魔法の特訓なのです!
昨日は二人してシュトガルの一日の稼ぎの歴代トップをとり、まぁしばらく金銭的な問題は解決した。
今日は、前々から魔法の練習をしていたけどそろそろその魔法を具現化させてみたい。今までの練習といえば体内の魔力をなるべく早く循環させる事だったが、そろそろ飽きてしまったのだ。
なので今日は街が開放している一般の訓練場を借りようと思う。ギルドの訓練場はクランランクがC以上じゃないと使えないからな。
「ということで今日は一般の訓練場に行こうと思う。人は多いと思うが構わずやろう」
悪い笑いをしながら日向に言う。
「分かったよー。楓くんと魔法の修行が出来るなんて楽しみだな。私も結構上手くなったよ?」
日向は純粋に楽しみにしている。
二人して一般開放されている訓練場に向かう。
ここの訓練場は一般開放されていると言っても値段が結構高い。一人金貨一枚だからランクの低い冒険者や傭兵などでは手が出しにくいだろう。
だが二人にしてみればたった金貨一枚で魔法の練習が思う存分出来るんだから儲け物だな。ここじゃないと結界が張られてないから危ないんだよな…
少し歩いていると目当ての訓練場に到着する。
「着いたな。さて、金払ってさっさと行くか」
「うん」
俺は二人分の入場料とギルドカードを受付に渡す。
「はい、確かに受け取ったよ。中は結界が張ってあるから多少無茶しても大丈夫だからね」
ふむふむ。良い事を聞いたな。これなら中の人の混雑具合にもよるが日向と魔法の撃ち合いも出来るな。
中に入ってみるとそんなに人はいなかった。一つのパーティーと思われる集団とソロの冒険者が一人素振りをしてる位だ。
広さは高校のグラウンドの3倍位となかなか広い。高校によって広さは異なるが俺達のいた高校は県内でも1、2を争う広さだったので十分広い。日向との魔法の練習もそこまで気を配る必要はなさそうだ。
「さて日向、まずはここに来る時もやっていた移動手段でここの周りを3周アップで走るぞ」
「え?楓くんも同じ方法で?出来るの?」
「あぁ、もちろんだ」
多分出来る筈だ。何しろ魔法系のスキルは全部∞だし、スキルの種類もユニーク、エクストラを合わせると実質∞なんだ。未だに全てのスキルを把握していないが魔法を使うのにも苦労するとは思えないのでやってみる。
「ほら、出来ただろ?」
俺と日向は横に並んで外周を走る。それを見て訓練場にいる冒険者達は目を見開く。
普通魔法というのは火弾や火弓など特定の技しかないのだ。大きい魔法になると詠唱も必要になってくる。何が言いたいかというと普通はコマンドが用意されていてそれを発動する事しか出来ないのだ。
だが俺や日向は魔法創造スキルがある為、特にそういったコマンドを必要とせず頭に浮かんだ事を具現化させる事が出来る。ただ火を出したいと思うだけならライターの様に火が出せたりするのだ。要は今、この世に存在する魔法の『型』というものを無視して魔力から魔法を繰り出せるのだ。
つまり想像次第で国一つ滅ぼせる様な魔法が出せたり、今使っている様な移動手段にも出来るのだ。はっきり言って脅威である。
そんな事はつゆとも知らず二人はオリジナル魔法を使って修行を始める。
「よし、体慣らしはこんなもんでいいだろう。次は…そうだなこれの応用で空を飛べるんだがなかなか難しいのと暴発すると危ないから気をつけながらやってみよう」
「うん!空飛ぶ事なんて出来るんだ!やっぱり魔法創造スキルって凄いね!」
「だな。とりあえず見本を見せるからゆっくりやってみよう。」
そう言って俺は空を飛ぶ。実はこの前一人の時にやってみたら出来てしまったのだ。俺の場合出来無い事の方が少ないと思うが…
「凄い!私もやってみる!」
そう言って日向は目をつぶり集中する。
「それ!」
目を開けて勢いをつけた瞬間日向は少し地面と足が離れる。
「凄い!私、ちょっとだけど浮いたよ!」
日向も日向で凄いセンスは良いみたいだ。
なお、このやり取りをしている間に他の冒険者達は夢でも見てるのかどうか疑いたくなってきた。
何故二人に声をかけないかと言うと単純に二人がそれを許す前にまた新しい行動をするから声をかける隙がないのだ。
最終的には日向も自由自在に空を飛べる様になっていた。
次に俺が提案したのはお互いの魔法の強度を見たい為、最初は日向が俺を魔法で攻撃する。ここは魔法が当たったとしても怪我をしたとしても気絶程度で済むので思いっきりやっても大丈夫だ。
それに日向はともかく俺にダメージを負わせる事など不可能だ。
俺が日向とやる時は日向の限界がきそうだったらそこ迄で止めるつもりな為こちらも大丈夫だ。
「先に私が楓くんに魔法を撃てばいいんだよね?」
「あぁ、思いっきりやってくれ」
「うん!」
日向が返事したと同時に俺の直上から黒い雲が現れ雷が落ちる。それに俺は焦るそぶりを全く見せず手を上にやり魔法の障壁を展開する。
本来日向の魔法程度なら魔力の壁で充分なのだが
せっかくという事ですちょっと格好つけてみたのだ。
その後も日向はあらゆる魔法を俺にお見舞いする。日向も最初に比べたら威力も速度も桁違いだ。これだけの力を持っていればS級と称しても問題ないレベルに。まぁそれを軽々防いでいる俺はどうかと思うが…
俺達を見ていた冒険者達はビビリまくって身動きが取れないみたいだ。
それから5分もすれば日向の攻撃が終わる。
「ふぅ、やっぱり無理だったね」
「まぁ…でもいい線いってたぞ」
「ありがとう。次は楓くん、いいよー」
「そーか。じゃ」
言い終えると人差し指を日向に向け魔法を唱える。
「火矢」
それを唱えた瞬間俺の指先から凄まじいスピードで飛び出した矢が日向の障壁を突き破る。
「うわっ!」
日向は焦ったがスピードも威力も桁違いのそれをどうする事も出来ずに日向の体に直撃するかと思った瞬間その矢が消える。
「へ?」
日向はアホの子の様な声を発する。
「よしよし、上手くいった」
俺は放つ前からあの程度の障壁ならなんの障害にもならずに貫通する事が分かりきっていたので日向に当たる直前に消える様に調整したのだ。
無駄に気絶させても時間が消費させるだけだからな。
「まだまだ障壁の展開が甘いぞ。日向の魔力があればもうちょい硬い壁が作れるはずだ。ほらもう一回」
そして1時間にも渡る鬼特訓が始まるが、日向は嬉しそうにこなしていくのだった。
次の日に冒険者の間で「恐ろしい魔法を使う二人がいる」と噂されるとも知らずに…




