緊急会議 1
楓達がバルバトスに報告をしている頃、帝国のとある一室では肌が人間のそれではない者が五人と、腕が鱗に覆われている人物が一人、そして後ろにボロボロの女性を従わせている人物が一人。
そいつは唯一人間だが体には脂肪がいっぱいで欲望のままに生きてきた事がよく分かる体型をしていた。
「斥候の魔物とドラゴンが全滅だと!」
「そうだ、何者かは知らないが私達の可愛い下僕を1000体全滅にされた」
「それは俺もだ。まぁ、いてもいなくてもどっちでもいい有象無象だったがそれでもドラゴンだ。人族では到底勝てまい」
「ふっ、『元人族』が何を言っているんだ。まぁいい。ここにいる七人と『あの方』で世界を征服するんだ。今回はデスハイム王国を占領し、資源や新たな人材の確保をするがその後は魔王や神竜を殺す」
「分かっている。今回は前哨戦でしかない。スマートに終わらせよう」
「こちらもドラゴンのストックがまだある。今回は3000出そう」
「魔物は5000はいけるぜ」
「十分だ。私は役に立つかどうかは分からないが人族を1000用意した。まぁ、これは死のうが生きようがどうでもいい奴らだ」
唯一の人族であるその男はいやらしい笑みを浮かべながらそう言い切る。
それにつられてなのか他の六人も同じ様な笑みをこぼす。
「では、私達の最初の栄光をその手に掴みに行こうか」
「「「「「我ら、『永遠の闇』の名の下に」」」」」
最後に七人は同じ方向を向いて手を胸に持ってきて頭を下げ、声を合わせてそう言うと闇の中に消えていくのであった。
「それで、もし帝国の仕業ならこれって戦争になるんだよね?こんなにのんびりしていていいの?」
「それは目の前にいる国王様に言ってくれ」
「のんびりはしてないぞ。こうして魔王と伝説龍、そしてそれを従えている人間がいるんだ。ここで話を聞いていた方が今は有意義だろう?」
日向の素朴な質問にバルバトスは笑いながらそう答える。
もし、ここに楓達がいなかったらバルバトスは発狂していたかもしれないが、今この王都デスハイムにはドラゴンや魔族よりも心強い存在がいるのでバルバトスは正気を保っている。
「まぁ、そうは言っても対策を練る為に会議はするが…」
「楓くん?」
バルバトスが話している途中でいきなり楓の顔が険しくなる。
それに気付いた日向は楓を心配する様に声を掛けるが、楓は少し悩んだ素ぶりを見せたがすぐに全員の顔を見る。
「今、ちょっと帝国の様子を見てたんだがなかなかやばいぞ」
「まさか、さっき言ってた事が本当だった?」
「あぁ、ミルのお父さんもあんまり油断してたらこの国が潰れるぞ。今回はそのレベルだ」
「ま、まて。一から説明してくれ。何があった?」
さっきまでいつもと変わらない雰囲気だった楓がいきなり真剣になって全員に話を始めるからかなり重要なことだとはわかったので全員に緊張が走る。
「帝国は魔族、ドラゴンと共闘してこの国に進軍して来ている」
「数は?」
「兵士が1000、魔物が5000、ドラゴンが3000だ。しかも何が厄介かって主導者が帝国の王ではなく一部の者の企みでしかない。魔族は五人しかいないし上位種のドラゴンなんて1体しかいない」
「斥候のつもりか?」
バルバトスは顔をしかめながら楓に質問する。
「いや、多分全力だろう。この戦争は帝国というよりも一部の奴らとの戦争になりそうだ。姿が見えたのは7人、そしてその7人のリーダーが『あの方』という奴みたいだがこれはその場にいなかった」
「つまり、帝国として攻めて来ている訳ではないと?」
「あぁ、戦争にしてはそこまで数が多くないからな」
「十分多いじゃない…」
楓の物言いにルミナはため息を吐きながらそう突っ込む。
ルミナ達はずっと楓達の話を聞いているだけだったが、いきなり場の雰囲気がピリついたのに少し動揺している。
「いや、魔族の場合5000というのはだいぶ少ない方だ。我の軍勢は軽く100万を超えている。この世界の魔族達がどうかは知らないがそれでも5000は少なすぎる」
「実際魔族かどうかも怪しいな。『元人間』とかいう単語も聞こえた」
「今は考えても分からない…か」
「そうです、ですが奴らはすでに進軍を始めています。帝王は敢えて無視をしているのか全く動きがない状態です」
「ふむ、あわよくば漁夫の利を狙う積もりだな」
バルバトスは少し考えたそぶりを見せ何時の間にか持っていたベルを鳴らした。
「はっ!」
「これより緊急会議を始める。準備を頼んだ」
「畏まりました!」
バルバトスがベルを鳴らすと部屋に執事らしき人物が入って来てバルバトスの命令を受け、すぐに部屋を出て行った。
「悪いがカエデ達も会議に出席してくれないか?安心してくれ、面倒臭い奴は今回の会議には出席させない」
バルバトスはそう言って楓に頭を下げる。いくら緊急事態とはいえ国王が頭を下げる事は本来あってはならない事だ。
だが、バルバトスはそれを承知で楓に頭を下げている。
そこには自分の国の民を出来るだけ傷付けたくないといった愛国心が感じられた。
「分かりました。行きましょう」
「ありがとう、助かるよ」
楓はバルバトスの願いに応じ、一旦クランメンバー全員の顔を見てみんなの前で顔を引き締めるとそのままバルバトスに続いて部屋を出て行った。
「格好良いね」
「えぇ、私達も続きましょう」
「そうね、帝国のせいで楓との思い出の地を潰されたくないもの」
「本当です。私達も頑張らないといけませんね」
「僕達も行こうか」
「そうだな、この世界の魔族がどの程度の力を持つか気になる」
「お供します」
『無限の伝説』のメンバー達は一人一人そう呟いて自分達のリーダーである楓の後ろに続いて行くのであった。




