学院祭の準備 3
「おー、随分とやつれてるな」
「か、カエデか…ちょっと、迂闊なことをしたよ」
「う、うむ。まさか、我らもあそこまで有名だったとは…うまくカエデの陰に隠れていたつもりだったのだが…」
楓が一通り結婚式の準備を終わらせ学院に戻ってくると、そこには別れた時には想像もできないほどやつれた2人がいた。
2人は、それでも祭りの作業の手を止めていなかったのでそこは楓も称賛するが、作業効率は当然落ちているだろう。
まだ、楓は2人の成果を見ていないのでなんとも言えないが、とりあえずその前に楓は2人がやつれている原因を2人から聞くことにした。
時間は少し遡り、2人が景色のいいところで昼食を食べているときに事件は起こった。
2人は、そこまで警戒することなく学院の1番景色のいいであろうところで楓の話を肴にしながら楽しく男同士で食べていたのだが、2人がいるところは当然学院でも人気なところだ。
そこに、いつもは見ないかなりかっこいい男が2人いるのだ。
まず、その時点で学院の女性陣が騒ぎ出した。
この時はまだ、アルとルシフェルの2人に実害はなく、そのため2人も安心して昼食を楽しんでいた。
「カエデ達は結婚式の準備か。大変そうだけど、少し憧れるね」
「アルはそういう経験はないのか?」
「まぁね。ドラゴンの時に求婚をしてきた命知らずは結構いたけど、僕は興味なかったしね。ルシフェルは、奥さんが1人居たんだよね?結婚式どんな感じだったの?」
「うむ。我の時はセバスが率先して色々計画を建ててくれていたな。結婚式自体は、上級魔族以上が見にきていたくらいで、ほかの魔族や住民達はそこまでだったな。きっと、今回のカエデの結婚式はエグいことになるぞ」
経験者のルシフェルは確信を込めてそうアルに告げる。
実際、ルシフェルの時も魔王が結婚したということでかなり騒がれていた。ただ、今回の楓達の結婚式と比べるとどうしても見劣りしてしまうのだろう。
まず、楓が本気を出している時点で過去最高のものになるのは確定しているのだ。多少、住民達もいるので自重するだろうがそれでもかなり凄いものになるのは確定だろう。
「まぁ、僕たちは気長に見ていればいいだけだからね。カエデ達の邪魔者が居ないかを警戒しておくくらいか」
「だな。せっかくの結婚式だ。今回は、我も本気でカエデ達の護衛を行うつもりだ」
「ドラゴンと異世界の魔王に護衛をしてもらうカエデって、聞くだけだったら何者なの?って思われそうだね」
「我らでは、かすり傷一つもつけられないがな」
アルとルシフェルはそう言って笑う。
その後、2人は色々と楓にどうすれば一泡吹かせられるのかという議論をして居たのだが、しばらくしてAクラスの生徒がやってきたことでそれもおしまいとなった。
「あ、アル先生。さっきぶりですね。カエデ先生たちはどうされたんですか?」
「カエデたちなら結婚式の準備をしに行ったよ。それと、一応彼を紹介しておくね。彼はルシフェル。僕たちの仲間だよ」
アルはマークの質問に答えると同時に、ほとんどの生徒が戸惑って居たのでついでにルシフェルの紹介をしてしまう。
「アルに紹介してもらった通り、我はルシフェルだ。よろしくな」
「あ、あの、ルシフェルさんって魔王なんですか?」
ルシフェルが簡素な自己紹介を終えると、Aクラスの女の子の1人がルシフェルに向かってそんな質問をする。
少し、怯えているのはすでにルシフェルが魔王だということを知っているからなのか知らないが、ルシフェルはそれにできるだけ優しく笑顔を作って答える。
「あぁ、我は異世界の魔王だ。以前、カエデに召喚されてな。だが、勘違いはしないでほしい。我は、人族を滅ぼそうなどということは考えておらん。今は、カエデたち家族の方が大切なのでな」
「そ、そうですか。なんだ、お父さんがこの前カエデ先生のクランに魔王がいるって言ってたから怖い人かと思いました」
「はっはっは。我は魔王の中では全てにおいて1番ということは自負しているが、それでもカエデには勝てん。どうだ、そんな先生に教えてもらった気持ちは。きっと、貴重な経験だったと思うぞ?」
「す、凄いです!魔王とお話しできるなんて、私たちは幸せ者かもしれません!」
「は?」
ルシフェルは自分よりもあくまで楓の株を上げようと話をそっちに持って行く。
だが、それもむなしく失敗しAクラスの生徒たちはルシフェルに向かって一斉に質問して行く。
しかも、ルシフェルだけなら良かったもののアルにまで質問の火花が飛んで行き、一つ一つ丁寧に答えて行く。
生徒であるが故に、2人は邪険にすることもできず、ずっとニコニコ笑いながら話していたので心労も溜まるということだ。
しかも、しばらくするとAクラスの生徒だけでなく、ほかの生徒たちまで便乗して魔王に質問!という名目で2人に向かって楓のことや日向たちのこと、もちろんアルやルシフェルのことなど色々質問され、秘密にしていること以外はできるだけ答えることになったのだ。
そういうわけで、2人は非常にやつれることになったのであった。




