サプライズ
楓たちが、色々としているとすでに登校時間となっており、現在楓たちは全員楓の魔法で透明になっている。
ただ、この魔法のいいところは魔法を使っている相手同士の姿は見えるのでぶつかる危険性などはない。
この魔法があれば、いろんなものを盗み放題だが、そもそもこの世界でこの魔法を使えるのは楓か日向しかいないので大した問題にはならないだろう。
「楓くん。シエラ先生には話してあるの?」
「あぁ、さっき言ってきた。喜んで時間を貸してくれたよ。なんでも、俺たちがきてから、本当にAクラスが全体的に数段レベルアップをして、授業ももうほとんどすることがなくて困ってたところらしい」
「それは…優秀すぎるのも悩みものなんだね」
「うれしい悲鳴だな。実際、シエラももっと頑張って生徒たちの力を伸ばすんだーって言ってたしな」
生徒も頑張り、先生もその分頑張る。いい関係が築けているようで何よりである。
楓たちが、そんな話をしている間にAクラスの生徒たちは全員着席が完了しており残るはシエラがくるだけとなった。
事前に、楓は少し時間が欲しいとしか言っていないためシエラも何をされるのかわかっていないので生徒たちと一緒に参加してもらう予定である。
「あ、シエラ先生が来たよ」
「よし、作戦開始だ!」
楓が、仲間だけに聞こえる声でそう言うとAクラスの照明が全て消え、窓も真っ暗になり完全にブラックアウトしてしまう。
「なんだ!?みんな落ち着いて!誰か光魔法が得意な人、ライトを使用してくれ!」
「それなら私が…ライト!ってあれ!?魔法が使用できない!?」
「何!?っと、今は動かない方が良さそうだ。みんな落ち着いて!シエラ先生、どうしますか?」
以前は、こう言ったクラスのまとめ役はルミナが行っていたのだが、ルミナが楓と一緒にいるために学院を去ったので今のまとめ役はマークになっているようだ。
こういった、緊急事態の時でもマークは焦らずみんなに指示を出し、みんなが混乱しないようにしている。
「へぇ、ルミナの代わり、しっかりできているんだな」
「マークね。彼はなかなか才能があるもの。将来、一つの隊を持つのは確実ね」
楓がマークの成長に嬉しそうにそう言うと横でルミナが同意するようにそう言う。
ここで、ルミナが騎士団長や軍の隊長と言わないのはそこまでたどり着くには容易でないのと同時にさらなる才能が必要だからだ。
ルーナやヒストリアもそれだけ苦労をして、現在のあの地位にいると言うことだ。決して、楽な道ではなかっただろう。
「っと、そんなことよりも、そろそろ出番か」
「そうね。じゃ、行きましょうか」
楓とルミナはそう言って真っ暗な状態でも誰にもぶつかることなく教室の一番前の教壇へ立つ。
楓やルミナは視界を奪われようが、関係ないので暗闇の中移動することなど全く問題にならない。と、言うか『無限の伝説』のメンバーはすでに経験済みなので全員視界を奪われた時の対処法を獲得している。
「Aクラスの諸君!久しぶりだな。俺は、君たちの成長を心から嬉しく思うよ。ただ、少し学院祭の前ということで浮き足立っているのではないかな?」
「だ、誰だ!」
「それを答える前に、まずは私たちの正体を導き出しなさい。制限時間は後三分。さぁ、早k…」
「「「「カエデ先生に、ルミナさん!」」」」
「「あれ?」」
ルミナがかっこよく最後のセリフをいう前にクラスの全員が一斉に答えをいい視界が晴れていく。
まさか、当てられるとは思っていなかった2人は呆然としている。
「ふっふっふー。お久しぶりです。カエデ先生。実は、先ほどヒナタ先生たちからカエデ先生がいたずらをすることを教えてもらっていたのです」
「久しぶり!ルミナさん!どんないたずらをされるかまでは教えてもらってなかったけど、今日は私たちが勝ったみたいだね!」
マークが得意げにそういうと、続いてニースが手でブイを作りながら笑って楓とルミナに勝利宣言をする。
「ま、まさか…」
「日向たちに嵌められたな。どうりで他のみんなが出てこないわけだ」
「ふふー。作戦成功!」
「ひーなーた!あなた、私たちを嵌めたわね!?」
「たまには、楓くんも恥をかかないとねー。完全に油断してたでしょ?ルミナも、浮かれてたからねー」
日向たちは作戦が成功したとでも言いたげな表情で楓とルミナの元へとやってきた。他の面々もそれに続いてやってきたのだが、アルとルシフェルが腹を抱えて笑っていたのが、楓のフラストレーションを貯める原因となった。
「Aクラスの諸君!だってさ。ふ、ふははっ」
「久しぶりに、腹を抱えて笑ってしまったよ。カエデ、ヒナタに一杯やられたな」
「お前ら…後で覚えてろよ?」
「まぁまぁ、それより、お久しぶりです。カエデ先生」
「あぁ、マークも、みんなも順調に成長しているようで何よりだ」
「そりゃ、あんな凄いものをもらっておいて何も成果を上げられないっていうのは流石に僕たち自身が許しませんからね」
マークはそう言って苦笑いをする。
だが、そうは言っても、先ほどの様子をみるに、全員必死に頑張っているのはよくわかった。
それは、楓にしてもとても喜ばしいことである。
「マークたちの成長の支えになれて嬉しいよ。それより、どうしてくれるんだ。俺の可愛い妻があんなに顔を真っ赤にしているじゃないか」
「それは、先生たちが自滅したんじゃないですか。流石に責任取れませんよ」
マークがそういうとクラス中から笑いが起きた。
なんだかんだで、みんなルミナのことを見られたのが嬉しいのだろう。みんな、微笑ましそうに楓とルミナのことを見ていた。
その後は女子は、ルミナにいろんなことを聞いているし、男子は男子で楓にモテる秘訣なんかをきいていたりもしていた。結局、それから1時間は授業をするでもなくただ、雑談になってしまったがシエラも何も言わずに、ルミナの話を女子と一緒に聞いていたので何も問題はないのだろう。
まぁ、楓の方は日向たちに色々暴露され、先ほどのルミナ以上に顔を真っ赤にする羽目になってしまったが、楓にしても、久しぶりのマークたちと話せて楽しかったので何も問題なく、楽しむことができたのであった。




