初対面 1
「「「「いってきまーす」」」」
楓達は朝8時に王立学院に到着する様に少し早めにクランハウスを出る。
普通に歩いていけばだいたい30分位掛かる所にあるが楓達は馬車を使わなかった。
楓達は、いつかの移動手段であった魔法を使って移動速度を上げて屋根の上を走って行く。
見つからなければ全く問題はない。
お陰様で王立学院までは5分も掛からずに到着する。
「やっぱりこれ便利だよね」
「ですね、風をきっていく感覚がたまりません!」
日向とミルはあまりここまで速度をあげる事がない為新鮮に感じているのだろう。
まだ朝なのに二人とも結構元気だ。
「うわー、でっかいな」
「えぇ、それは王都が誇るエリートが通う学院ですもの。私は通う必要がありませんでしたけど」
王立学院って普通に日本の学校を想像してたけど普通にそれ以上にでかい。
大学と同じ位広いんじゃないか?
『マスターが日本にいた時に狙っていた大学よりは広いですね』
嘘だろ?あそこも結構マンモス大学だった気がするけど…
さすが異世界だ。
門の前にも兵士らしき人が立ってるし、どれだけ優遇されているのかも良く分かる。
「えーっととりあえず校長室にいけばいいんだっけ?どこだ?」
「こっちですよ」
ミルは何度かバルバトスと来た事があるらしく校長室迄の行き方も知っていたので先行してもらった。
「にしても凄いねー学校とは思えないよ」
「だな、俺達の高校とは比べ物にならないな」
「この学院に入れたら平民の子も将来が約束されるんだって。カエデも入ってみたら?」
「旦那様が学ぶ事なんて何もないでしょう」
「いや、楓くんは常識を学ぶべきだよ!」
「そうですね」
「そうだね」
と、こんな話で盛り上がっているがすでに常識という点については全員ネジが外れている為楓の事を言えないのだが誰もそれに気が付いていない。
『マスターが学ばないといけないのは自重ですね』
任せておけ、今回は上手くやるつもりだ。
『そうでしたね、楽しみです』
そんなこんなで話しながら校長室を目指して歩いて行くと何人か教員っぽい人を見かけた。
皆一様に驚いた様子をしていたが話がまだ全ての教員に通っていないのだろう。
「ここです」
「おー、これは想像通りだ」
目の前の扉には校長室と書かれていて高校の校長室とあまり変化はなかった。
「失礼します」
「あぁ、入ってくれたまえ」
軽くノックをすると中から声が聞こえて来た為遠慮なく扉を開ける。
中に入ると茶髪の50歳位の優しそうなおじさんが椅子に座って何やら書類仕事をしていた。
「この度、国王であるバルバトス・デスハイム様より指名していただきこの王立学院でしばらくの間臨時講師として働かせてもらいに来ました。カエデと申します」
毎度の事ながら初対面の目上の人に優雅に挨拶をしていく楓であった。
後ろで三人とも肩を震わせている。んにゃろ…
「あぁ、聞いているよ。なんでも化け物なんだってね。あいつがそう言うって事は相当なんだろう。しばらくの間よろしく頼むよ」
随分とミルのお父さんと仲が良いみたいだな。
「モッカー校長はお父様とこの学院の同期です」
楓が不思議に思っているとミルが後ろからコソッと教えてくれた。
なるほど、だからあんなに親しげなのか。
「今回君達に見てもらいたいクラスはAクラスだよ。なかなか才能のある子が多いから頼んだよ」
モッカー校長がいきなりプレッシャーをかけてくるんだけど…
「分かりました、それでこれからどうすれば良いのですか?」
「とりあえず君達を他の教員に紹介したいからそろそろ始まる教員会議に顔を出しに行こうか」
そう言ってモッカー校長は椅子から立ち上がり楓達を先行する。
楓達はその後を追っていく。しばし無言の時間が流れていく。
流石に校長に会った事で緊張してきたのか日向とミルはガチガチだ。
アルは特に気負った様子はなく、楓もこれからどうやって指導していくかを考えていた。意外と楓は人にものを教えるのが好きなのかもしれない。
アルはそう思っていた。
3分位校舎の中を歩いていくと中で誰かが話している声が聞こえた。
「ここだ、代表してカエデくんに挨拶してもらうからよろしく頼むよ」
モッカー校長はそう言って先に教員室に入っていく。
ミルのお父さんもそうだけどなんで直前になってそういう大事な事を言ってくるのだろう。
出来る事ならそういうのは校長室を出る前に教えて欲しかった。
教員室の前で突っ立ってるわけにもいかず楓が四人を先行して中に入った。
中に入ると結構な人数の大人がいたが皆んな楓達を見て驚いていた。
「今日からしばらく高等部2年のAクラスの実技を担当してくれるカエデくん、ヒナタくん、ミルテイラくん、アルメダくんだ。全員国王からの推薦があるから安心してくれ」
流石バルバトスの知り合いだ。ミルもくん付けで他の三人と差別をしていない。
「クラン『無限の伝説』のクランマスターをしている楓です。短い間ですがよろしくお願いします」
楓が代表で挨拶をすると全員から拍手が来た。
あれ、意外と嫌がられないな。
『国王が推薦をする程の人物ですからね。それとここの教員達はそういう貴族だのなんだのと差別をあまりしないのでしょうね』
へぇ、それはいいな。誰もが平等に学べるって。
楓は日本では当たり前だった事がここでも当たり前にされていて少し嬉しいと感じる楓であった。




