軍部会議 1
軍部会議の準備が整ったということで楓たちはバルバトスの後ろを歩いていき以前貴族会議をした場所とは別の軍部会議専用の部屋まで向かっていった。
ミル以外は未だに城内のどこになんの部屋があるのか把握していないので毎回新鮮な気持ちになるがあまりふらふらしていられないので楓はチラッと周りを見るだけにしておいた。
バルバトスの部屋から会議室までは歩いて数分の場所にあり中に入ると如何にも軍師といった人たちが十二人席に座っていた。
「よい、今はそんな悠長なことをしている暇はないのだ。さっさと軍部会議を始めてしまおう」
バルバトスは自分の姿を見て立ち上がろうとした軍師たちに必要ないといって形式的なものを全てすっ飛ばして軍部会議を始めることを宣言した。
今回の軍部会議ではアリウスたちのことを説明するのと楓たちの参戦の報告、ただあまり大きく動けないこと、あとは楓が考えた作戦の提案となっており結構話し合うことが多いのでバルバトスは面倒なことは全て飛ばしたのだろう。
軍師たちもそれを察したのかすぐに紙を取り出しメモを取る準備と自分たちが話す内容の確認をしている。
「バルバトス様、こちらにいる魔族の方々は?」
バルバトスの後に続いて入ってきた楓たちがそれぞれ席に着こうとする前に軍師の中の一人が純粋な疑問といった様子でバルバトスに向かって質問をした。
さすが軍師というか多少嫌悪感を抱いているはずなのだがそれを全く感じさせることなくアリウスたちに失礼にならないようにしていた。
「こちら、新たな魔王になられたアリウス殿だ。今回は我々に協力していただけるとのことなのでこの場で自己紹介をお願いしたのだ」
「アリウスだ。なぜここに魔王が? と思われるかもしれないがまずは聞いていただきたい。我々魔族の間では二つの考え方を持つものがいる。まずは元魔王のように人族を滅ぼして世界の実権を魔族が握ろうとする者だ」
アリウスはミリアたちを先に座らせて軍師たちに自分たちが協力をする理由を話して行く。
ちなみに、今回も例のごとく席についているのは『無限の伝説』の中では楓、アル、ルシフェルの三人で他の日向たちは後ろに立ってもらっている。ただジャンとジルは天狐族代表ということで席についてもらい魔族はアリウスたち魔王候補の四人は席に座ってもらい他の護衛は後ろで日向たちと一緒に立ってもらっている。
さすがに全員座るだけの席を用意することはできないので仕方ない。
軍師たちもそれには文句を言うことなく静かにアリウスの話を聞いている。
「そしてもう一つの考え方が人族と争うことなく平和な世界を目指す者たち。それが私たちだ。元は前魔王が前者の考え方だったため私たちの考え方を実行することはできなかったが、幸いにも前魔王はカエデによって倒され、私が新たな魔王として魔界を代表することになった」
楓が魔王を倒したという新たな情報に軍師たちはおぉと楓を讃えるように声を出しているが楓は特に反応することなくアリウスの話の続きを待った。
「ただ、全ての魔族が私の支配下になったわけではない。そも、魔王になってからまだ一日も経っていない。申し訳ないが、まだ魔界全てを纏め上げられるほど私たちも力を有していない。その点はこの戦いが無事終えることができたら速やかに実行していこうと思う。今回はその為にも魔界代表として人族の貴殿らに協力させていただこうとここまで馳せ参じさせてもらった」
「なるほど……」
軍師たちはアリウスの話を聞き終えると色々と今後のことを考えているのか目を瞑りながら黙って腕を組んでいる。
それからしばらくは無音の時間が続いたが代表でだいぶ歳のいっているであろう老人軍師の一人が立ち上がった。
「儂は信じていいと思いますぞ。そもそも、今回戦争を仕掛けてきたのは魔王ではなく帝国なのです。仮に魔族たちが本気で人族全てを滅ぼすつもりなら人族と手を組み魔族や魔物の数を減らす必要もないでしょう」
「それもそうですな。私も賛成です」
「ですな。ただ、騎士団長や宮廷魔術師長のように魔族の存在を快く思っていないものもいるので、その辺をどうするか考える必要がありそうですな」
老人軍師の賛成を機に全ての軍師たちがアリウスたちの参戦を快く受け入れた。
ただ、最後の軍師が言った通り現在もバルバトスの後ろで護衛をしている騎士団長と宮廷魔術師長のようにアリウスたちの存在を快く思っていない者も多くいるということでその辺をどうするか考えることとなった。
軍師に言われた騎士団長と宮廷魔術師長はなぜ軍師たちがアリウスたちを認めたのか理解していないようだったが誰もそれに説明することなく話が進んでいった。
「あの、そちらの二人に説明しなくてもいいんですか?」
流石に楓もこのままでは味方同士がやりあうことになってしまうと軍師たちに騎士団長たちに説明するように進言したが軍師たちは笑いながらその案を却下した。
「彼らには自分たちで考えさせた方がいい。まだ騎士団長、宮廷魔術師長となって日が浅いのは事実だがこの先私たちがいなくなった後にバルバトス様の意を汲み取れなくなってはいけないのだ。そして、今回はカエデ殿も参戦してくださるとのことだ。そうなれば多少のリスクと引き換えに彼らの成長を期待するのが私たち軍師の役目というわけです」
「なるほど……」
楓は全てを説明しないことに理由があったとは思わず軍師の話を聞いてしっかりと理解することができた。
確かに今回の戦いでは楓たちも参戦するので万が一にでも負けることはない。本当に危険な事態になったら少しは被害が出ることを覚悟してでも片付けるつもりなので実質帝国軍に勝ち目はない。
となるとその中に課題があるのならばまだまだ若い騎士団長と宮廷魔術師長には自分たちで軍師たちの出した答えを導き出すようにあえて何もいうことなく自分たちで考えさせることにしたのである。
楓が納得している反面騎士団長と宮廷魔術師長は非常に悔しそうにしているが自分たちが楓はおろか軍師たちにも至らないのはわかっていることなので特に何も発言してくることなくその話はそれ以上続くことはなく会議が再開していくのであった。




