ハーレムデート 2
「おい、今そこの女を全員こちらに渡すのなら両腕を切るだけで許してやる。渡さないならそこの女共もただで済むと思うなよ」
楓が武器を持っていない事をいい事に貴族達は言いたい放題だ。
「悪い、相手にするのも面倒臭くなってきたわ」
「貴様、何を言っていr…がはっ!」
「お前!よくm…ぐへっ!」
楓は例の如く最後迄言わせないまま気絶させる。
これがチンピラならまだ対処は楽だったんだけど貴族という事で詰所の人達が引き取ってくれない可能性がある。
それ所か不敬罪…はないな。ミルに喧嘩売ってる時点で確実にこいつらが負ける。
「よし、詰所の警備兵が来る迄ここに吊るしておこう」
楓は一人で納得して魔法を使い、気絶している二人を店から少し離れた所に吊るしておく。
店の前だと風評被害にあうかもしれないしな。
その時に、『この者達、ミルテイラ様に逆らう不届き者なり』という看板も忘れない。
多分、この看板を見ただけで騎士団の人達なら分かってくれるだろう。
警備兵と騎士団は所属が違うが騎士団の方が警備兵の上司に当たる為、絶対に話がそこ迄いく筈だ。
「さて、片付いたな。さっさとお昼を済まして午後のデートを楽しもうか」
「「「「うん!(はい!)」」」」
と、言う事で一件落着したのだがチンピラ貴族とのやりとりが終わるとすぐに店のオーナーらしき人がきてめっちゃ謝ってきた。
なんでも、この王都の有力貴族のバカ息子らしく度々この店に来ては他の女性をナンパしたり料理に文句を言ったりしていたらしい。
貴族という事で文句を言う事も出来ないまま好き勝手されていた訳だが、今回楓が先程吊るしあげたのを見て謝罪とともに感謝もされ、お礼とお詫びにとオーナーによるフルコースをご馳走して貰った。
別にお金には困っていないがオーナーの感謝の気持ちという事でありがたくご馳走になる事にして出されてくる美味しそうな料理に舌鼓を打つのであった。
「美味しかったね」
「えぇ、エリスの料理とはまた違う美味しさがありましたね」
「そうね、でもやっぱりエリスがどれだけ凄いかが分かったわ。ここってよく見てみたら王都で一番おいしいって有名なレストランよ。そのオーナーに引けを取らないって普通にすごいわ」
「だな、俺達はエリスのお陰でかなり舌が肥えて来たからな。それでもしっかりとした料理で美味しいと思わせるんだから普通にこの店凄いな」
「ほ、褒めすぎですよ」
料理が美味しかったお陰で初っぱなにあったバカ貴族の事はどうでもよくなり気持ちのいい気分でデートを再開させる。
店を出るとバカ貴族の姿が見えなかったので多分警備兵に連行されて今頃事情聴取をされているのだろう。
自業自得とは言えドンマイである。
「さて、次はどこに行こうか…」
「それならみんなで演劇を見に行こうよ!」
「面白そうね。私は賛成よ」
「私も異論はありません」
「私はご主人様にお任せします」
楓がデートプランを悩んでいると日向が演劇を観に行きたいと言う。
ミル達からは特に反対意見がなかったので楓達はそのまま演劇をやっている場所迄歩いていく。
ここでもやはり楓達は目立つ様で周囲から滅茶苦茶見られている。
周囲の人達はミルに気付いて近寄っては来ないが、それでも遠目から楓達に羨望の眼差しを向けていた。
「うぅ〜居心地が悪い」
「仕様がないんじゃない?他の人達からしたら私達ってちょっと羨ましい対象なのかもね。多分、私達の余裕の雰囲気っていうかそう言うのに憧れているんだと思う」
今、ルミナの言った通り楓達にはどこか余裕を感じさせる雰囲気があった。
それは、生活においても戦闘力においてもそうだ。
楓達は貴族ではない。ミルも前までは王族だったが今は楓の妻となっているので、王族ではあるが平民とあまり変わらない。
そんな、自分達と変わらない身分の子供が自分達よりも余裕そうにデートを楽しんでいたら普通に嫉妬や羨ましく思うだろう。
多分、そう言う事だと思う。
演劇場は約10分程歩いた所にあり、丁度お昼が終わった時間帯という事もありかなり混んでいたが、楓が特等席を金貨5枚で買い取った為、日向達は楽しく演劇を見る事が出来る。
ちなみに楓達が座っている席は一席約大銀貨1枚、約1万ルリである為、楓はその十倍で買い取った事になる。
「楽しみだねー」
「この演劇ってどんなものなの?」
「確か勇者が愛する姫を置いて魔王討伐に向かうのを題材にしている物語だった筈です」
「なかなか面白そうですね」
エリスは入る前に何を見るかを確認していたのかルミナの疑問に答える。
みんな初見らしくかなり楽しみにしていた。
かく言う俺も地味に楽しみにしているのだが…
『ネタバレしてあげましょうか?』
やめて下さい…
楓は始まる迄ナビちゃんがネタバレしようとするのを全力で阻止していた。
「あ、そろそろだね!」
演劇が始まる前の合図に魔法で大きくした音楽が流れ日向がそれに反応する。
五人は仲良く手を繋いでこれから始まる演劇を見るのだが、エリスだけこの演劇が終わってからの事を考えちょっぴりドキドキするのであった。




