となりの ウソツキ。
えっと、多分意味分かんないです。後書きに(一応)解説あるとです。
昔から雨は嫌いだった。
ただの水なのに、何度も何度も私の体を刺してきて。
お気に入りの服も泥まみれに仕立て上げて。
傘も無いまま、涙を飲み込む雨の下、膝を抱えて泣いてたっけ。
『大嫌い。』
『どうせ顔色伺ってヘラヘラしてんでしょ?このぶりっ子!』
『君ってほんと、“ウソツキ”だよね~。』
「………違うのに。」
私は、ただ愛が欲しかっただけ。
薄っぺらでも良いから、誰かに愛されたかっただけ。
そのために嘘を付くのは、いけない事?
「何してるの?」
顔を上げると、青い傘を持った男の子がこちらを覗き込んでいた。
雲が晴れて、青空がそこだけ広がったように見える。
綺麗だと思った。
「ひっく…ぁ、誰……?」
「僕?僕は_____」
ちょっと考えてから、「うんっ!」と頷いてニッコリ笑う。
「僕は、カミサマだよっ!」
かみ……さま?
「そうっ!皆のネガイを叶えて、幸せにするの!」
「ねがい?」
「ヒトは必ずネガイを持っているんだよ!」
ほら!と何処からか缶ジュースを取り出す。
「君は、いま“ネガイ”が叶うとしたら、なんて言う?」
私の、願い。
今それが叶うとしたら、私は________
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「別に。何にも。」
目の前には呆れたような顔。
早く終わって欲しいと、全身から滲み出してしまっている。
「えっなんで?ヒトは必ずネガイを持っているんじゃないの?」
「知らないよ僕は……」
びっくりした。軽い絶望と言って良いくらいだ。
『教えてくれたのは君なのに?』
そう言おうとすると、どうも喉に張り付いて出てこない。
立ちつくした私を見てられなかったのか、頬をポリポリ掻いた後、「でもじゃあ、」と言う。
「とりあえず缶ジュース一本貰って帰って貰う。」
「はい。」
ポン、と一本押し込むと、酷く驚いたように何回も見比べられた。
「えっ。どこからコレ…?」
「カミサマだから。」
『君は昔から微炭酸が好きだよね。』
君のこと全部、知ってるよ。だってカミサマだもん。
でもね、これだけは…
「で。これがホントウじゃないんでしょ?クウキのネガイは何なのさ?」
「…そんなコト、知らないよっ!」
ふ、と風が通りすぎた。
「待って!」
思わず叫ぶ。
「じゃあ、また明日!明日会おう!!」
嗚呼、私はカミサマになっても、作り笑いが上手い事だけは変わらないみたいだ。
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「クウキッ、クウキッ」
「………何さ。」
「クウキのネガイって何?」
「ええ~…?そんな事より、授業始まっちゃうから早く席つきなよ。」
…………。
「クウキ~!ネガイ決まった?!」
「なわけないじゃん。ってかそれ一時間目にも聞いてきたよね?」
「ふふっ、覚えててくれた?じゃあ次も聞くから考えておいてね。」
「……何がしたいんだよ。」
…………っ
「カミサマさ、他に友達とかいないの?」
「…ちょっとは居るよ?」
「じゃあ僕に構わなくたっていいじゃん。そっちいきなよ。」
「だってまだネガイ、聞いてないから。」
「………ほんと何考えてるか分かんない。」
…………!
「最近、雨降らないよね。まあ僕は雨嫌いだから良いけど。」
「_____クウキは。」
「え?」
「クウキは、本当に何も願ってないの?やりたい事は?欲しいものは?」
「無いってば」
「…………ひどいよ、クウキ………。」
『 。』
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もう返すトキなのかもしれない。
そうポツリと言い放った。
私は何にしがみついていたのだろう。
散々クウキに迷惑をかけて、何も与えられずにいた。
もう分かった事なのに。
私が今消えても、きっと彼は何一つ変わらない生活を続ける。
あの時見せた青空も思い出さないまま、曖昧なまま朽ちていくのだ。
ああ、もう腹を括ろう。
彼の前から消えよう。
青空ではなく、汚い水たまりを残して。
ごめんねって最後に言って、綺麗さっぱり居なくなってしまおう。
それがきっと彼のネガイなのだ。
「ちょっ、待って!」
足を止めた。
「明日、またね!」
_______ありがとう、カミサマ。
最後の最後まで、こんな私に優しくしてくれて。
月曜日。
ウソツキは消えた。
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「消えた…はずなのに。_____なんで?」
目の前には、泥まみれで微笑んでいる神様。
へたれ込んだ私の変わりに青空を掲げて、「やっと思い出したんだ。」と言った。
「一年前、出会った君のことも。僕に言ってくれたネガイの事も。」
やっと目が覚めた、と自嘲するかのように笑う。
「あの、ね、ネガイの事は………ごめんなさい!」
「え?」
「『貴方のようになりたい。』だなんて…私はただ、妬んでいただけなの!
ま、まさか貴方から、力も記憶も感情さえも奪う事になるなんて、思わなくて……ッ!」
「______それで償いとして、“クウキ”のネガイを叶えにきてくれたの?」
ぼろぼろと雨を零しながらコクンと頷く。
なんで怒ってないのだろう。なんで壊してくれないのだろう。
そうグルグルと思考が頭を満たす。
「……別に、怒ってなんかないよ?」
「ぇ、」
「だって楽しかったから。」
お天道様には感じなかった暖かさが胸を満たす。
はい、と差し出された手をしっかり掴んだ。
水たまりには、綺麗な空が、映ってる。
<解説>
“カミサマ”は一週間に一度ネガイを叶えないと消えてしまう。
もともとその力は少年にあったけど、少女“ウソツキ”のネガイにより
力を受け渡して、記憶と感情を無くしたただの子供になってしまう。
青い傘はとりあえず力の象徴です。
我ながら意味不明だと思ってますが感想待機は諦めません。