魔物殲滅戦準備 2
「あ、そうだ。カエデにはこの殲滅戦が終わったらミル達との結婚式を開いて貰うからその積もりで」
「あ、はい。わかr…は?」
「だから、結婚式を開いて貰うから。安心しろ。セッティングとかはこっちでやっておくのでカエデには本番当日に国民の前で軽く挨拶をしてくれればいい」
「ちなみに拒否権は?」
「君はあんなに可愛い自分の妻達との一生に一度の結婚式をやりたくないと?」
「はぁ…そういうのは今じゃない時に教えていただきたかったですが、セッティングとか僕分からなかったので助かります」
楓は思う所はあるもののバルバトスが楓達の為を思って準備してくれるのは分かったので、楓はその好意をありがたく受け取っておく事にした。
楓も結婚式はやりたいなーと思っていたので丁度良かったと言えば丁度良かった。
ただ、王都の住民全員に公にされるのは少し恥ずかしいのでどうにか知人だけでやりたいと楓はバルバトスに進言するが…
「いやいや、一国の姫が結婚するのだぞ?国民に見て貰わないでどうするんだ?」
「つまりは…?」
「却下だ」
「ですよねー」
楓は半ば予想していた事だがそれをバルバトスに直接言われるとやはり堪えるものがある。
「まぁ、普通に楽しいと思うぞ?絶対に後悔させないから全て任せて貰えないだろうか?」
バルバトスは少し真剣な表情を作って楓に了承を取る。
「分かりました。お願いします」
楓も、何だかんだ言って今回の魔物殲滅戦で忙しい為バルバトスに全て任せる事にした。
今の言いぶりだとすでに準備を進めているだろうから今更嫌ですとも言えない。
王家が準備しているのだ。お金もだいぶかかるだろう。
別に楓が肩代わりすれば良いのだが、お金をあまり無駄にしていい事なんて何もないし人としてどうかという話になってくるので、楓はそれ以上何も言わずに再度バルバトスに礼を言ってアル達を連れて日向達のいる訓練場に向かう。
「結婚式か、これが終わったらって事は楓は英雄になっている筈だから凄い盛り上がるね」
「やめてくれ、考えない様にしてるんだから…」
訓練場に行く道中、先程バルバトスと話していた結婚式の事について四人で話していた。
「やはり、カエデと行動を共にしていると退屈しないな」
「そうですね、ご主人様も魔王城では大概でしたがカエデ様はそれ以上です」
「そういえば、俺達の結婚式って事は当然お前達も来るよな?」
「その積もりだけどなんで?」
楓が至極真っ当な質問をアル達にするとアルは不思議そうな顔をしながら楓に質問の真意を聞こうとする。
「俺達の結婚式は国規模で行われるらしい。つまりはかなり目立つ訳だ。しかも今回の殲滅戦で目立つのは俺だけじゃない」
楓はそこ迄話すとアルやルシフェルたちの顔を見る。
アル達は話の先が読めたのか頰を強張らせ苦笑気味で楓の次の言葉を待った。
「いやー、お前ら二人ともカッコいいからそこらへんの女性からもてもてだろうな。俺は既に日向たちと結婚しているしミルも妻にいるからだいぶそういうのはなくなるだろうがお前ら二人は独身だ。いい出会いがあるといいな」
「あ、僕その日急用があって…」
「わ、我もその日はお腹が痛くなるから…」
「さっき言質はとったからな。結婚式当日はお前らも頑張れよ」
楓は久しぶりに勝利を感じながら未だにやばいと顔を強張らせている二人を連れて日向達のいる訓練場へと向かった。
セバスは何とも無いような顔をしていたが、彼も当然叔父様キャラとして立っている為、若い女の子からキャーキャー言われるだろう。
セバスはそれが分かっていないのか、もしくは女性の扱いに慣れているのか、それは分からないが唯一三人の中でセバスだけが余裕そうな顔をしていたのであった。
「あ、楓くん!一度でいいから私達と模擬戦してくれない?」
「あ、ずるい!カエデ、私達とも模擬戦しなさい。暴れようにもここには貴方達以外に私達以上に強い相手がいないから戦いようがないのよ」
訓練場にいくと、楓はいきなり日向やルミナにがっちり腕をホールドされ一気にそう畳み掛けられた。
「あれ、アルもルシフェルもどうしたの?」
「い、いや…」
「先程楓にボコボコにされてな…」
「へぇ、アル達とも模擬戦やったんだ!じゃあ私達もいいよね!」
日向はアルやルシフェルの様子がいつもと違うことに気づき声を掛けるが、二人はそれをはぐらかすように笑いながらそう言った。
まぁ、楓にボコボコにされたのは本当なので嘘はついていないが…
それが身体的にも精神的にもボコボコにされたとは流石に日向も思わなかった様で、アルの答えをそこまで深く考える事なく日向は楓に模擬戦の催促をする。
「はぁ、仕方がない。まぁいいが周りで騎士達が結構な数訓練しているんだ。邪魔にならない程度で模擬戦をするがいいよな?」
「うん!じゃあミルとルーナさんを呼んでくる」
日向はそう言ってミルとルーナに事情を話しに言った。
「そんなに不貞腐れた顔するなって。ルミナ達ともしっかり模擬戦をするから」
「……本当?」
「当たり前だろ。日向達とやって何でルミナ達とやらないんだ。ほら、さっさとエリス達に事情を説明してこい」
「うん。ありがと」
ルミナはそういって、日向達にバレない様にそっと楓のほっぺにキスをしてエリス達の元へと向かっていった。
「やっぱり多少の弊害があってもカエデの結婚式は見に行く必要があるね」
「あぁ、我も同じ事を考えていた」
今の軽いキスがアルとルシフェルには見えていた様で、さっきの苦笑いとは別の、面白そうな笑みを浮かべながら二人でそんな事を話しているのであった。




