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黒幕の正体 2


「さて、あらかた作戦は決まったな」


「そうだが…何故私達迄危険が少ない所で戦わないといけないんだ?」


「カエデ、私達の事舐めてる?」


楓達はあの後、時間は掛かったものの細かい作戦や騎士団や宮廷魔術師達の配置を考えてなかなか良い布陣が出来上がったのだが、ルーナとヒストリアは自分達迄殆ど危険がない所で戦うと決まった瞬間一瞬でふてくされてしまった。


「普通、危険が減ったら喜ぶものだと思うんだけどな…」


「そんな訳があるか!これでもデスハイム王国の騎士団長なのだぞ!怖気付いてられるか!」


「ルーナの言う通り。私も楓達と一緒に前線で戦う。私達でもA級の魔物位倒せる」


「はぁ、出来れば後方で他の騎士団のフォローに行って欲しいんだけどな…」


「いいじゃん楓くん。本当にフォローが必要ならアウラ達やマリーに任せればいいじゃん」


楓がルーナ達の話を聞いて悩んでいると横から日向が一緒に最前線で戦う事を進めてくる。


まぁ、別にいいんだがマリーはまだ存在がバレると面倒臭いしなぁ…


『もう今更な気がしますけど…』


それもそうか。どうせ今回の殲滅で少なからず目立つ訳だし…


「分かった。ならルーナは日向とミルと、ヒストリアはルミナとエリスと組んで三人一組で魔物を殲滅していってくれ。それなら万が一にも不覚を取る事はないだろう」


「あぁ、感謝する。ヒナタ殿、ミルテイラ様よろしくお願いします!」


「うん!よろしくね!」


「一緒に頑張りましょう」


ルーナはすでに日向とミルと一緒に三人で細かい担当等を決めていた。


一方ヒストリア達は…


「よろしく」


「えぇ、作戦だけど…?」


「成り行きで行く」


「そうよね!三人で暴れちゃいましょう!」


「任せて、頑張ろう。エリスさんもよろしく」


「はい、楽しみです」


……ここまで行動に差が出るとは思わなかったぞ。


ルーナ達はしっかり作戦を立てて動きのシミュレーションをしているのだがヒストリア達は完全に成り行きに任せて動く様だ。


「ヒストリア!ちょっとは真面目に!」


「無理」


「即答かい」


ルーナとヒストリアの漫才に楓は思わず突っ込んでしまう。


「仕様がない。私達は感覚派。しかも私だけじゃない。エリスさんもルミナさんも同じ感覚派」


「ルミナさん達を仲間に引き込むのはないだろう…」


ヒストリアはルーナに怒られる前に上手くルミナ達の後ろに隠れてやり過ごそうとしている。


「まぁいい。お前がそんなのでは魔物を倒す数が多いのはこちらになるな」


「む…私達も負けない。」


「では勝負といこうか。ヒナタさん。いいか?」


「いいよ!面白そうじゃん!そーだね、勝った方は楓くんと一日デートの権利を得るのでどうかな?」


「は?」


日向がルーナチーム対ヒストリアチームの魔物殲滅戦を始めてしまい、その商品として勝者は楓と1日ハーレムデート権を得る事になった。


「ふっ、面白そうだな。それならヒナタ様やミルテイラ様の為にもなるからな。全員で頑張れるし、面白そうだ」


「私達も異論はない。ルミナさん達もいいよね?」


「えぇ、やる気がみなぎってきたわ。」


「なんとしてでも勝ってカエデ様とデートです!」


楓を除く全員の合意が取れた事によって急遽、魔物殲滅戦(チーム戦)が開催される事になった。


商品の楓はまだ何か言いたそうだったが、すでに日向達に異論を唱える雰囲気でもないので、楓は黙って嵐が過ぎるのを待っていた。


これから戦う魔物やドラゴンは少なくともAランク級で、普通の冒険者や騎士団では手も足も出ない相手なのだが、それを標的として勝負とは普通では考えられる事ではない。


もしここに騎士団や宮廷魔術師の常識人がいたのならすぐに止めに入ったであろうが、今ここには国王であるバルバトスに戦闘の心得のない大臣達。そして常識という文字が自分の辞書の中にない者達しかいない為、誰からも止めが入る事はなかった。


「はぁ、勝負についてはもう何を言っても聞かないだろうから仕様がないが、絶対に無理をしたり調子に乗り過ぎたりするなよ。もし死んだり深い傷を負ったら完治させてから大説教をするからな」


「分かった。でも死んでも生き返るとかカエデはやっぱり化け物」


「普通はやらない。だが身内は別だ。お前達は絶対に不幸な死は遂げさせない」


楓は少し真面目に、忠告というよりかは心からのお願いをする様に日向たち全員の目を見て話す。


「今の楓くん。格好良いよ」


「そうですね、何としてでもデート権を勝ち取ってみせます!」


「負けないわよ。エリス、ヒストリア今から訓練に行きましょ!」


「そうですね、私も負けてられません」


楓の妻達は楓の真剣な様子を見て再度惚れ直したのか頰を赤色に染めて皆さっき以上のやる気オーラを醸し出していた。


成り行きで行動する組はいてもたってもいられない様で城内の訓練場へ走って行った。


「あ!私達も行こ!」


「そうですね、動きの確認をしなければ…」


「ヒストリアには負けん!」


こっちもこっちで成り行き組と同じ心境らしく少し遅れて訓練場へ走って行くのであった。


「いやぁ、楓のお嫁さんはみんな凄いね」


「だな、我も見ていて面白かった。自分がなりたいかと言われれば確実に否と答えるがな」


「お前らぁ…よし!今からお前らをしごいてやる異空間に転移するから付いて来い!」


「お、いいね」


「アルと協力して楓を討伐か。セバス後は頼んだぞ」


「畏まりました」


「は?セバスも内心面白がってただろ?ボコボコにしてやるから付いて来い!」


楓はそう言ってその場に異空間へつながるゲートを出現させアル達に入る様指示をしていく。


セバスも図星だったのか苦笑いをしながらルシフェルの後を追って行くのであった。


「あれ?会議は?」


最後に残った国王であるバルバトスや大臣達は気が付けば戦闘組が誰もいない事に気付き困惑するのであった。

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