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深夜コンビニ妖怪譚  作者: かけだし ゆたんぽ
2/2

吸血鬼さん。その1

あの日からあの銀髪のお客さんは、必ず毎日決まった時間にやって来る。


午前1時に…


ウィーン…

「いらっしゃいませ!」

「ども、こんばんわ…」

今日もまた、午前1時にやって来た。来たときにはこんな風に挨拶するのがお決まりになっている。決まっていつもトマトジュースやほうれん草入りの野菜ジュースを買って帰るこの人を私は「吸血鬼さん」と呼んでいる。

「あっ!吸血鬼さん!」

「きっ、吸血鬼さんって…」

「あっ!失礼しました!」

「いやぁ、別にもう慣れましたから構いませんよ。」

「えへへっ♪また今日もトマトジュースですか?」

「はい。お願いします。」

「ダイエットでもしてるんですか?」

「別に、ただ健康のためですよ。私貧血なんですよ。」

「貧血とトマトジュースって関係あるんですか?」

「気分…です、かねぇ?赤い物飲んでると落ち着いてる気がするんですよ。まぁ野菜ジュース何かも飲んでますけどね。本当は苦手なんですけど…まぁあんなもの飲まされるよりましですけどね。」

「ん?あんなものって?」

「あっ…えっ、と実家で出される特別な飲み物のことです。私の実家ではそれも健康の為に子供の頃から飲まされるんですよ。それが本当に嫌いで、大人になってからでも飲めって送られてくるんですけど、それが嫌だから変わりにトマトジュースとかを飲んでるんですよ。そうすれば親にうるさく言われないんでね。」

「なんか、変わってますね。」

「あははっ…まぁ確かにね。親族の中だけの風習だし、この国じゃ珍しいですよね。」

「えっ!吸血鬼さんって海外のご出身だったんですか!?」

「はい、ルーマニアってわかりますか?」

「益々吸血鬼っぽいですね…」

「まったく、偶然ってのはすごいものですよね。」

「でも吸血鬼さんは日本語上手ですよね?」

「私ハーフなんですよ。父がルーマニア出身で母が日本人なので、生まれがルーマニアで育ちが日本なんですよ。…っていうか、そろそろ吸血鬼さんじゃなくて名前で呼んでくれませんか?」

「だって教えてくれないじゃないですか。」

「マリウスです」

「名前は外国人っぽいですね、苗字は日本人っぽいですか?それとも外国人っぽいですか?」

「言わなきゃダメですか?」

何故か心底嫌そうな顔をしている。

「当たり前です。」

「…どうしてもですか?」

「なんでそんなに渋るんですか?」

「う~…わかりましたよ。絶対笑わないでくださいよ……明塚です…」

「えっ?」

「明塚です!」

「ぷっふふ…」

「ちょっと!笑わないでくださいって言いましたよね!」

「だっ、だって…くくっ、明塚…ふっ…マリウスって…ふふっ…芸人みたい(笑)」

「も~こうなるからやなんですよ~」

「あははっ♪」

「あははっじゃあないですよ!」


マリウスさんのおかげで楽しい日々を過ごした私…この時はまだ気がつかなかった。この人と出会わなければ死んでいたかも知れないことを…







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