戦場 1
前回も戦場1とタイトルをつけていましたが、正しくは前回のは不意打ち2で、この話が戦場1となります。
ややこしくて申し訳ないです。
「反省した?」
「はい。ご心配をおかけして本当に申し訳ございませんでした」
「うむ、よろしい」
楓がしっかり反省したのを見た日向は満足そうにそう頷いて楓に正座を解いてもいいと許可を出した。
ようやく解放されたことに楓はホッと息を吐いたのだが、それをため息だと勘違いした日向からもうひと睨み頂戴することになってしまった。
ミルたちもようやく溜飲が下がったというのにもかかわらず、今の息を吐いたのでまた少し機嫌が悪くなった。
「色々と大変だったね〜」
「元はと言えばあなたのせいでしょう? 助けてくれても良かったと思うのですが……」
「たぶん無理だね〜きっと止めに入った瞬間に俺が殺されちゃうよ〜。あ、あと俺に敬語は必要ないよ〜」
カナンはそう言って楓にタメ口で話すように頼んだ。
どうやら、カナンは敬語を話すのも話されるのも苦手な人種らしく、楓にもできるだけ敬語を使わずに話して欲しいのだそうだ。
暗殺者ギルドのトップということなので敬語を使われることも多そうなのだが、楓のその疑問にカナンが答えることはなかった。
「了解。殺されはしないと思うけどな」
「いや、さっきからカエデさんの奥さんたちの殺気がビシビシと伝わってきてるよ〜。嫌われちゃったかな?」
「当たり前でしょ。誰があんたみたいな男を好きになるのよ。普通に接して欲しいならその張り付けたような笑みをやめて頂戴」
カナンの自虐に容赦なく突っ込んだのはルミナである。
ただ、他の女性陣も言いたいことは同じなのかうんうんと後ろで頷いている。やはり、楓に奇襲したのはかなりの悪印象を招く種だったようだ。
カナン自身かなりのイケメンで服装もそこまで悪くないのだが、やはりカナン自身の誰がどう見てもわかるその作り笑いが言い表しにくい不気味さを放っていた。
「ひどいな〜まぁ、実際そうなんだけどね〜」
「そろそろいいか? 話が全く進んでいないんだ」
「それもそうだね〜。国王様、説明よろしく〜」
楓がいい加減話を進めたいと無理やりカナンと日向たちの間に入ってそういうとカナンがわざとらしく国王であるバルバトスに話を振った。
普通、一国の王であるバルバトスに先ほどのカナンのような軽い言葉遣いをしようものなら護衛の騎士たちが黙っていないはずなのだが、さすが暗殺ギルドのトップということもあってかカナンは特に注意されている様子はなかった。
「やっとか……全く、二人の茶番のせいでかなり時間を食ってしまったぞ。まぁ、ミルたちにも課題があることがわかったから良かったのだが、カエデにはお疲れ様としか言いようがないな」
「まぁ自業自得ですからね。これくらいで済んでむしろ良かったです。それより、案内人はカナンで間違い無いのですか?」
「あぁ、今回カエデたちの案内人をカナンにお願いしようと思っている。私も何度かカナンにお世話になったことがあるが、金さえ払えば信用に足る人物だ。まぁ、仮にも暗殺ギルドの代表だからな。性格に難はあるが実力は確かだ」
「そうですか。さっきの投擲を見てもそこそこの実力者だとは思っていましたが、ミルのお父さんがそういうのでしたら安心ですね」
実際、楓も先ほどの茶番の中でカナンがかなりの実力者だということはわかっていたが、こうしてバルバトスからのお墨付きがあると信憑性もかなり増してくる。
日向たちは非常に嫌そうではあるが、戦場までの間だけなので我慢してもらうことにしようと楓は心の中で決める。
「そういうことだから〜よろしく」
「よろしく。今回の戦争はカナンたちも参加するのか?」
「まぁね〜、今回はさすがにことがことだから国王様もかなりお金を弾んでくれてね〜。俺たち暗殺ギルドも全力で相手を抹殺しにいくつもりだよ」
暗殺ギルド自体どれほどの規模を有しているのか、楓もよくわからないのだがバルバトスがかなりお金を出したということなので期待してもいいのだろう。
そんな大手ギルドの代表を案内人にしていいものかと楓は思ったが、どうやら暗殺ギルドの人物たちはどれも性格に難があり一番マシなのがそのギルドのトップであるカナンということであるらしい。
「これで一番マシとか、暗殺ギルドは変態集団のようですね」
「エリス、気持ちはわかるが抑えような」
「ひどい言われようだね〜。まぁ、実際その通りだから否定はしないけど」
エリスに辛辣なことを言われてもカナンは笑みを崩すことなくニコニコと笑っている。
暗殺ギルドということは人を殺すのを生業としているということで、その過程で色々と精神的にくるものがあるのが性格がおかしくなる原因の一つかもしれないと楓は勝手に邪推をするが、それを察したカナンは首を横に振りながらそれを否定する。
「人を殺して心を病む人は多いけど、その程度で心を病む人間は暗殺ギルドではやっていけないよ〜。だから、これは素かな〜」
「そうなのか。まぁ、大丈夫そうで良かったよ」
「いい加減話を進めていいか?」
楓が暗殺ギルドについて色々と興味を持ち始めた時にはすでにバルバトスも我慢の限界となっており、額に青筋を浮かべながら楓たちの方を見ていた。
全く、これから戦争が行われるような雰囲気では無いこの状態に毎度のことながらバルバトスは一人でため息をつくのであった。




