魔物殲滅戦 1
「今日はありがとう。カエデが無双してくれたお陰で反対派の全員が黙って今回の作戦を遂行するしかなくなった」
楓が無双して騎士や宮廷魔術師達を蹴散らした後、ルーナとヒストリアによって楓を作戦の要にする事が決まった。
何でも、反対派で一番力があったあの騎士隊長と魔術師隊長が楓にぼろ負けした時点で反対派の勢力はほぼ崩壊したも同然で、後は数がいるだけで主要となる人物はいないらしい。
今日、参加しなかった騎士や宮廷魔術師達も今日の結果はルーナ達が知らせてくれるらしいので明日からは平和に自己紹介をして終わるだろうとの事だ。
自分達のボスですら勝てなかった相手に挑もうとするバカは流石にいないと信じたい。
「まだ4日あるが…今日頑張った甲斐があったと思って良いんだよな?」
「あぁ、1日目に面倒臭い奴らを集めたから多分明日からは特に何もなく終わるだろう。本当に助かった」
「いや、それよりそろそろ帰っていいか?後ろで今日戦えてない奴らがうずうずしてるんでな」
楓はそう言って親指を後ろにいるアルやルシフェル、そしてルミナ達の方へ向けた。
楓の言う通りルシフェルやルミナは今にも戦いたいと言った雰囲気をひしひしと感じさせている。
アルとエリスは上手くポーカーフェイスを貫いているが良く見ると若干体がうずうずしているのが分かる。
「そうか。そう言えば殆どカエデが倒して模擬戦をする機会がなかったな。時間をとらせて悪かった。では、また明日頼む」
ルーナもルシフェル達の今にも戦いたいオーラを感じたのかそう言って早く切り上げてくれた。
本来なら、これから明日のことやそれこそ1週間後の事を話し合わないといけないのだがそこはルーナの配慮で今日はそういうのはなくなった。
ありがたいが少々申し訳なく思ってしまう。
それはルミナ達も同じ様で帰り際にお礼と共に謝っていた。
「さ、これで思う存分カエデと模擬戦が出来るな」
「そうだね。カエデよろしくね?」
アルとルシフェルはそう言ってがっちり楓の肩をホールドして一瞬でクランハウスへと帰るのであった。
「いよいよ明日か…」
「昨日、偵察部隊が大量の魔物やドラゴンを確認したっていうから間違いないね」
楓が始めて騎士や宮廷魔術師達に挨拶をしてからちょうど6日が経った。
あの後、楓達は全員で楓が作った世界に行き楓対その他クランメンバーで模擬戦をしたり、楓対アル、ルシフェル(全力)を日向達が見学したりと時空魔法で時間の流れが早くなっているのにもかかわらず、外に出た時にはすでに朝日が昇っていて大変な事になっていた。
そして、ルーナの言った通りその日から楓達が自己紹介や作戦の内容を再確認しても特に反発してくる者はおらず、不満そうにしている騎士や宮廷魔術師も模擬戦を挑んでくる事はなかった。
あと、考えられる妨害といえば明日魔物と戦っている間の妨害だが流石に自分達の命やこの王都の未来がかかっている為、迂闊に邪魔をしてくる者はいないだろう。
ちなみに、王都の住民には3日前に魔物が大量に押し寄せて来る事を公表し静かに家で待機しておく様に国王であるバルバトスが拡張マイクで王都全域に聞こえる様に言っていた。
最初の方はパニックに陥っていたが、バルバトスが新たな英雄がこの王都を救ってくれる等と口走り住民達のパニックはだんだん収まっていた。
冒険者ギルドでも、緊急クエストとしてBランク以上の冒険者が召集され騎士や宮廷魔術師達に混じって楓達が逃した魔物の処理を行う予定となっている。
昨日から騎士や宮廷魔術師達は王都の外で野営をしつつ見張りをしている様だ。
そこら辺の指示は楓は全くしていなかったのでルーナとヒストリアが指示したのだろう。
別に今日からでも大丈夫だったのだが念の為と言うものだろう。楓達も今日、ルーナ達と合流し明日の魔物殲滅戦に向けて最終の作戦確認を行う事になっている。
「正直、何で今勇者がいないのか心底不思議なのだが…」
「まだ、迷宮攻略中なんでしょ。肝心な所で使えないんだから…」
最近、勇者の情報を全く聞かなくなったが、現在勇者達はまだ迷宮攻略中である為、今回の作戦にその名が載る事はなかった。
本来、勇者達の役目というのはこうした魔物達から住民を守ったり魔王を討伐したりしたりするものなのだが…
つくづく使えない勇者達である。
「そう言えば相手の首謀者は今何してるのですか?」
楓と日向の雰囲気が怪しくなって来た所でミルが話題を変えるついでに気になっていた事を楓に質問する。
「人族を除いた六人は魔物達と一緒にこちらに進行中だな。こいつらはみた所魔物よりも強いから出会ったら注意しろよ」
「おかしいな。幾ら魔族といえどドラゴンやAランク、Sランク級の魔物より強いのは稀にしかいない筈だが…」
「竜族も同じくそこまで強いのは珍しいね」
楓の発言にアルとルシフェルは疑問に思ったのかそんな事を口にした。
「この前も言ったがこれから攻めて来る奴らは元人間らしいからな。多分何かあるんだろう」
「そうだな。相手が何者であれ我々の拠点に喧嘩を売って来たのだ。容赦をする必要はないな」
最後にルシフェルがそう締めてこの話題は終わりとなった。どうせ、いやでも明日になれば分かるのだから今は仲間との食事を楽しもうと言う訳だ。
明日に備えた魔物との戦い。バルバトスに頼まれたからには全力で魔物を殲滅してやろうと再度、心に誓う『無限の伝説』達であった。
???「いよいよだ。カエデか。一度顔を見た事があるけど流石にこの数の魔物を相手には何も出来ないよね。彼も出来れば仲間に引き入れたいけど…どうやって焚き付けようかな?」
とある場所で、今回の首謀者が『あの方』と崇拝していた人物が明日起こるであろう大災害に胸を躍らせているのであった。




