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エリスvsアイシス

 アイシスとエリスの剣がぶつかった瞬間かなり強い衝撃波が発生してしまい、周囲で凍っていた氷が全て粉状になって壊れていった。


 当然、その中には先ほどアイシスにやられた冒険者もいるのでなかなかグロテスクなことになるのではないかとエリスは少しだけ覚悟していたが、全て固まっていたおかげか血が飛び散ったりすることはなく綺麗に氷と一緒に粉々になっていた。


「へぇ、ただ可愛いだけのメイドじゃなさそうだな」


「ありがとうございます。貴方はSSランク冒険者だというのに大したことなさそうですね」


「挑発のつもりか知らないが、戦闘中の僕はそんな安い挑発では怒ったりしないよ」


「挑発? 事実を言ったまでですが?」


「まぁまぁ、減らず口はその辺にしておきなよ。君はあまりにも僕を舐めているようだから、先に僕から仕掛けさせてもらうよ」


 アイシスはそういうと先に後ろに下がりながら魔法を唱えてエリスの周囲に氷を発生させる。


 ちなみに、アイシスは今こうして簡単そうに氷属性魔法を使っているが、氷属性魔法とは水属性魔法の上位互換となっており並大抵のものでは習得すら不可能な代物となっている。


 それを連続で使用している時点でアイシスはそれなりの実力者だとわかるのだが、その程度ではエリスには敵わない。


「甘いですね。いくら魔法を使用したところであなたの中途半端な魔法では私には届きません」


「さっきから簡単に魔法を斬ってくれてるけど、なかなか厄介だな。剣に魔力を乗せているのか知らないが、僕と君、どっちが先に魔力が切れるだろうね?」


「魔力ですか? そんなの使ってませんよ私」


「なんだって? 嘘は良くないよ。現に今もこうして僕の魔法をかき消しているじゃないか」


「えぇ、これくらい普通に魔力を使わなくても技でなんとかなりますよ。これくらい当たり前にやらないとヒナタやヒストリアの魔法を捌くことはできませんからね」


 最初の頃はエリスもアイシスの言う通り魔力を込めて日向たちの魔法を斬っていたのだが、それではあまり魔力を持たないエリスが先に魔力が尽きてしまい負けると言う事案が発生したため、なんとかして魔力を使わずに魔法をぶった斬る方法を編み出したのだ。


 その時には楓も協力しておりエリスのモチベーションがかなり高かったためものの一週間もせずに魔力を使わずに魔法を斬ることができるようになっていた。


 その甲斐あって最近では日向たちとの一対一の勝負でも勝率が5割ほどにまで上がってきておりだいぶ戦えるようになっていた。


 ただそんなことを全く知らないアイシスからしたらエリスは魔力を使って魔法を斬っているものだとばかり思っているからこのエリスの発言を簡単に受け入れることはできなかった。


「……そんなこと、熟練の猛者でもできるかどうかわからない芸当だろう。それを君が習得しているとでも言いたいのか?」


「熟練も何も私は一週間でものにしましたよ。そうでなければ、カエデ様と一緒に寝る権利をいつまで経っても勝ち取ることができませんから」


「い、一週間だと? あと、ちょっと理由が不純過ぎないかな? カエデ様って言うのは君のご主人様なのだろう? 主人と同衾するメイドなんて聞いたことがないよ」


「カエデ様は私の主人であると同時に愛する夫でもありますから。他にもライバルがいるのであまり悠長に訓練などしていられなかったのですよ」


「まさか、既婚者だったとは。この戦いが終わったら食事にでもと思ったのだが、やめておいたほうがよさそうだな」


「意外とわきまえているのですね。てっきり、無理やり襲ってくるのかと思ってました」


「僕はそう言うのは好きじゃないんだ。これでもSSランク冒険者だからね。Sから上は性格とかも審査に入るから、あまり自己中心的に立ち回ることはできないんだ」


 アイシスは意外にも他の冒険者たちと違ってエリスが既婚者だと知った瞬間に諦めたようにため息をつきそのまま引き下がった。


 いつもならこの後に「なら無理やりにでもさらって犯してやるよ!」とか言われてそのまますぐに倒してしまうのだが、意外にもその辺の常識があってエリスとしても助かった。


「さて、そろそろこの不毛な戦いも終わりにしましょうか。さっさと終わらせて、カエデ様のところに戻らなくてはいけませんので」


「では、最後に一発とっておきのものをプレゼントしよう。もし捌き切れなければ常人なら簡単に死んでしまうので、気をつけてくれよ?」


「えぇ、安心してください。私はあなたを殺すつもりはありませんので。ただしばらくは動けないような怪我を負ってもらうつもりなので覚悟してください」


「それは楽しみだな! では、いくぞ!」


 アイシスはそういうと先ほどとは比べ物にならないほどの魔力を周囲に張り巡らせて氷のドームでエリスもろとも閉じ込めた。


「へぇ、これは確かかなり高度な魔法だったはずですね。私も一度受けたことがありますね」


 エリスは懐かしむようにアイシスの魔法が完成するまでじっと周囲を見ていると、アイシスはさらに魔力を込めて普通ではありえないほどの濃密な氷を生成していく。


 先ほどのエリスの呟きが聞こえていたようで戦い終わった後のことは全く考えずに正真正銘の全力でエリスを殺す気でくるようだ。


「準備が整った。もうこれから私の手でこの魔法を消すことはできない。せいぜい、死なないように捌ききってくれ」


「言われなくてもそうしますよ。さぁ、来なさい」


「言われなくても!」


 アイシスはそう叫ぶとそのまま魔法名を唱え周囲に張り巡らしていた氷を全てエリスにむかって発動させた。


 すると、何百何千もの数の鋭い氷の塊がエリスに向かって飛んでいきこのままではエリスはいとも簡単に串刺しになってしまうところだった。 


「なかなかのものですね。ですが、甘いです」


「な、に⁉︎」


 エリスは刀を納刀すると一度大きく息を吐き出しそのまま刀を一気に抜刀する。


 その瞬間、エリスにむかっていった氷は全て粉々に破壊されて一瞬にしてアイシスが全力で放った魔法は打ち消されてしまった。


「なかなか歯ごたえのある魔法でしたが、まだ私たちに勝つには足りませんでしたね」


「そう、みたいだな……」


 最後に、抜刀だけで魔法を打ち消すとそのままアイシスの懐まで行き死なない程度に骨折を負わせエリスとアイシスの戦いの幕が閉じるのであった。

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