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“Who saw her die?” -3-



 電話のベルがけたたましく鳴ったのは、次の日の早朝の事だ。

 コック卿が始めに対応したが、すぐにウソに代わった。


「はい、ええ…はい、はい」

 ウソはひたすらにそれを繰り返す。何事かと思い、カナリアはウソの近くへと寄った。それにちらりと目をやって、ウソは「ではカナリアは?」と電話の相手に聞いた。そしてまた何回か受け答えをし、ウソは電話を切る。


「カナリア、申し訳ありませんが、私と一緒に警察へ行きましょう」

 カナリアは首をかしげた。警察、なんでそんなところに。

「アオサギが、警察に連行されたようで…ツミが私にも応援を頼みたいそうです」

 カナリアは目を見開いた。何があったんだろう。でも、ガールフレンドの家に行っていたことが関わっているのだろうとどことなく想像がついた。

「そこで、カナリアを 1 人にするわけにもいかないので、ツミに聞いたら連れて来いと言われました」

 そういうことなら仕方ない。カナリアは少し眠い目をこすって、ウソに頷き返した。

 すると後ろで話を聞いていたのか、パイプをふかしながらコック卿が近づいてきた。


「警察へ行くのか?」

「コック卿…申し訳ありません、朝から騒がしくしてしまいました」

「別に構わんさ。しかし、警察とはね…俺はあの場所が嫌いでしかたないね」

 ウソはただ苦笑いをした。私も、あそこは気に入りません。

 コック卿はそれを聞きながらパイプの灰を一度捨てた。そして新しく草をパイプに詰めると火を点ける。それを一口吸ってから、彼は眠そうに欠伸をした。

「警察までは遠いから馬に乗っていけ」

 俺は眠いから泊まっているゲストへの対応は適当にトウテンコウにさせて寝るよ。それだけ言うとコック卿は早々に去っていった。


 ウソはそれを見届けてから急いで馬屋へ向かい、1匹の馬を出すとカナリアを乗せ、そして自分も跨り、警察署へ向かった。



 到着したのはそれから 10 分も経っていない。ウソは馬を預けると、カナリアの手を引いて署内へ入っていく。

「すみません、アオサギに会いに来ました」

 受け付けでそういうと、若い刑事が少し奥の方から手招きしているのが見えた。カナリアはウソの服の裾を引っ張り、それを指さした。

「ああ、そこに」

 どうやら顔見知りの刑事のようで、少しウソの顔は安堵したように見えた。しかしそれに対して、刑事は嬉しいような残念なような複雑な表情をする。

「またアンタに会うとはね」


 刑事に案内されたのは小さな殺風景な部屋だった。

 テーブルと、椅子が二つ。椅子の一方にはアオサギが、もう一方にはツミが座っていた。ウソは彼らに近づく。ついてきた若い刑事はウソに手短に別れを言うと、部屋の隅にいた別の刑事に任せてそこを去った。

「いったい、何があったのですか」

 アオサギはうつむいて震えていた。うわ言のように「なんで」という言葉を何度も吐いている。それを見かねてツミが口を出した。

「まだ記者も気づいてはいないが、昨晩殺人事件が起きた」

「まさか」

「そのまさかだ、カナリアが見たと思われるあの事件の手口と全く同じ事件だ」

 苦々しくツミが吐き捨てた。

「被害者は誰ですか」

 そうウソが言ったその瞬間。


「ベリーだ!ラズベリーだよ!」

 勢いよくテーブルを叩きつけてアオサギが立ち上がった。それを見て、部屋の隅にいた刑事は少し身構えたが、特に何もしなかった。

 ラズベリー。その名を知らないカナリアは、不思議に思ってウソに視線を投げかけた。しかしウソはそれに気づかない。その名前を聞いて、相当驚いているようだ。

「そんな…しかし」

「嘘じゃねえって!俺の隣で…死んでたんだ」



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