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初めての授業

「最初に皆んなの今の力を見たい。俺とアルが相手をするから全員でかかって来い」


これが昨日、アルと考えていた一つの作戦だ。


一人一人相手をするよりも二人で四十人全員相手にする方が楽なのと時間が短くてすむ。


「あ、あのいくらなんでもそれは流石に…」


「大丈夫だ、さっきの見てたろ?武器はここに人数分置いておくから好きな物を持って行ってくれ」


生徒の一人が集団で相手をする事に少し抵抗がある様だが楓は有無を言わさぬ態度で武器をホイホイ出していく。


「大丈夫よ、次こそ皆んなの力を合わせてあいつをぶっ倒してやりましょう」


「『楓先生』な」


「うっ、か、カエデ先生…」


「よーし」


ルミナは顔を真っ赤にしながらもしっかりと約束を守っている。やっぱり、意外と真面目なのな。


「まぁ、でもルミナの言う通りだ。俺達をボコボコにする勢いで来てもらって構わない。今回は皆んなの実力を見たいからな」


「わ、わかりました」


本当に貴族がいるのか分からない程皆んな大人しい。貴族がいないのかな?


『この国の貴族はそこまで乱暴なことはしないらしいですよ。国王がだいぶ頑張ったようです。』


へー、流石ミルのお父さんだな少し見直してしまった。


「貴方達はアルメダ先生から攻めなさい。私達はコッチからカエデ先生を攻めます!」


ルミナはもう一人のクラスのリーダーらしき人に指示をして分隊を作った。


なかなか賢いがあいつちゃっかりもう一度俺に挑んで来やがった。執念深いねぇ。


「おー、あの子なかなかやるねー」


アルはルミナを見てそう賞賛していた。まぁ、優秀なのは確かだな。


「行きます!」


「こっちも行きます!」


ルミナが楓に向かって宣言すると向こうのリーダーもアルに宣言をしていた。


良くも悪くもルミナが見本って言う訳か…


さぁ、こっちに流れてくる分はしっかりと力を見極めてやらないとな。これからの方針に関わってくる。




楓とアルは両方共余裕そうに全員を捌いて丁度五分が経った所で一気に決めにかかった。


「ま、参りました…」


最後にルミナが敗北宣言をした事によって2対40の模擬戦が終了したのであった。


「また負けた…って言うか先生達何者ですか?一応このクラスの人達は将来騎士団か宮廷魔術師志望が大半ですよ?それをたった二人で捌くなんて…」


「俺はお前らと同じただの16歳だ。アルはちょっと年をとっているが…」


アルが年をとっていると言う件で楓が言葉を濁したのを見てアルは面白そうに肩を震わせていた。


「まぁ、別に隠してるなら聞かないけど…」


楓が言葉を濁した事によってルミナが拗ねた。


「悪かったって、そう拗ねるなよ」


楓はとりあえずルミナの頭を撫でる。これが一番効果的なはずだ…


「な、何するんですか!」


楓が頭を撫でたらルミナは顔を真っ赤にして手のひらを大きく広げて楓の頰に直撃させる。


いわゆるビンタというやつである。


「痛っ!」


楓は避けようと思ったが避けなかった。これで良いんだ、多分…


「ふんっ、先生が悪いんです!」


ルミナはそう言い残してクラスの元へと戻っていった。ルミナはクラスでもなかなか人気らしくみんなからお疲れーっと労われていた。


「お疲れ、楓くん」


「お疲れ様です、旦那様」


「おー、お疲れ…」


楓はそのまま日向達の声の聞こえる方へと顔を向けたがピクッと固まってしまった。


何故なら声を掛けて来た二人が笑っているのに目が笑っていないという高度なテクニックを見せて来たからである。


あれ、俺どこかで地雷を踏み抜いたっけ?


『えぇ、盛大に』


まさか、俺何もしてないぞ?


『自覚なしですか…』


そんな諦めた声を出さないで!


「随分とルミナさんと仲が良さそうでしたね。私達という者がありながら…」


「それとも私達だけじゃ物足りないのかな?」


「ふ、二人共なんで怒ってるの?ごめん何かしたっけ?」


「「はぁ…」」


二人にまで呆れられた!?


「まぁまぁ、それよりカエデ。みんなにダメだった所を指摘しに行ってあげないと。みんな待ってるよ」


楓が割と本気で困っているとアルが横から助け舟を出してきた。


ナイス、アル!流石俺の仲間だ!!!


という事でそこからは楓もアルも仕事モードに入り生徒一人一人にアドバイスや注意をしていたので日向達もあまり楓を責める様な事はしなかった。


この日の実技の時間は一人一人にアドバイスをしてから楓とアルの模擬戦を見せた所でチャイムが鳴り終了となった。


楓とアルの模擬戦では手を抜いているとはいえ人の戦う領域ではなかった為皆面白そうに?見てくれていた。


尚、楓達のアドバイスが他のどの実技の先生よりも的確かつ分かり易かった事により生徒達も楓の事を素直に先生として認めたのであった。


まぁ、今日の授業を振り返ったのならば大成功と言った所だろう。


ちなみに楓は初めバルバトスに冒険科を任せると言われていたがそんなものがない事を知り、バルバトスに嵌められた事に気付き軽く項垂れるのであった。

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