第127話 まさかの弱点
あんなにかわいいモフモフがまさかフィロデニア大森林最恐にして最凶の災害級超激ヤバ魔物『インペリアルフォレストハザードピギィ』だったなんて!!
「アニー!!今すぐフィロデニア大森林最恐にして最凶の災害級超激ヤバ魔物『インペリアルフォレストハザードピギィ』から離れるんだ!!」
「な、名前なんてどうでもいいからアイツを早く何とかして!!レナ、行くわよ!!」
「う、うん!」
レナさんはやや震えながらもしっかりとした足取りで俺のところへ駆けつけ、アニーもそれに続いた。
「まったく・・・質量保存の法則なんてあったもんじゃないな・・・」
「ジンイチロー様、質量保存の法則とはなんですか?」
「ん?あぁ、えっとね、ああやって物質が変化する反応を化学反応といってね、その反応前後のそのものの持つ物質の質量の総和は変わらないという―――――」
「ジンイチロー!!そんなことどうでもいいから早くなんとかして!!」
「ジンイチロ―様、大変興味深い考えですね―――。できればもっと詳しく教えていただきたいのですが」
「いやぁ、俺はこっちの分野には疎くてね、基本的な用語しかよくわかんなくてさ」
「その考えによると、あのフィロデニア大森林最恐にして最凶の災害級超激ヤバ魔物『インペリアルフォレストハザードピギィ』はあんなに巨大に進化したとしたら、紙風船のようにフワフワと風に揺られるようなものに変化するということになります」
「お、わかるねぇ」
「ふふふ、お眼鏡に適えて大変うれしく思います」
「いいからぁ!!逃げるわよぉ!!」
アニーがレナさんを連れていつの間にか遠くへ逃げていた。
しかしまぁ、いやほんと、デカイな・・・。
「モアさん、どうしてこの魔物はこんなに大きくなれるのか知ってる?」
「えぇ、図鑑によるとこの魔物は周囲の魔力やら精霊魔力やらを吸い込み、自身の血肉に替える特徴があるようです」
「―――――え・・・それって・・・」
「・・・あ、つまり、わたくしたちの魔力も吸われていることに他なりませんね」
「・・・」
「・・・」
逃げろ!!!
アニーにももっと逃げろと言おうとした途端、しまったと思った。
アニーとレナさんは先ほどまで立っていたところで倒れていたのだ。
すぐに駆け寄って抱き起こす。意識はあるようだがボーっとしている。やはり魔力枯渇だ。
「ごめん・・・急に・・・気持ち悪くなって・・・」
「ちょっと待って。少し魔力を入れてあげるから」
「ありがと・・・」
アニーに俺の魔力を入れて、同じようにレナさんにも入れてあげた。
二人はおぼつかない足でも立ち上がれるまで回復したけれど、駆けて逃げられるほどまでは回復できていないので、魔力循環を施して二人を担ぎ上げなるべく遠くへ逃げた。
あの巨体がやや小さく見えるところまで逃げると、そこに二人を降ろした。
「ここまでくれば逃げられるし、転移魔法陣も見えてくるはずだよ」
「ありがと・・・。あれ?モアは?」
「え?こっちに逃げてるんじゃ・・・」
「いないわよ―――って、魔物の近くで倒れてるじゃない!」
「やば・・・あのままじゃ・・・」
「あのままじゃ踏みつぶされちゃうわよ!」
「いや、それよりももっとヤバいことが―――」
魔物の近くでおもむろに立ち上がったモアさんは、猛烈な勢いでこちらに向かって駆けだした。
「くそ・・・こんなときに・・・」
「モア!!早くこっちに来て!!」
「違う!あれはモアさんじゃない!」
「えっ?」
「俺がモアさんを止めるから、その間にレナさんと逃げて!」
「止めるって・・・え?」
「いいから!早く!」
「わ、わかった・・・」
納得のいかない顔を見せたアニーだったが、レナさんを連れて小走りで遠くへと逃げて行った。
「ジンイチローっ!!」
来たか・・・。
俺は魔力循環を施し、向かう相手に集中した。
