旅立ち 1
実は今日僕の誕生日だったりします。
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「ふぅ……疲れた」
楓は全員が寝静まると汗を流すために全員に浄化魔法をかけてから、一人用の机と椅子を部屋の窓の近くに設置して、一人で静かに紅茶を飲み始めた。
先ほどまで楓たちは新婚初夜の大人の営みを楽しんでいたのだが、最後にミルが疲れて寝たことによってそれも無事終了した。
最初は楓も最後まで持つか大変だったがそれも杞憂に終わり普通に最後まで体力が切れることはなかった。
「お疲れ様です。マスター」
「ん?ナビか。可愛かったな」
楓がみんなを起こさないように静かに紅茶を飲む準備をしていると、目が覚めたのかナビがそう言いながら楓の元へとやってくる。
楓はナビに気づくと今もナビ以外全員が一糸纏わぬ姿でベッドの上で寝ているので布団を他の六人にかけてから紅茶の準備を始めた。
「あ、ありがとうございます。マスターも凄かったですよ?」
「ありがとう。今紅茶を入れたんだけど、ナビも飲むか?」
「はい。お願いします」
ナビが頷くと楓はすぐに他のみんなを起こさないように静かにストレージからもう一つ椅子を出して、ナビを座らせその間に紅茶を淹れる。
ナビはその間に流石に全裸のままは恥ずかしいのかささっとバスローブのようなものを着て全裸の自分の体を隠して楓の前に座る。
「ほれ。それにしても、みんな凄かったな」
「ありがとうございます。全員今日のこの時間を楽しみにしていましたから。昨日もルーナとヒストリアはもちろんのことルミナやエリスも緊張している様子でしたよ。日向とミルは楽しみにしていましたが……」
「で、お前も緊張していたと」
「そ、それは言わない約束です!」
楓に指摘をされたナビは顔を真っ赤にしながらそう言うと慌てて楓に淹れてもらった紅茶を飲んで口元を隠した。
どうやら図星のようでとても恥ずかしそうにしているナビであったが、とっさに飲んだ紅茶が美味しかったのか美味しいと驚いたような様子で紅茶をチビチビと飲み始めた。
その姿が本当に猫のようで楓は思わずナビの頭を撫でたくなるが、今のナビに触れてしまうとまた色々と始めてしまいそうだったので踏ん張ってナビのことを静かに見るだけにするのだった。
「そういえば、先ほど話していたことなのですが、いつ頃出発する予定なのですか?」
「え?日が昇ったら出発する予定だけど?今回は旅行も兼ねてるからクラン総出で王都から出る予定だ。アウラたちもあんまり休んでないみたいだし、いい機会だろ」
「そうですか。きっとミルのお父さんが聞いたら絶対に反対するでしょうが、たまにはクラン全員で出掛けるのも悪くありませんね」
ナビの言う通り、国の最高戦力とも言える楓たちが全員で長期間王都を離れることをバルバトスが聞けば多分泣くだろうが、そもそも楓たちは国に属しているわけではないので旅行までもとやかく言われる筋合いはない。
これは楓の中で決定事項なので、他の誰に言われようがクラン全員でルーナたちのいた村まで旅行をするのは確定である。
「さて、紅茶も飲み終わったし寝るか」
「そうですね」
楓はナビとしばらく静かに紅茶を飲んでいたが、頃合いを見てナビにそう声をかけて二人で日向たちが寝ているベッドまで向かう。
「マスター」
「ん?どうしt……」
「最後に独り占めです。おやすみなさい」
ナビは眠そうにあくびをする楓の名前を呼び自分の方へと振り向かせると、そのまま勢いで楓にキスをして最後にぎゅっと抱きしめると恥ずかしそうにそう言って布団の中に潜り姿を消した。
楓は寝る前に興奮した心を落ち着けようと紅茶を飲んでいたのだが、最後の最後でナビの不意打ちをくらい一気に目が覚めてしまうのであった。
「クッソ!」
「落ち着けって、別に死ねって言われたわけじゃないんだしさ」
「落ち着いてられるか!あれだけ幸せそうな佐倉さんたちを見て悔しくないのか⁉︎」
「いや、まぁ悔しいけど……」
勇者の一人は荒ぶる須藤にそう言われて黙り込む。
バルバトスによって国外追放を受けた勇者一行は他の国に向かって移動している最中なのだが、勇者たちの空気は最悪である。
主に須藤が先ほどからずっと楓に向かって暴言を吐いているのだ。
「まぁまぁ、あいつらに復讐するんだったら簡単な話があるぞ」
「……それは?」
「確か、デスハイム王国は帝国と仲が悪かったはずだ。そこに行けば、歓迎してくれるんじゃないか?そうすれば、装備とか人とかも好きなだけ使わせてくれるだろ」
「それだ!」
須藤は男勇者の話を聞いて見事に食いつき、そのまま全員で帝国へと向かうのであった。
他の勇者たちは、主に女勇者たちは不満の声を出しているが、須藤のあいつらに勝てば楓を好きにできるかもなと言う呟きにより女勇者を見事に丸め込め全員で帝国へと向かうのであった。




