“Who saw her die?” -1-
「で、これがカナリアが見た事件というわけか」
そう言ってツミは新聞の小さな記事を指さした。
カナリアは昨日のことを思い出して悪寒がした。身震いすると、ツミの妻であるオナガが優しく背中をさすった。
「怖かったでしょう」
「しかも見られたかもしれないとなると…危険かもしれないな」
今現在、カナリアはカワウとトウテンコウと共にツミが経営している探偵事務所に来ていた。
この事務所はツミ、そしてアオサギとシロサギ、ウソが主となって経営している。前に、カナリアの住んでいた孤児院が火事になった事件を解決してくれたこともあり、今ではカナリアが安心できる第二の家となっている。 その火事が原因で、カナリアが声を出せない事も彼らは知っている。
ツミは考え込んでいるようだった。小さな記事では情報もそんなに載っていない。
「ゴシップ誌にはデカデカと載ってますよって、言いましたよね」
ツミの後ろからそう言ったのはシロサギだった。
「怪奇、またもや妊婦が殺される。 3 日で 5 件目、悪魔の所業か? 昨晩、レイトストリートにて妊婦が殺されているのが発見された。他の事件同様、彼女もまた妊娠したことを喜んでいた。この殺人犯はそれを嘲笑うかのように、首を絞めた後に腹を裂き、お腹の子どもを引きずり出して…」
「シロ、ゴシップ誌は信用していいときとそうでないときがある」
「だけどチビが見た女なんだろ」
シロサギはそう言ってカナリアにゴシップ誌に載っている被害者の写真を見せた。小さくカナリアは頷く。あの綺麗な女の人が、あの後どうなったか、記事の内容が本当か嘘かはわからないが嫌な気分になった。
それをわき目で見ながらシロサギは続けた。
「ツミさん、情報はどんなものでも宝です。ただ、それが大きく見えたり小さく見えたり、はたまた反射して違うものに見えるだけ。選び取ることが重要なんです」
ツミは唸った。
カナリアが思うに、弁護士でもあるツミは厳格な性格だ。あまりゴシップ誌が好きでないのだろう。それにこの記事の書き方。確かに事件の内容を書いているのだが、悲惨な有様を面白おかしく書いているように見える。それがツミには気にくわないのだろう。
「まあ、落ち着いて下さい」
険悪なムードの中、柔らかく割って入ったのはウソだった。
「これでも飲んで…」
差し出したのは小さな袋。薬だろうか。ツミはさっとそれを押し返した。
「阿片は遠慮しとく。私はやらない」
「俺もだウソ。おまえ、そんなもの持ってきてんのか?」
冗談です、とウソは悪戯っぽく微笑んだ。最近知ったことだが、ウソは少し危ないと言われる薬も取り扱っているらしい。アオサギとシロサギから注意されたから事実なのだろう。トウテンコウとカワウは少し呆れた顔をしていた。
「さて、これからどうするか…」
ツミはまた唸った。