駆けるスピードは凄まじく、あっという間に俺の間合いに入り込んできた。
それを見た一瞬の間に、彼女の拳が眼前に迫っていた。
「っっ!!!!」
身体を逸らして拳の一撃を躱した。そしてその反動を利用して回転し、回し蹴りをお見舞いする。
しかし読まれていたようで、俺の足首が掴まれ、持ち上げられたと思ったらハンマー投げのようにぐるぐると回され、挙句放り投げられてしまった。
地面に体全体で着地したせいか息苦しい。『エリン』を見るとその距離は5mほど離れていた。彼女はゆっくりと俺に近づいていた。
「久しぶりね。あなたを見た途端ここが疼いて疼いてたまらないのよ。今度こそは相手してもらうわよ」
下腹部を擦りながらニタつくその顔はモアさん以外の何者でもないが、表情は明らかにエリンのものだ。
「あいにくだけど君の相手をしている場合じゃない。あのデカブツをなんとかしなきゃいけなくてね」
「あんなの放っておけばいいじゃない!私と楽しみましょう?」
「そんな場合じゃないんでね。遠慮しとくよ」
「聞き分けのない人ね・・・。やっぱり無理やりするしかないのかしら・・・」
「・・・それもあいにく趣味じゃないんでね」
「うふふ・・・。そんなあなたが苦悶の顔で私を見つめる・・・想像するだけで・・・あぁ・・・」
独りよがりな悦に浸るエリンを横目に、俺は顔をエリンに向けたままデカブツに気を向けた。
ゆっくりとではあるが、その歩みをこちらに向けているように見えた。
「まずいな・・・」
そう呟いた途端、突如として目の前に迫ったエリンが俺の首をものすごい力で絞め――――
「がっ・・・は・・・ぁ・・・ぁ・・・・」
「ちょっとぉ~・・・私がいるのになんであんな奴に首ったけなのぉ?そんな人には、お・し・お・き!」
さらに加えられた力が首の肉を絞っていく。
「ほ・・・ぁが・・・あ・・ぐぁ・・・・・・・ぁ・・・」
「そうそう、その顔!苦しい?苦しいでしょ?あははははは!!!」
エリンの高笑いがぼんやりとしか聞こえてこない。
もう―――――このまま――――
「ぐえぇええ!!」
腹の奥底から練りだされたような声が聞こえたと思ったら、絞めていた力が途端に抜けて、気道に空気が勢いよく入り込んだ。
「がぁ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!」
「ジンイチロー!大丈夫!?」
「・・・あ・・・アニ・・・なんで・・・」
「こっちが聞きたいわよ!なんでモアがあなたの首を絞めるのよ!」
そうこうしているうちにデカブツがどんどんと距離を縮めてきた。このままだとまた魔力が吸収されてしまう。
エリンはといえば、アニーの強烈な右ストレートによってダウン。口をあんぐりと開け涎を垂らしながら仰向けに倒れている。デカブツが来る前にさっさと魔力を供給した。
「アニー、モアさんを連れて逃げて」
「まさかジンイチロー、アレと戦うっていうの?」
「そうだよ。そうでもしないとこの辺りにいるみんなが犠牲になる」
アニーは苦虫を潰したように顔を曇らせ、デカブツを一瞥したあとに俺に向き直った。
「ジンイチロー、絶対に無理しちゃダメよ」
「わかってる。アニーは転移魔法陣でなるべく遠くへ行って」
「わかった」
「レナさんは?」
「先に転移魔法陣で避難させたから大丈夫よ。ジンイチロー、気を付けてね」
「ありがとう」
アニーは俺を抱きしめたあとグッと唇を押し付けてきた。洋画で主人公とヒロインがやるやつだ。
気を失っているモアさんの腕を肩に回して、アニーは転移魔法陣のある方へと歩いていく。それを見届けた俺はデカブツを見やった。
っていうか、体が大きくなっただけじゃなくて手とか足とか触手とか、なんか色々生えてるぅ!!
GUMOOOOOOOOOOOOOOO!!
