嫌な予感 3
「ゴブリンキングが最低でも2体?」
「そうだ、つい昨日冒険者がゴブリンの討伐に行ったのだがその時にゴブリンキング2体と遭遇したらしい。それによって三人の冒険者のうち一人が死亡、一人が重傷だった」
「カエデ、ゴブリンキングって我の記憶によれば雑魚だった筈だが?」
「そうだな、俺も大した事ないと思うが…」
ルシフェルが疑問に思い思わず楓にそう質問したが、楓も同じ事を思っていたらしくその意見に共感した。
「流石バルバトス様が推薦されるだけあるな。ちなみにゴブリンキングはAランク相当だ。ちなみに今回は最低でも2体と言う事だから本来なら騎士団に要請して冒険者と合同で討伐する予定だったのだが、バルバトス様が君達に頼めば大丈夫とおっしゃられたので招集させて貰ったんだよ」
と言う事はパドンは昨日のうちに被害にあった冒険者に事情を聞き、すぐに王城へと赴き事情を説明して翌日には楓達を招集したのだろう。
いくら緊急とはいえかなりの手際がいい。それだけパドンが優秀だと言う事だ。
「それじゃあ今回は僕達だけでそのゴブリンキングを倒してくればいいのですか?」
「いや、今回は緊急クエストとして明日に討伐隊を組んで貰う予定だ。ゴブリンキングが最低2体と言う事はその他のゴブリンも相当な数だろうからな。多少だが騎士団も出動してくれるそうだ」
「私達だけで行った方が早く片付きそうだけどね…」
パドンの話を聞いて楓の隣で話を聞いていたルミナがボソッとそんな事を呟いた。
幸いパドンには聞かれていなかったが、楓はルミナの意見に大賛成だったがすでにクエストは張り出されているらしく、もう取り消しは出来ないそうだ。
というのも緊急クエストだけあってかなりの報酬らしい。
参加するだけで大銀貨3枚だと。それだけ危険だという事が分かる。
「それで、僕達は強制参加という訳ですか…」
「すまない、今トップクランの面々は全部他のクエストでいなくてね。君達はまだDランクだがバルバトス様の推薦だ。かなりの腕利きだと分かる」
「分かりました。それで、明日何時にどこ集合なんですか?」
「ありがとう、明日は9の鐘がなる頃に王都の正門から出た所に集合だ。長期戦が見込まれるから野営の準備も頼むよ」
パドンは楓達に礼を言ってから明日の事を詳細に話していく。
結局楓達はその後約1時間ほど明日のゴブリンキング退治について話し合うのだった。
なんでも今回は楓達よりもランクの高いAランク冒険者が指揮をとるらしく楓達はあまり好き勝手に動く事が出来ないらしい。
あくまでBランク冒険者として動いて欲しいとの事だ。
それでも危険だと感じたら自分達の判断に任せるとパドンは言っていたのでそこまで考える必要はないだろう。
「はぁ、他の冒険者か…揉めなきゃいいけどな」
「カエデ、多分それは無理だね」
「安心しろ、寄ってくる羽虫共は我がなんとかしてやる」
「ルシフェルさん、出来れば揉め事は避けてね」
「向こうがその気なら保証は出来んな」
ルシフェルが堂々とそう言い切るのを聞いてパドンは内心でため息を吐く。
先程楓が言った通りほぼ100パーセント何かしら揉め事はあるだろう。
パドンだって最初日向達を見た時一瞬ドキッとしてしまった位だ。
欲望に忠実な冒険者達が日向達を見て大人しくしている訳がない。
基本的に冒険者同士の揉め事には冒険者ギルドは不介入だが楓達に手を出して無事だとはパドンも思わない。
パドンもギルドマスター故にそこそこの力がある訳だが、この中の誰一人として勝てるビジョンが浮かばない。
あの箱入り娘だったミルにも、だ。
「出来れば冒険者同士で殺し合いはやめて欲しいね」
「善処する」
冒険者達が日向達に色目を使うのは確定。それを楓達が撃退するのも確定事項だ。
ならせめて冒険者同士で殺し合うのはやめてくれとパドンは楓達に頼み楓はそれを了承した。
もともと楓もそこまでするつもりはない。ゴブリンキングを討伐する為に討伐隊を組んでいるのにそこで殺しあっていては討伐隊を組んだ意味がない。
「それは助かるよ。君達は冒険者でも例外だから言うけど、冒険者っていうのはみんな気が強くて自分が最強だと思い込んでる奴らばっかりだ。今回は騎士団が多少は牽制してくれるだろうがそれでも君達にちょっかいをかける冒険者は多いだろう。不要な言葉だとは思うが気を付けてくれ」
「ありがとうございます。では僕達は準備がありますのでまた明日よろしくお願いします」
まさかゴブリンキング以前に冒険者に気を付けなければならないとは、と楓達はなんとも言えない気分になるが仕方がない。
「本当に面倒臭い事になったね」
「旦那様はトラブルを引き寄せる運も強いみたいです」
「本当に、まさかゴブリンキングよりも冒険者を警戒しないといけないなんて思ってなかったわ」
楓の妻三人は先程の楓達の話を聞いてそんな事を言い合っていた。
「さて、何時迄もうじうじしてられないし、明日から必要になりそうな物を買いに行こうか」
「「「おー!」」」
今回は日向とルミナだけでなくミルも一緒に掛け声をやっていた。
かなり恥ずかしそうだったが、かあいい。
「買い物はお任せ下さい」
「いや、みんなで行こうよ。どうせ今日はクエストを受けられないんだし」
「い、いやでも…」
「ついでにエリス達とデートだ。明日からしばらく忙しいし今日位はみんなで遊ぶぞ」
「わ、私もですか?」
「勿論だ」
今朝、日向からエリスにも気を使ってやれと言われたばっかりなので、楓はエリスにそう言ってみんなで買い出しに行こうと提案する。
「僕は家で待ってるよ。日向達で仲良く買い物とデートを楽しんできなよ」
「そうだな、セバス我々もアルと一緒に帰るぞ」
「畏まりました」
アルとルシフェル、そしてセバスは楓達に気を使って先に帰ると言って三人で帰っていった。
「うふふー楓くんとデートだ!」
「久しぶりですね」
「そうね、五人で楽しみましょう」
「そ、その…よろしくお願いします」
日向達は嬉しそうに笑いながらデートを始めていく。
エリスはかなり恥ずかしがっていたがとても嬉しそうにしていた。
そして、これから1日楓のハーレムデートが始まっていくのであった。




