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嫌な予感 3


 楓たちが解散をしてちょうど1時間ほど経った頃、ジャンの家の前には楓たち『無限の伝説』とアリウスたち魔王候補とその護衛、そしてこの村の精鋭であるジャンたちが集まっており村の天狐族たちは何が始まるのかとガヤガヤとジャンの家の前を通るふりをして皆様子を見にきていた。


 中にはこの前の模擬戦のリーダーを務めていた天狐族もいたが彼は今回不参加のようだ。


 と、言うかまず話がいっていないのだと思われる。ジャンも伝えている様子はなかったし彼も何が起こっているのかいまいち理解していない様子だったので楓の予想通りということで間違い無いだろう。


「さて、全員集まったな。これから一斉に転移させるからその場から動かないでくれ。一気にミルのお父さんがいる部屋まで飛ぶ」


「カー君、本当にできるの? ざっとみた感じでも三十人近い数がいるしそんな大勢を一気に転移させるなんて莫大な魔力が必要だよ?」


「大丈夫、まぁ見てろって」


 ミリアは楓のことを疑っていたが楓は笑みを浮かべながら地面に真っ白い魔法陣を出現させる。


 魔界からこの村へと来た時にはミリアたちは各自で転移魔法を使ってこの村へと転移してきたため若干楓のことを疑っている様子だったが地面に魔法陣が現れた瞬間驚いた様子でその魔法陣を観察していた。


 魔法陣の色が純白だったことも異常で普通なら転移魔法なら薄く濁った灰色なのだがその点でも楓の魔法陣が綺麗に出来上がっているので特にミリアが興味津々で魔法陣を眺めていた。


「この魔法陣……」


「これだけ魔力を込めれば暴発する可能性もないだろ? さ、転移するぞ」


 楓は驚いた顔をしているミリアを見て可笑しそうに笑いながらそう言って一気にバルバトスのいる部屋へと転移するのであった。


 ちなみに、天狐族たちは一気に魔法陣が出現してそのあと楓たちがいなくなっていることに軽いパニックを起こしてしまったが何か事情があるのだろうとそれ以上楓たちのことを気にすることはなく残っていたサランを中心に村の警備を強くするのであった。














「……っ⁉︎ ってカエデ達か。全く驚かさないでくれ」


「ごめんなさいね。だいぶ大変そうですね」


「カエデもだいぶ事情を把握しているようだな。本当に、大変なことになっているよ」


 楓たちがバルバトスの部屋へと転移をするとそこには驚いた顔をしながらも目を鋭くさせ付近にあった剣を構えているバルバトスの姿があった。


 どうやらバルバトスは敵が乗り込んできたものだと勘違いしたらしく、楓たちの姿を見た瞬間どこか安心したような顔をしながら剣をもとにあった場所へと戻した。


 王都も帝国が進行してきているのは確認しているようでバルバトスは色々と大変そうだった。この様子だと国民の方も不安に駆られて大変なことになっていることだろう。


「でも、カエデたちが帰ってきてくれてよかったよ。私たちもなんとかしようと今までずっと貴族会議や軍部会議を行ってきたが流石に魔族や魔物もかなりの数がいるこの状況ではどうやっても兵の士気が落ちてしまって大変だったんだ」


「まぁ、普通に考えて今から大量の魔物や魔族に加えて帝国兵と戦えと言われても無理ですからね」


 楓たちはチート能力や並外れたステータスがあるため士気はいつもと特に変わった様子はなかったが他の兵士たちからしたら魔族や魔物の群れと戦うなど自殺行為にも等しいことなのでその士気を維持するのはどうしても困難を極めるだろう。


 ただ、今回は楓たちだけで戦うわけにはいかないので戦うものたちにはなんとか頑張ってもらわなくてはいけない。


「ふむ、確かにカエデの力に頼り切るだけではデスハイム王国としての面子が保てないしな。これは国家間の戦争だ。カエデたちには他の兵と同じように一個人として戦ってもらおう。まぁ、王都が落ちそうになったら少しは力を貸して欲しいが、そうでないのなら他の戦うものにも出番を与えてやって欲しい。その分、犠牲は覚悟しなくてはいけないがそもそも戦争とはそういうものだしな」


 バルバトスは楓の話を聞いて頷きながらそう言って楓たちに頼るのは最終手段にすると言って新しい騎士団長と宮廷魔術師をこの部屋へと呼ぶために外にいた騎士に伝言を頼んでいた。


 騎士は中に楓たちがいることに驚いていたが楓たちならできるか……などと思われていたのか特に注意されることなく綺麗なお辞儀をしてから急いでどこかに走っていった。


「これからまた軍部会議があるのだが、そこに楓たちにでていただけるとありがたい。それと、魔族や天狐族の方々も自己紹介をお願いしたい。特に、今回は敵にも魔族がいるのだ。ここに魔族がいることを説明しないとパニックになってしまうからな」


「魔族がいることに何か思わないのか?」


「何、カエデが連れてきたということは問題ないのだろう。特に気にしていない。ただ、他のものはそういうわけにもいかないからしっかりと自己紹介をしていただけると助かる。っと、ちなみに私はバルバトス・デスハイムだ。デスハイム王国の国王をしている。よろしく」


「そ、それは構わないが……なるほど、ここの国王も色々と大物のようだな。私は新しい魔王になったアリウスだ。よろしく頼む。バルバトス殿」


 思いの外魔族がいることに動じていないバルバトスの姿を見てアリウスたち魔族は目をみひらいて意外そうにバルバトスのことを見ていたが当の本人であるバルバトスは特に気にした様子なくアリウスと握手を交わした。


 バルバトスも新たな魔王というところで少しだけビクッとしていたがすでにルシフェルが魔王ということでアリウスたちほど動じることなく笑顔で握手を交わすのであった。

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