低く唸るように吠えるその声は、足元の小さな草さえも震わせる。
大きくなっただけではないその体躯は人の形を彷彿とさせ、生えた手足はしっかりと五本指を現していた。
さて、どうやってこの魔物と戦うべきか。思案を重ねるも結局これまで経験してきた戦い方しか思い付かない。俺はエリンに絞められて途絶えていた魔力循環を再開させ、魔物の足元まで駆けあがる。未だに咆哮しか上げない奴は、それでも俺の魔力だけは吸い込んでいるようで、体から魔力が抜けていく感覚を覚えた。早めにカタをつけないと奴が益々凶暴化してしまう、そう思った俺は巨体を支える奴の脚に『一閃』を叩き込んだ。
・・・効いていない!?
皮膚を紙で切って少しだけめくり上がったような、血も出ないほどの痕を残すだけに留まった。
焦るなーーーー。
穀倉地帯でやった水弾を何発か撃ち込んでみる。
これも効かない。
少し離れて、闘技場でマウロがやったような獄炎をぶつけてみた。
・・・これも効かない!
それならばと、奴の体全体を極冷の竜巻で覆ってみた。
咆哮が止んだ。これならいけるか!?
GUUUMOOOOOOO!!
竜巻の内側から聞こえてきた咆哮が、放った魔法が全く効き目のない無駄な所業だったことを裏付けていた。
質量保存の法則を無視して、さらになおこの世界の常識すら通用しない魔物がいるなんてーーーー。
竜巻から姿を現した巨体は体を所々凍らせていた。動きは多少鈍っているように見えるが、先ほどと大差はない。
そういえば・・・この魔物、歩いてはいるがどこへ向かって歩いているんだ?俺の攻撃など気にも留めていないようだ。アニーがいればその辺のこと教えてくれるんだろうが・・・。
「おお、ここにおったか!探したぞ!」
「ん?―――うわぁ!」
声のする方を向いたら空中から顔だけのモル爺さんが俺を覗いていた!!!
「モル爺さん!!驚かすなよぉ!!っていうか何でこんなとこに!?」
「すまんすまん。出立すると聞いて伝えねばならんことがあって来たわけ―――」
モル爺さんが何かに気付いたようで、その目を上に向けた。
「な、なんじゃこりゃああああああああああ!!」
「ありがとう。あのシーンを彷彿とさせるセリフをまさかここで聞けるとはね」
「こ、このデカイのは・・・」
「えーっとですね・・・フィロデニア大森林最恐にして最凶の災害級超激ヤバ魔物『インペリアルフォレストハザードピギィ』だね」
「インペリア―――――インペリアルフォレストハザードピギィ!?」
「だってさ」
「名は知っていたが初めて見るぞ。何百年に一度しか現れん超激レアな魔物らしいな。確か魔力やらを吸い込んで力を蓄える厄介な奴だった」
「どうしてあんな奴が結界を超えられたんだろう」
「結界の綻びが出来たスキに入り込んだか、結界に引っかからないほど小さなころに内側に入り込んだか、そのどちらかじゃろうが・・・。ん?方向転換しおったぞ。ありゃあ・・・あいつの歩く先はマズイぞ」
「どこに向かってるの?」
「あの進路は尖角塔のある街じゃぞ」
モル爺さんの言葉に冷や汗が滲む。アニー達が転移魔法陣を使って逃げた場所こそあの街だ。
「あの魔物には俺の攻撃も魔法も効かなかったんだ」
「ん~~~・・・。あの魔物・・・確かに普通の攻撃じゃ効かんと聞いたことはあるが・・・。弱点はあったはず・・・」
「弱点?どんな?」
「・・・聞いたのが何百年も前だからのぉ。聞いたとき意外に感じたのは覚えておるんだが・・・」
モル爺さんが現れた時にはすぐ近くにいた巨体は、こうして話を少ししている間に俺との距離を200mほどまで離してしまった。
「まずい・・・街にあんな巨体が入ったら―――。ねぇ、弱点ってなんなの?」
「む~~~~、攻撃ではなかったような・・・なんかとてつもなく馬鹿げていたような・・・」
「はやく教えて!」
GUMOOOOOOOOOOOOOOO!!!
