迷宮探索 7
「ちなみに日向はあいつらが死ぬのを見てなんとも思わなかったのか?」
「そうだね。あまり気持ちのいいものではなかったけど、この世界ではある程度必要なものだと思うし、あの時は楓くんがわたしの為に代わりにやってくれてたのが分かったから。だから普通だったよ」
まだまだ寝るには早い時間なので二人でゆっくりと紅茶を飲みながらさっきの話をしていた。
マリーが出てこないのは二人の空気を読んで、らしい。なかなか気の利く妖精である。
「まだ寝るには早いよね?それまで何する?」
そうだな…
「とりあえずこれから少しずつ攻略も難しくなっていくだろうから作戦会議ってところだな」
まだ中層ゾーンでは日向も余裕があるが下層付近になってくると日向では危険かもしれないからな。そこらへんをしっかりと相談していこう。
「私もできる限り頑張りたいけど多分下層になると私じゃまだ勝てない魔物とかも出てくるかもしれないから、第二十階層まではボスは私にやらせてほしいな。そこからは楓くんにお願いします」
日向も自分の力を分かっての提案だ。日向は日向で今の自分と向き合うことが出来てるな。いい傾向だ。
「分かった。トラップとかもこれから危険なものがある可能性が高いから俺の指示はしっかり聞いてくれると助かる」
「うん。それも任せっきりでごめんね」
日向は申し訳なさそうな顔をしている。やはり日向も俺の役に立ちたいみたいだ。
「大丈夫だ。まだまだ、これから強くなっていけばいいしな。それに今は日向が居てくれて良かったと思っている。精神的にあんなに助けられるとは思わなかった」
「そっか。ならいつでも相談してね」
「あぁ、その時は頼むな」
「うん」
2人ともいい関係になりつつある。
そこから色々ほかの注意事項や物資の確認をしてから夕食を食べたらいい時間だったのでそのまま2人とも深い眠りについた。今日は肉体的にというより精神的に疲れた気がした。
明日からも頑張っていかないとな。
翌日、昨日の続きの第九階層をさっさと攻略して第十階層へとむかった。第五階層迄じゃないにしろそこそこの冒険者が門の前に並んでいた。
「これ、後どの位で開くんだろ?」
「まぁ早くて一時間、遅くて二、三時間と言ったところだろう」
「暇だね…」
「まぁ俺は新しい魔法を考えて作ったりちょっと今度試してみたい事があるからそんなに暇じゃないけどな」
苦笑いで日向に返事をする。
「そっか。新しい魔法ねぇ。私には無理っぽいからいつもみたいに体内循環のやつでもやってるよ」
「それがいいな。二時間もあったらだいぶいいかんじに仕上がっていくだろう。」
「うん」
という事で2人はお互い黙って黙々と1人で出来る事をやっている。周りからすればこいつら喧嘩でもしてるのか?という雰囲気だが2人は集中している故まったく気にならない。
俺が言っていた二時間が経ち少しすると俺たちの番となる。
「さて、ここは何が出てくるのが分からないがさっき話していた通りに日向に任せるぞ。一応鑑定はするからそれからな」
「頼みました!」
俺が門を開ける。すると今度は敵が見えない。がそこにいるのは分かる。
なんだ?とりあえず鑑定してっと。
ーステータスーーーーーーーーーーーーーーーー
ゴーストキング Lv26
種族 アンデッド
体力 100
筋力 10
敏速 300
知力 250
魔力 300
幸運 10
ユニークスキル
物理攻撃無効
透明化
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なんかこのダンジョンやけに戦士職に厳しくないか?第五階層のボスはまだ戦士でも攻撃が通ったけどゴーストキングはダメージが通らない。魔法を使えなかったら詰むわけだ。
それにもし魔術師がいようが姿が見えないからなかなか攻撃が当たらない。向こうの良い的だろう。なるほど、ここで迷宮も本気で殺しにかかってくるのか。普通の冒険者はここでよく命を落とすのだそうだ。
「敵はゴーストキング。物理攻撃は無効だ。透明化のスキルを持ってるから気配で魔法を放っていけ」
「わかった!だいぶ敵の魔物も鬱陶しくなってきたね。」
日向は何か策があるのか余裕の表情だ。まぁ魔法の類だけなら日向も世界で上位クラスだ。
オリジナル魔法も使えるから何をしていくのか楽しみだな。
「私もだいたい気配を感じる事が出来るんだけど…それよりも、えい!」
ん?日向は今何をした?
「それ、風爆弾!」
中級魔法だな。ん?何故ピンポイントに狙える?
『日向さんは目に魔力を集中させ擬似魔眼として使用している為魔力の源が分かるのですよ』
なるほど、そういった使い方もあるわけか。面白いものが見られたな。なかなか今後の参考にさせてもらえた。
ゴーストキングは日向の魔法を避けたがその避けた先に風の幕が張られてありゴーストキングを逃がさない様に囲む。囲まれたゴーストキングは出ようと頑張ってはいるが日向はその上から雷を落とす。ゴーストキングはそれをかわせず雷の餌食となる。
うわ、なかなかえげつないな。流石だな。でも今回はドロップアイテムはないみたいだ。確定ドロップじゃないみたいだな。
「お疲れ、あの魔法の使い方は面白かったな」
「あれ?分かっちゃった?流石楓くんだね!」
分かったのは俺じゃなくてナビちゃんだけどな。
そこは黙っておこう。
「それじゃ、先へ行くとするか。今回は先に行ってる冒険者もいるだろうからそこらへんの対処も考えていこう」
「そうだね。じゃ、行こっか」
「あぁ」
2人は下の階層に進んでいく。最下層を目指して。
本来2日、3日で来られる事はないのだが…
2人は楽しそうに攻略に励むのであった。




