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“I saw him die.” -5-



 しばらくの間、少女が

 黙って何かを考えているのを見届けてから、カナリアは部屋を出た。


 カナリア自身も知っていた。スラムでどれだけひどい事が起きていても、誰も無関心だということ。富裕層はそれが外に出てきさえしなければ、誰も気にも留めなかった。だから少女や彼女の弟のような子供も目にしたことがある。小さい頃から殺しを覚えて、それをやめられなくなる子供だ。

 それでも、少なくともあの少女は、自分のしている過ちに気付いただけマシだったかもしれない。ほとんどは何も気づかずまま、死んでいく。大抵は惨い殺され方をする。


 少女を、どうにかして救えないだろうか。

 カナリアは一晩中考えていた。



 次の日、カナリアは隠れ家の備品にあった白衣を取り出して運んでいた。

 向かうのは少女の居場所。

 きっとまだ少女はあの部屋にいる。

 ノックをしてゆっくりとドアを開けた。

 ベッドに突っ伏して寝ていた少女が顔を上げる。


「カナリア」

 カナリアが小さく手を振ると、少女は立ち上がった。

「何?」

 カナリアは白衣を少女に差し出した。

 若干サイズは大きいかもしれないが、着れるはずだ。少女はそれを手にとってマジマジと見た。

「これって…」

 どうしたらいいかわからない少女に、カナリアはそれを着るようにとジェスチャーした。

「でも私…人殺しなのに」

 少女は戸惑いそう言う。


 でも、カナリアは少女がそれを着るのにふさわしいということを知っていた。その証拠を指さした。

「それは」

 カナリアは自分の目の端を指さす。ここは殴られたときに切れた場所だった。


 思いのほか切れていたため、フットやカワセミが困っている時、少女はこれを縫合したのだという。麻酔はもちろんフットの仲間が行ったが、その仲間曰く相当の腕の持ち主だということを言っていた。そんなことを小耳にはさんでいたのだ。

「…私、救える、誰かを?」

 もちろん。カナリアは頷いた。

 これからは誰かを、本当に救うためにその腕を磨いてほしいと思う。

 少女は、柔らかい表情で微笑んだ。カナリアもつられて微笑んだ。



「クグイ」

 少女が突然言葉を発した。

 え、とカナリアは首をかしげると、少女は「私の名前、クグイ」と繰り返した。

 ゴシップに悪魔と言われた少女は、今、白い天使に生まれ変わろうとしている。



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