けたたましい遠吠えが聞こえたと思ったら、なんとあの図体で走り出したではないか!!
「ねぇ!!早く!!」
「おおっ!!思い出した!!」
「なんだ!」
「足の裏をこちょこちょじゃ!!」
「・・・は?」
「いやだから、足の裏をこちょこちょじゃ」
「・・・マジで言ってんの?」
「うむ。本気だ。さっき言ったじゃろう?馬鹿げてると」
モル爺さんは結構真剣な目で俺を見つめている。どうやら本当にそのようだ。
「思い出したついでにもっと思い出した。奴は魔力だけでなく精霊魔力も吸収している。フィロデニア大森林に居つくのもきっとそのせいだろう。吸収した魔力を身体強化や魔法防御に振っているのか、さして攻撃が効かん。だが、足の裏をこちょこちょすると魔力吸収が止まって身体強化や魔法防御も止まる。この時に攻撃するとバツグンに効果があるようだ」
「ホントに馬鹿馬鹿しいけど・・・倒す方法を残してくれた先人に感謝だね」
「今は亡き先々代の言葉じゃ。確かな情報じゃて」
「貴重な情報ありがとう」
「うむ。儂の体力じゃあれとは戦えんからあとはよろしく頼むぞ」
「うん」
そう言ってモル爺さんは空間魔法のゲートを閉じた。
さて・・・どうやって奴の足の裏をこちょこちょするか・・・しかしそれにしても―――――――
そう、実はさっきから気になっていることがあった。
誰かから見られているような、監視されているような厳しい視線を感じる。
明らかな敵意ではないのだが・・・。
「・・・・・・・さん・・・」
ふいに風に乗って聞こえてきた微かな声。とっさに振り向いた。まさか視線の主か!?
こちらに向かって駆けてくる女性が一人――――――えっ!?
「レナさん!?」
「ジンイチローさん!」
俺のもとに息せき切って駆け付けたレナさんは膝に手を置いて呼吸を整える。苦しそうな顔で俺を見上げた。
「よかった、無事で・・・」
「どうしたの?アニーと一緒に避難したんじゃ・・・」
「だって・・・魔物と戦うためにここに連れてきてもらったんだし、ジンイチローさんだけ置いて逃げるわけにはいかないじゃん!」
「いや、まぁ・・・」
「精霊魔法なら大丈夫だから、一緒に・・・ね?」
お願い!と手を合わせながら潤んだ瞳で見つめられてしまう。アニーのことだから必死にレナさんを探しているかもしれないし心配していることだろう。
しかし、いくらあんな魔物とはいえ彼女にとっては恐怖を克服できるチャンスかもしれない。
「あの魔物を見ても怖くない?」
「怖いよ!」
「だよね」
「でもあの熊に比べれば全然余裕!動きが遅いもん」
「う~ん・・・動きが遅いように見えてもね・・・。ま、いっか。じゃあ、レナさんにはあの魔物の足をこちょこちょしてもらうから」
「うん、わかっ――――――――え?こちょこちょ?」
「よし、早速行こう!」
「う、うん!」
街に向かう魔物の元へたどり着いた。
レナさんの様子を見ると、魔力を吸われている気配は見られない。ある程度の距離があれば吸収現象は起きないのかもしれない。
ひとまずあの魔物の足の裏を表に出さないといけない。
「レナさん、あの魔物の足もとに引っ掛けるような何かを作れる?」
「・・・やってみる」
レナさんは目を閉じて集中すると、腕を前に伸ばした。
「えいっ!」
掛け声とともに現れたのは大岩だった。魔物が前に進もうとして上げた足がそのまま大岩にあたり、魔物は地響きとともにうつ伏せに倒れた。
「今だ!こちょこちょ!」
「はいっ!」
レナさんは表に現れた魔物の足の裏をこちょこちょっとすると、魔物はひっくり返って不気味な笑い声をあげた。
BAHYAAHYAAHYA!!!
