魔物討伐隊 2
「はぁ、俺もう無理…」
「楓くんがこの世界に来て一番負のオーラを出してる!」
「旦那様…大丈夫ですか?」
「あ、あぁ想像以上にむさ苦しかったのと周りの視線がな…」
楓達は現在、王都を出発して約10時間位が経過し日が傾いてきたので、魔物が少なそうな平野で各々テントを立てたりして野営の準備を始めている。
この半日で楓は冒険者達のむさ苦しさと日向達を見る気持ち悪い視線がストレッサーとなり今は日向達に介護されていた。
「ふむ、意外とカエデは繊細なのかもしれんな」
「そうだね僕もあんなカエデを見るのは初めてだよ。ちょっと面白いけど可哀想だね」
「まぁ、これも慣れだろ。これが最後という訳でもないだろうし、これからの為にも我らはあまり干渉せずにカエデはその妻達に任せる事にしよう」
「そうだね、僕達はテントや夕食の準備をしようか」
アルとルシフェル、セバスは楓達の代わりにせっせと夕食の準備を始めている。
アルとルシフェルは料理が出来ないので完全にセバスの言いなりだが…
自分の主人をこき使う執事というのはどうかと思うが、セバスもルシフェルも特に何も思っていない為、問題はない。
一方で楓だがさっきから誰が楓を膝枕するのかで争って
いた。
アル達の配慮で他の冒険者達とは少し離れた位置を取ってくれた為、誰にもこの争いは見られていないが、もし、今の楓の状況を見られたら軽く戦争が起こるだろう。
「うぅ〜今はこの状況に突っ込む気力もない…」
「えへへぇこれも悪くないね!」
「そうですね、みんなで旦那様にひっつくのも悪くないです」
「そうね、ちょっと恥ずかしいけどたまにはこういうのもいいわね」
「か、カエデ様。大丈夫ですか?」
日向が楓を膝枕して、ミルとルミナが片方ずつ手を握って、エリスが楓の上に乗って抱きしめている。
普段の楓なら恥ずかしがって絶対こんな体勢にはならないだろうが、今はそんな余裕もない為、日向達の好きな様にさせる。
さっきも言ったが今の楓の様子を見たら本当に冒険者の中で戦争が起こるだろう。
「流石カエデ様。本日はお疲れの様ですが大丈夫ですか?」
「ん?あぁ騎士団の…何とか1日目を乗り切ったよ。お前らも大変だな」
「そうですね、なかなかAランク冒険者達が厄介で…っていうかカエデ様達だけで大丈夫な気が…」
「ギルドマスターが緊急クエストを出した後だったからな。時すでに遅しって訳だ」
「それは…っと僕達で頑張って日向さん達の事を隠していますがもし、Aランク冒険者達からちょっかいがかかったらごめんなさい。ヒナタ様達は絶世の美女といっても過言ではありませんから…」
騎士団の青年は楓に挨拶に来たのか少しそわそわしている様子だった。
今回のクエストで唯一楓達が安心出来る相手といえば五人しかいないが騎士団の人達だろう。
この前、騎士団は楓の実力の一端を知っているし、このクエストに来る前にルーナに楓の事でしっかり気を使う様にと念を押されているのもあって騎士団の五人だけは楓達の事を歩いている時もさりげなくフォローしてくれていた。
この青年は楓に憧れているらしく楓の事を様づけで呼び、楓と話をしている今も嬉しくて仕方がないと言った様子だった。
「ありがとな。まぁ、もし突っかかってきたら返り討ちにしたらいいだけだから心配はしてないよ」
楓は騎士団の青年と話したことによってさっきまでのぐったりとした様子からだいぶ元に戻ってきた。
日向達もその事が察せられたのか膝枕と言う名の拘束を解き騎士団の青年と楓の話を大人しく聞いていた。
「カエデ様なら余裕でしょうね。他の冒険者もカエデ様を注目していましたが何かあったら僕達が注意するので言っていただければ嬉しいです」
「ありがとう。困った事があったら頼らせて貰うよ」
「はい!では僕はこれで…また明日頑張りましょう」
騎士団の青年は楓にそう言ってその場を去っていった。
この前の訓練ではほぼ有象無象と化してあまり意識していなかったがこうしてしっかり見るととても頼りになる青年であった。
「元気になった?」
「あぁ、あまりうじうじしていても何も変わらないからな。俺達もアル達の手伝いに行こう」
楓はそう言って立ち上がり日向達と一緒にアル達の夕食の手伝いをする。
アル達も楓の様子がだいぶ良くなったことがわかったのか、嬉しそうに一瞬にっこり笑った後はいつもと同じように楓をからかうのであった。
「いやーそれにしても今日は酷かったね」
「だな、冷静に考えたらただ目的地に向かってるだけで負傷者が五人も出るのはやばい」
楓達は夕食を作り終えると楓のストレージの中に入っている机を出して八人で仲良く夕食を楽しんでいた。
現在楓達は1日を振り返っていたが楓の言う通り今日は五人もの負傷者が出た。
と言うのもAランク冒険者は最初は先陣を切っていたものの、途中から後ろに下がり新人に道中の魔物を相手させていたのだ。
言ってもDランク級やCランク級の魔物だったが新人冒険者からしたら普通に脅威である。
最初は威勢の良かった新人冒険者も一人肩を噛まれた事によって一気に緊張が生まれ動きが硬くなり魔物に好きな様にされたと言う訳だ。
本来ならその後、楓が負傷した冒険者達を治療すれば良かったのだが、あくまでもBランク冒険者程度の実力と言う事なので自重しておいた。
いくら新人と言えども治療用の薬草は持って来ていた様でそれを使って応急処置をしていた。
Aランク冒険者はといえば片っ端から移動中も女性を見付けては夜の相手を探していた。
何人かの女性はAランク冒険者と言う甘い蜜を吸おうと媚を売っていたが基本的には断られていた。
Aランク冒険者も不機嫌になりつつもそこまで狙っていたと言う訳ではないらしく大人しくそのまま引き下がっていた。
日向達に関しては楓と騎士団の人達で全力でブロックしておいたので気付かれる事はなかった。
「それにしても、少し不安要素もあるな」
「そうだね、なんでこんな平原にCランク級の魔物がいたのかな?」
「ちょっと不安だねー」
ルシフェルが自分の考えをみんなに話すとアルと日向も同調する様にそう言う。
楓はナビちゃんから基本的に何でも情報を引き出せるし自分でも原因を探ろうと思えば出来るのだが、どうせこれからその原因を排除するからと特に詮索はしなかった。
後にまぁまぁ面倒臭い事になるとは知らずに…




