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2つの醜いそれ

作者: ねるこ

僕の唯一の友達が死にました。

いえ、亡くなってはいません。精神的に死にました。

「病みました」と簡単に言えばいいのですが、それだけでは足りないような気がして。

ともかく、僕の友達は精神的に死んでしまいました。


僕たちはよく似ていました。見た目こそ違うものの、気を落としやすく、空気も読めず、感情的で、本が好きで、疲れやすく、いつも下を向いて歩き、容量も悪く、嫌われやすく・・・・

挙げ切れないほど、共通するものがありました。

そんな僕達がなぜ友達になったのかというと、実は分からないのです。覚えてないというべきか。

けれど、よく言う「類は友を呼ぶ」だったのでしょう。


彼と過ごした日々は、確実に楽しかったのです。お互いにつまらない人間ですから、つまらない冗談しか言いあえないけど、それでもやはり楽しかった。

笑いあってました。

でもダメな僕達だから、ずっと笑顔ではいられません。逆上すると、ヒステリックに相手を罵倒します。(ここでの相手は、友と僕です)泣きながら、罵倒します。終わると死んだように倒れ、どこか本人にしか分らない所を見ています。      これは、僕は我慢をしていました。友にあたりそうになることもありましたが、飲み込みました。友がヒステリックになってしまったのを、僕は静かに聞いていました。


何故僕が我慢をしたのか?

「唯一」だからです。初めてできた、たった一人の大切な友達だからです。大切だから、失うのが怖かった。

今思えば、これが悪かったのでしょうか。我慢と言って、解決策を考えるわけでもなく、目を背けていたのでしょうか。

そんな僕達です。やはりというか、お互いに依存しました。

僕は「友達」として。友は「話を聞いてくれる人」として(友にとっては当たらせてくれる人だったのかもしれませんね)。


ある日、僕が耐えられずに友に怒ってしまいました。もうお前の相手をしてやるのは疲れた、と。

友は一瞬のためらいを見せた後、黙りました。

瞬間、僕は体中が冷めました。しまった。たった一人の友にひどいことを言ってしまった。

その後、僕は友に媚びました。絶対に嫌われてはいけないから。

友も友人は居なかったのですぐに許してくれました。


しかしその数日後、友の姿をさっぱりと見なくなってしまいました。

本当にさっぱりとです。そこから今まで、一回しか見ていません。

一回というのは、その一年後くらいのことです。


子供でも寄り付かない、廃れた公園に、友はいました。

いえ、ありました。

人間とは思えない、人間の形をしたものが、そこにありました。

つまり「死体」です。意識などないのです。


僕はその場から立ち去りました。泣きました。吐きました。






友に何があったのかは見当もつきません。

そして僕は今日も友達がいません。

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