その勢いもあってかレナさんに魔物の足が当たりそうになった。しかしかろうじてレナさんはそれを避けた。慌てて駆け寄るもどこにもけががなくてホッとした。
「ごめん、こんなふうになるなんて・・・」
「ううん、大丈夫。それよりも・・・」
「うん」
俺は精霊魔法でジタバタする魔物の足を土で固めた。これでしばらくは動けないだろう。
「レナさん、こちょこちょを続けて」
「わかった」
こちょこちょを続けていると魔力の吸収が止まるのか、レナさんにも魔力枯渇は見られない。
魔物の腹の上に乗った俺は、ひとまず魔力パンチをお見舞いすることにした。
「てぇええい!!」
フォーリアにお見舞いした時以上のイメージでぶつけてみると、穴が開くのではないかと思うほど凹んだ。耳を突き破るほどの咆哮が響く。そんな悲鳴にも似た咆哮もお構いなしに魔力パンチを続けると、やがて魔物は大人しくなった。
しかし、まだ息はある。
俺は魔物の腹から降りてこちょこちょを続けるレナさんに寄った。
「レナさん、トドメをさすよ。一緒に来て」
「はいっ!」
彼女を連れて少し離れたところへ誘導し青龍刀を抜いた。そしてその刀の柄を二人で握った。
「いい?真っ二つに斬るイメージを強く持って」
「はい・・・」
不思議なことに彼女が目を閉じて集中すると、刀に精霊魔力が集まり始めた。ほんのりと刀身が緑色に輝いている。
「じゃあ、いくよ」
「はい!」
刀を真上に持ち上げ、俺はほんの少しだけ息を止めた。刀身の緑色の輝きが増したところでレナさんにうなずいて合図を送った。
「「 せ~~のっ!!」
勢いよく刀を振り下ろすと、刀身に纏っていた輝きが斬撃の波光となって放たれ、横たわる魔物の体を半分に分けた。
どれほどの血しぶきがあがるのかと思ったが、全くそんな気配を見せずに魔物の体が見る見るうちに小さくしぼんでいく。
そして音もなく、小さくなった体は霧散してしまった。
「ジンイチローさん・・・終わった・・・?」
レナさんと見合い頷くと、彼女は俺に飛びついて歓喜の声を上げた。
「やった!!やった!!私たちやったんだね!!」
「うん、レナさんのおかげで倒せたよ。ありがとう」
「ううん!ジンイチローさんのおかげだよ!ありがとう!」
抱き着くレナさんの頭を撫でていると、視界の端にちらちらと何かが光るのが見えた。よく見ると緑色に光っているようにも思える。レナさんを優しく引きはがし、光の元へ歩み寄る。
地面に転がっていたそれは、見覚えのあるあの石だった。にしても大きい・・・。
「精霊石・・・だよな」
「ジンイチローさん、どうしたの?」
駆け寄るレナさんに、こぶし大のそれを拾って見せた。
「レナさん、精霊石だよ」
「・・・・・」
開いた口が塞がらないとはまさにこのこと。俺がプレゼントした精霊石よりもさらに大きいから、その反応は至極当然かもしれない。しかし俺が一番最初に作った精霊石より幾分か小さいように思える。
街からもこの魔物の出現は分かっただろうから、きっと長老司にもコトノ説明をしなければならないだろう。その時に倒した証拠としてこの精霊石を見せるだろう。
「長老司さんにこの精霊石を渡してもいい?」
「うん、私はいらない。私にはこれがあるから」
ネックレスにつけられた精霊石を握ると、レナさんは優しく微笑んだ。
それにしても・・・。
「レナさん、顔が土埃で真っ黒だよ」
「むっ!ジンイチローさんだって汚れてるよ!」
「・・・ふふっ!」
「ふふふっ!」
真っ黒な顔をお互い見て、思わず吹いてしまう。
そんなレナさんの笑顔を見て、戦いが終わったんだなとようやく思えた。同時に、このエルフイストリアの滞在も一区切りついたと実感できた。
「じゃあ行こうか。アニーも心配してるよ」
「うん!帰ろう!」
いつもありがとうございます。
次回予定は5/17です。
よろしくお願いします。