説明と模擬戦 3
「ヒストリア!」
「任せて!」
アルの開始の合図がかかるとルーナがヒストリアに何か合図を出し魔法を自分に掛けさせる。
「身体強化って魔法でもあるんだな」
『はい、魔法で掛けた場合消費した魔力量に比例して持続時間が伸びるのが魔法で身体強化を使う利点です』
楓が一瞬でヒストリアのした事を理解して意外な魔法が出て来た事に驚いていると、ナビちゃんの解説が入った。
でも、その言い方からするとデメリットもあるんだろ?
『その通りです。魔法で身体強化を使用した場合、消費する魔力量が多いので並みの魔術師では行使出来ません。しかも、スキルの身体強化の方が威力が一割程高いのでスキルを持っていたら普通はスキルを使います』
確か、身体強化って後天的に会得出来るよな?
『はい、実際にルーナさんは身体強化のスキルを会得されています。まぁ、何か作戦があるのでしょう』
ルーナがヒストリアに合図を出して、身体強化の魔法をかけるその間約3秒のうちに楓はナビちゃんに身体強化を魔法で掛けた場合のメリットデメリットを理解していた。
そこから考えられる可能性も…
「カエデ、いくぞ!」
「はい、お願いします」
ルーナが剣を再度構えて楓にそう一言言ってから楓に向かって駆け出して来たので、楓もそれに応じる様に返事を返してからゆっくり歩いてルーナが攻めて来るのを待つ。
その際に、楓はヒストリアの方が何かしているのは分かったが、今回は全ての魔法や攻撃を初めから無効化しないと決めている為、泳がしておく。
「へぇ、面白い事考えますね」
「チッ!」
ルーナは楓と剣を交える寸前にヒストリアに掛けて貰った身体強化を解いて自分のスキルの身体強化を使用した。
すると、先程より一割増しのスピードや威力が出るので、楓に一泡吹かせる事が出来ると二人は考えたのだろう。
楓はそれをものともしないで自分が攻める事で僅かなタイミングのズレをなくし、すぐにルーナ達の手を素直に賞賛した。
まさか、身体強化のデメリットを利用して相手の油断を誘う等、誰も考えた事はないだろう。
楓はもちろんの事、日向も魔法創造スキルのお陰でかなり自由に魔法が使えるが、別に魔法創造が使えないからといって作戦がないかと言われれなそうではないのだろう。
実際に、今の攻撃は楓も予想していなかったし、まさかルーナが初撃で決めてくるとは思わないだろう。
ルーナは舌打ちをして一度体制を立て直す為に引き下がったが、次は自分だとヒストリアの魔法が発動される。
『火槍』
ヒストリアは中級魔法の火槍を10個空中に浮かせる。
これには観客で見ていた騎士団や宮廷魔術師達も驚きの声をあげ、ヒストリアの腕に皆自然と拍手をしていた。
先程のルーナの初撃は分かる人には分かったのだが今回のヒストリアの魔法は誰でも凄いのが分かった。
普通、この火槍は一度の魔法に一つしか具現化出来ず、攻撃の際も一本の火槍が相手に向かって飛んで行く様になっている。
が、今回ヒストリアは普通の十倍もの数の火槍を生み出し、楓の方に向けて静止させていた。
「ヒストリアさん、凄いですね」
「それは私だって宮廷魔術師長のプライドがあるから。カエデ、これ大丈夫?」
「えぇ、その位なら大丈夫です。ほら」
「っ!?やっぱり凄いね。私達の常識が通じない…」
ヒストリアは若干やり過ぎかなと思いカエデに確認をとるが、楓は全く臆した様子もなく右手の指を格好良く鳴らすと同時に水槍を10本自分の周りに具現化させた。
ヒストリアは一瞬悔しそうに眉をひそめたがそれも一瞬で、すぐに楓だから仕様がないと呆れた様にため息をこぼした。
「なんか呆れられてますけど…ルーナさんもっと上手く気配を消しましょうね」
「これもダメか!」
楓がヒストリアと魔法を維持しながら話していると、横から気配を消してルーナが襲いかかって来たのを楓は余裕そうに防ぐ。
ルーナはあまり気配を消す等という暗殺寄りの攻撃が苦手なのは分かっていたが、それでもルーナが本気で気配を隠せば、デスハイム王国の騎士団では誰一人としてルーナの気配を察知出来る者はいない。
だが、楓はそれを余裕そうに忠告しながら防ぎきる。
ルーナも自分には合わない攻撃方法と分かってはいたが、やはり通じないと悔しいものでこちらもヒストリアと同じ様に一瞬だけ眉をひそめるて悔しがる。
もう、見ている観客たちはルーナやヒストリアの次元の違いに圧倒され、それを軽々と凌ぎきる楓に崇拝にも似た目を向ける。
自分達の上司で、この国で最強と謳われる二人が協力しても勝てない相手。
この前、一度指導を受けたがあの時は何か道具を使ってルーナ達に勝ったと勝手に騎士達や宮廷魔術師達は思い込んでいた。
少し教えるのが上手な青年の冒険者。その位にしか思っていなかった。
だが、今はルーナやヒストリアの攻撃をそのまま受け止め、捌いている。
今の楓達の試合を見てまだ楓をただの冒険者だと愚考する者は一人もいないだろう。
それ程までに楓はルーナ達二人を圧倒していた。
観客者達はそれから楓達の試合が終わる迄の間、少しでも自分達のものにしようと真剣に三人の立ち回りを観察するが、次元が違い過ぎてただ見惚れる事しか出来ないのであった。
ちなみに模擬戦は約10分にも及んで行われ最後はルーナとヒストリアの同時降伏によって終わった。
二人は敗北宣言をするとそのまま勢いよくぶっ倒れ、いくら楓が最強だからといっても自分達の力の無さを痛感するのであった。




