初対面 3
お昼になって皆持参したお弁当を食べているが誰も楓達に話しかける者はいなかった。
完全にアウェーだな。
シエラ先生は教員室で食べるそうだ。付いて行こうとしたが大人がいっぱいいる所より同年代がたくさんいる所の方が良いと思ったがそうでもなかったみたいだ。
「楽しみだね」
「あぁ、しっかりと先生出来たらいいな」
なんだかんだ言って日向も楽しみらしい。しかもここにいるのは王都のエリートだ。育てがいがありそうだ。
「それじゃあこれから実技の授業を始める」
お昼の休憩時間が過ぎ、今いるのは王立学院の訓練場だ。流石王立学院、訓練場も王城にあるのと遜色ない。シエラ先生も様子を見に来ている。頑張らねば。
「ちょっと待って下さい!」
楓が張り切ってそう言うと一人の女の子が待ったをかけて来た。
金髪の髪の毛が肘辺り迄伸びていてミルや日向と同じ位美人だった。
「あなたみたいな人に教えてもらうほど私は弱くありませんしそんな時間もありません。早く専門の先生と変わってください」
いきなりボイコットされたんだけど…少し位は話を聞いてくれてもいいんだけどな…
「あー、しばらくの間は俺達が先生なんだ。まぁ、悪い様にはしないからとりあえず話を聞いてくれ」
『それ、悪役のセリフですよ』
言ってて俺も薄々感じたよ。
「冒険者が私より強い?ふざけないで下さい。私は勇者の末裔のルミナ・アスタルトです。貴方達とは違って本気で魔王討伐を目指しているんです!」
わーお、勇者の末裔を名乗る人が出て来たよ。
ナビちゃん詳しい解説よろしく。
『勇者は過去にも何度か召喚された事があります。多分その時の勇者が子供を作って代々血を受け継いで来たのでしょう』
そして血を受け継いでるからそこそこ強いっと。
『そうなりますね、現に多分この中では一番強いですし…』
「それは良いことだ。よしじゃあ授業を始めるぞ」
面倒臭いのでスルーしてしまおう。
「ちょっと何でスルーするのですか!」
「面倒臭いから?」
「あなた…」
めっちゃ怒ってらっしゃる。他の生徒もうわーみたいな顔をしてる。
あ、俺やっちゃったかも…
「もういいです、あなたに決闘を申し込みます。私が勝てば先生を変えて下さい」
決闘を申し込まれてしまった。まぁ、いい感じに作戦通りだからいいけど。
「いいだろう、じゃあ俺が勝ったらしっかり授業を受けてもらう。あと『楓先生』って言ってもらおう」
「いいでしょう、万に一つもあなたに勝ちはありませんから」
やる気になってくれた。ちょうどいいからこれをデモンストレーションにしてしまおう。本来なら志願者を選んでコテンパンにやるつもりだったがこっちの方が都合がいい。
「じゃあ、始めるか。ほれ木剣だ」
楓はそう言いながらルミナに向かってストレージから出した木剣を渡す。
「アイテムボックス?あなた…」
これにはルミナだけでなく他の生徒も驚いてくれた様だ。掴みはいい感じだな。
「まぁ、いいからさっさとかかってこい」
「あなた、剣は?」
「そんな物必要ない。ルミナに怪我をさせる訳にはいかないからな」
二人は生徒が集合している場所から少し離れてお互い向かい合う。
「舐め過ぎるのもいい加減にした方がいいですよ。後悔しなさい!」
ルミナはそう言いながら一気に距離を縮めてくる。
んー勇者よりは強いけどルーナよりかは弱いかな。流石勇者の末裔だ。それも真面目なのだろう。剣筋から凄い努力がされている事が分かる。
「剣筋はいいが真面目すぎだ。狙いがバレバレだぞ」
「な、私の剣を素手で!?」
剣を掴んでそのまま放り投げる。しっかりと受け身をとって体勢を整えている。
しっかりと訓練されているな、才能もピカイチだ。てかこんな凄いのがいるんだったら勇者要らなくね?
『要らないですね、全世界のトップを集めれば人類が勝つでしょう』
俺達が呼ばれた意味って…
『まぁ、そんな人類が全員協力的かと言われればそうでもないので勇者召喚も必要ですが…』
まぁ、本当にピンチにならないと動かなさそうだしな、こんなに意志が強い人も極少数なんだろう。
「ん?早く来い」
ルミナが警戒して全く襲って来ないのでこちらから挑発する。
「分かってますよっ!」
「ハイ終わり」
「な!」
ルミナがまた一瞬で間合いに入って来たので後ろに回って手刀を作り怪我をしない程度でぺちっと首を叩く。
「わ、私が負けた?」
「そうだな、俺の実力は分かってもらえただろ?ちなみに言っておくが他のみんなも俺の実技の授業を受けたら今のルミナの動き位はできる様になるぞ」
「「「!?」」」
楓のその発言に一番食いついて来たのはやはり生徒達だった。
楓の実力も証明され尚且つあのレベルになれる可能性があるのだ。食いつかない訳がない。
「じゃあ、授業を始める。みんな準備はいいか?」
楓はルミナを含め生徒達一人一人と視線を合わせてそう言うのであった。
そこに、楓が入ってきた時の様な嫌そうな目をする者は一人もいなかったのだった。




