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魔界の事情


 楓とアリウスが握手を交わした後楓達とアリウスは地面へとそのまま座り事情説明が始まった。


 とりあえず、監視の目があったらまずいのでアリウスの部下達には楓が呼び出した数体のゴーレムと戦っているように見せてもらいその中心で楓達は認識阻害の結界を張って話を進めることにした。


 ちなみに、セバスにはそのまま門の付近にいる魔族たちと戦ってもらうことにしておいた。


 と、言うのも門の付近にいる魔族達は楓達と敵になる可能性が高いとアリウスが楓に助言してきたため、楓はセバスにそのまま戦いを続行するように頼んでおいた。


仮にアリウスが嘘をついていたとしても自分たちの戦力が減るようなことをしても無駄だろうと言うことなので嘘をついていようがいまいが特に楓的には問題なかった。


「それで、今の魔王についてなのだがついこの前ようやく魔界の中でも魔王が決定し今は元魔王を軸にこの魔界が回っているのだが、そこで少しめんどくさいことがある」


「ふむ……と、言うと?」


「今の魔王の考え方は知っているか?」


「人族を滅ぼしてこの世界の実権を魔族が握るってとこか?」


「ほぉ、まさか知っているとは思わなかった。さすがだな」


「まぁな」


 楓はアリウスに意外そうに褒められたのが少し嬉しかったのか若干胸を張って自慢げに返事をする。


 実はこの魔界には楓が召喚して偵察としての任務を受けている魔族が数人紛れ込んでいるので楓もそれなりに魔界の現状を把握しているのである。


 と、言っても楓が把握しているのは魔王の考え方といつ頃人族の領域へと攻めてくるかだけで楓も特に魔界には興味がなかったためそれ以上の情報を集めているわけではないのでそれ以外はほとんど知らなかったりする。


「カエデも把握しているなら問題ない。それでなんだが、我々魔族には二つの考え方があるのだ。一つ目がさっきカエデも言っていた通り人族を滅ぼしてやろうと言う考え方。これが魔族の大部分を占めている。そのせいで今私たちは人族を滅ぼすために色々と準備をしていたところだ」


「そんなこと人族の俺に言ってもいいのか?」


「あぁ、さっきの話に戻るのだが私は二つ目の考え方に近くてな。それが、魔族と人族の共存っていうことだ。まぁ、この考え方をするものは少数派で全体の3割いれば御の字ってところだ」


 アリウスはなんでもないように楓に話しているが、本来なら魔王にこのことが知られた時点でアリウスの首が確実に飛んでしまうだろう。


 それがわかっているせいか、部下たちも心配そうな表情をしている。


 だが、逆に楓はそんなアリウスたちに好感が持てたし、魔族ではあるが少しは信頼してもいいのかもしれないと思えるようになってきていた。


「ちなみに、魔王候補は10にも満たなかったがその中の1人が私だったりする。私と同じ考えの魔族は私を含めて3人ってところだった。まぁ、考え方が同じなだけでもともと協力ができないのが特徴の魔族なので味方というわけではなかったが……」


「なるほど、ってことは今の魔王が急に力を手に入れたことにも気づいていたんだな」


「あぁ、ちょうど二年ほど前からだ。その時から今の魔王はだんだんと力をつけていった。武力社会の魔界では力こそが全てだ。今では魔王に敵う魔族は1人もいなくなったよ」


 アリウスは少し悔しそうに、それでも諦めがついているのか苦笑を浮かべながら楓に向かってそういった。


 十中八九今の魔王の力が増してきたのはルーナとヒストリアの母親を生贄に使って禁忌の魔法を使用したからである。そこまでして魔王になる必要があるのかと楓は少し思ったが、人族も権力を得るために非人道的なことをするものは大勢いるので魔族も人族もあまり変わらないなと結論を出す。


 アリウスの話によると今は同じ考え方をしていた3人とも今の魔王によってかなり生きづらい立場にまで追いやられているらしく、魔王になるために競っていた時とは違い互いに協力して色々と頑張っているらしい。


「その2人は今俺たちと連絡を取れることは可能か?」


「可能だが、連絡を取った瞬間に他の幹部か、あるいは魔王にバレてしまう。そうなれば私1人では対処できなくなる。悔しいが、私もそこまで強いわけではないのでね」


「安心しろ、その辺は俺たちがなんとかする」


「それは頼もしいな。だが、あまりオススメはしない。悪いが、私はまだ完全にカエデたちを信頼しているわけではないんだ。せめて、本当に魔王を倒すことができるのか私1人で見届けてから今後のことを進めていきたいと思っている」


 アリウスは少し申し訳なさそうにしながらもそこは譲れないといった様子で楓にそう言う。


 それは仲間を思ってのためか、はたまた部下を野垂死にさせるわけにはいかないためか、実際はどうなのかは楓にはわからなかったが、それでも今この瞬間だけで疑うことをやめられてしまえば色々と問題だったので楓はアリウスに笑いながら任せてくれとだけ言って立ち上がった。


「行くのか?」


「あぁ、アリウスから信頼を得られるように軽く魔王を相手してきてやるよ」


「やはり、カエデは面白いな。状況は誰が見ても危機的、そのくせそうして不敵な笑みを浮かべることができる青年。どれ、私も一つ君にこれからの魔界の未来を託してみるとするよ。魔王や幹部全員は無理かもしれないが、一つ二つの部隊程度なら私たちだけでなんとかなるだろう」


「見届けなくていいのか?」


「見届けるさ。だから、できるだけゆっくり魔王を倒してくれるとありがたいな」


「それは無理な相談だ。すぐに帰ってこい」


 楓にそう言われたアリウスは楓と同じように不敵な笑みを浮かべて首を縦に振り、そのまま自分の部下を連れて敵がいるであろう場所まで向かっていくのであった。

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