいにくとそう簡単にいくほど日向たちは甘くなかった。


「普通に気持ち悪いなー。そんなことしてるから女の子が寄ってこないんじゃないの?」


「ですね。正直、見ているだけでも鳥肌が立ちました」


「気持ち悪い。あんたみたいなクズな男がいるから世の中の女がなく羽目になるのよ」


「男とはこういうものなのかもしれません。そういえば、マスターも私たちにこんなことをしたいと妄想しているのでしょうか?」


「あ、それは気になるなー! 楓くんにならされてみたいかも」


「お、お前たち、どうして俺の異能の中で好き勝手に動くことができるんだ?」


 ここでようやくシュンスケがパンツ一丁になりながらも日向たちのことを見ながらそんなことを聞いてきた。


 シュンスケはいきなり日向たちが動き出して驚いたのか腰を抜かしている様子で戦う以前のようだが、日向たちはそんなの御構い無しと言わんばかりにシュンスケに蔑んだ視線を向けている。


 一部の男ならばその視線すらも喜びそうなものだが、あいにくとシュンスケにそういった趣味はなく単純に可愛い女の子から自分が拒絶されていることを改めて思い知らされて今にも泣きそうな表情を浮かべていた。


「逆に時間を止めたくらいで私たちが動けなくなると思う方がおかしいんじゃないの? 私たちの夫は間違いなく最強なの。そんな夫を支えていこうと決意した私たちがこの程度で負けると思われるのは心外にも程があるわ」


「ハッ、俺たちより強い奴なんているはずがないだろう。なにせ、俺たちは前世の記憶を引き継いでなおかつ特殊な異能まで授けられたんだからな」


「程度が知れますね。それこそマスターに比べたら塵以下です」


「というかよくそんな姿で威勢を張ることができますね。それだけは感心してもいいかも知れませんが、哀れなのには間違いありませんね」


 ミルに指摘された瞬間、先ほどまで自分が何をしようとしていたのかを思い出し、今の自分の格好がどういったものなのか自覚して顔を真っ赤にして急いで服を着ようとしたがその前に日向の手によって服は全て燃やされてしまった。


「な、何をする!」


「いらないでしょ? だからさっき脱いで私に触ろうとしてたんでしょ?」


「そもそも時間が止まっている間に女性にいたずらをしようとする魂胆が間違っているのです。あの世で悔い改めなさい」


「さて、そろそろ倒しても大丈夫だよね?」


「えぇ、とりあえず気絶させて後で王国軍の人に報告して自分が何をしたのかを思い知らせてやりましょう」


「ま、待て!」


「待たないよ。じゃあね」


 シュンスケが武器を手に取るよりも先に日向の魔法がシュンスケに当たる方が早かったようで一撃でシュンスケは意識を手放してしまい、それと同時に時間が止まっていた世界が動き出し世界がまた色を取り戻した。


「おい、なんでこいつがパンイチで倒れてんだ?」


「どうせ何か良からぬことをしようとしてその前に倒されたんでしょう。こればかりは相手に負けて良かったと思いますよ。彼は女の敵です」


 どうやらシュンスケにヒナと呼ばれていた女性もシュンスケの行動は到底許されるものではなかったようで軽蔑の色を含んだ声音でそう言い捨てていた。


 自業自得といえばそれまでだが、これによってシュンスケ対日向たちの戦いが終了しこれから新たな転生者を相手に戦いを繰り広げていくのであった。

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