“Who saw her die?” -4-
事の成り行きはこうだ。
ラズベリー、通称ベリー嬢。彼女はアオサギの恋人であった。昨日アオサギは彼女の家へ行っていた。彼女は数週間前から子供を身ごもっていて、大変だろうとアオサギは足しげく彼女の家に通っていたのだ。
いつもと同じだった、何もかも。アオサギはそう言う。
彼女は笑っていて、自分も笑っていた。幸せな夜だったんだ。「おやすみ」と言って、キスをして布団に入った。
「それから夜中、一度だけ目を覚ましたんだ。何か、物音がすると思って」
暗闇の中、アオサギは手探りでランプをつけたという。音のする場所は、寝室ではなかったため、アオサギはランプを持ったまま部屋を出た。
「そこに、奴が」
キャスケット帽をかぶって、ポンチョをまとった人物がそこにいた。後ろ向きだったため、女か男かは分からない。
アオサギはハッとして身構える。そしてそっと近づく。
「だけど奴は一枚上手だった。くそ…、俺が強ければ」
そう言って、アオサギは血が滲むくらい唇を噛んだ。
キャスケット帽は、アオサギの気配に気づいていた。アオサギが襲いかかろうとした瞬間に首に一撃お見舞いする。一気に床に叩きつけられたアオサギは咄嗟に起き上がろうとするが、キャスケット帽は素早く馬乗りになり、アオサギの首を締め上げた。そこでアオサギの意識は遠のいたという。
次にアオサギが目を覚ました時、キャスケット帽は手術するかのようにベリーの腹を裂いていた。ベリーはすでに死んでいるようだった。場所は寝室で、ご丁寧にアオサギも寝室に運ばれベッドに寝せられていたらしい。何か薬を盛られたのか、身体は全く言う事を聞かなかった。
「くそ…くそ…!なんでベリーが!」
声が怒りに震えていた。
「その後、薬のせいでまた気を失ったらしい。そこへベリーの隣人が玄関の異様な血の跡を見て、家の中へ入って通報、傍で寝ていたアオサギは連行…というわけだ」
「ツミさんまで俺を疑ってるんですか!」
「事実を述べただけだ、落ち着けアオ」
アオサギはただ悔しそうに拳を握りしめた。
カナリアは話を聞いていただけで背筋が寒くなり、そっとウソの傍らに寄った。
昨日見た奴は、また人を殺して解体している。今日もまた、人を殺すかもしれない。
もしかしたら、次はカナリア自身を襲うかもしれない。今のところ妊婦だけが対象となっているが、相手を見た以上、命の保証はない。
ただただ震えが止まらなかった。
それを感じ取ったのか、そっとウソはカナリアの肩を抱いた。
「皆さん、カナリアが怖がっているようです。少し、席を外してもいいですか」
「すまない、カナリア。何か飲み物でももらっておいで」
ツミはそう言うと、ウソを近くに呼び寄せて手短に何かを話していた。
死体を見てもらいたいとか、アオサギが殺したのではないという証拠を見つけてほしいとか、そのような内容だった。
わかりました、カナリアが落ち着いたらそうします。ウソはそう返事をした。
「でも、それで本当に釈放されると思ってるのかよ?」
唐突に発せられた声に、一同は顔を見合わせた。