“Who saw her die?” -5-
どこからの声だ。周りを見渡すと、 1 人だけ全く視線を動かしていない人物がいる。それは部屋の隅にた人物。帽子をかぶっていて表情は読み取れない。
「警察はずっとこの事件の犯人を追っているんだ。けども犯人は未だ逃走中。そこへいいカモがやってきたとしたら、どうするか普通わかるんじゃねえか」
下を向いたまま、そいつは一歩前に歩み出す。
「犯人つかまえたいんだろ。実際に見たお前が捕まっててどうすんだよ」
そう言って顎でアオサギを指した。その時、一瞬顔が見えた。
――あれは。
カナリアは目を見開いた。そしてその人物の元へと駆け出す。
「よお、カナリア」
ニヤリと笑った、それはカワセミだった。
「お前、カナリアを知ってるのか」
「兄ちゃん、話は後だ。このマスクをかぶってくれ」
ぽい、とカワセミは折り畳み式のマスクをアオサギへと投げる。そして唖然としているツミとウソにも同じようなマスクを投げた。最後にカナリアにマスクを手渡し、カワセミは自分のマスクを装着した。
「阿片中毒になりたくなかったら、しっかりマスクしてついてきてくれ」
どういうことだ、というツミの言葉すら無視して、カワセミは勢いよくドアを蹴破った。
その先にはウソと顔見知りの刑事が立っていた。
「おい、ジョン、遅いぞ」
ジョン、と呼ばれたカワセミはため息をつく。
「しゃーねーだろ、こいつら話長いんだ」
仲間だったのか、と困惑する一同を彼らは急かした。
署内には何やら怪しげな粉が舞っている。通気口から排出されているようだ。そんなまさか、とウソは声をあげる。それに反応して若い刑事は笑った。
「アンタのとこの阿片、高級そうだから迷ったんだけど使わせてもらったぜ」
「警察が大量に阿片を買うなんて変だと思いました」
「俺もまさか買いに行ったとき、アンタに警察だと見破られるとは思ってなかったよ」
ウソがこの若い刑事と顔見知りになったのは自分の店だったのだろうか。カワセミはウソの店が少々怖くなった。
その時、しゃべってないでさっさと行くぞ、といくらか先に進んでいたカワセミが叫ぶ。
「いくら防塵効果があるマスクでも、長時間いたら狂っちまう」
その一言で、一同は一斉に走り出した。