“I saw him die.” -4-
少女の家庭は貧困層だ。煤けたように汚らしい、スラムに住んでいる。
少女には、父と母と、双子の弟がいた。
物心ついたころには、父が母を殺していた。浮気が原因だったのかもしれない。ただ、父は母に激しく怒り狂っていた。それから家庭は壊れていった。
父は酒に狂うようになり、暴力を振るった。少女と弟は日々怯えていた。
そのうちに弟は自分が強くなれる仕事を探し始めた。見つけたのは宿屋の用心棒だった。ただの宿屋ではなく、下劣な売春宿だった。弟はそこで人を殺すこと、人は汚い事、全てを覚えてきた。
少女は弟からそれを全て教えてもらった。そしてだんだんと父親が怖くなった。
「僕が、汚くなる」
弟はそう言うと、暴力を振るう父を殺した。
次に少女を苛めていた年上の少女を殺した。
そして売春宿の娼婦すらも殺した。彼女は弟を騙して、金を巻き上げていたという。それだけではなく、弟を他の用心棒に殺させようとしていた。だから殺した。
しかしその腹には、赤ん坊がいた。
弟は動揺した。少女はそれを見て、スラムで世話になった医者を訪ねた。
――赤ちゃんを助けたいの。赤ちゃん、お腹のどこにいるの。
それを聞いてから彼女は赤ん坊を助けるために、腹を裂いた。
一度目は失敗した。
それを見て弟は、女から赤ちゃんを救おうと言い出したのだ。少女はただ頷いた。まだ2人とも幼かった。
二度目の切開は傷つけず取り出すことができた。しかし、死んでいる。赤ん坊が本当に教えてもらった場所にいるか分からないから、身体全部を解剖した。その後に、その赤ん坊は見つかった。
少女はこの女の死体を元の場所に戻すように、弟に言い聞かせた。私達は生きている赤ちゃんしか救えないから、死体は戻して。
三度目も身体の臓器を全て出して、赤ん坊がいる場所を探した。もしかしたら違う場所にいるかもしれない。
四度目は赤ん坊を見つけ出してから、臓器を取り出した。赤ん坊には母親の栄養が必要だという噂を聞いたからだった。
そうしてこの殺人事件は何年もの間、秘密裏に行われていたのであった。
「…カナリア、私、どうすればよかった」
少女は無表情のままそう言った。
カナリアは答えなかった。
「そうだね、わかってる。早く、やめるべきだった」
少女は指を組む。まるで懺悔しているかのように見えた。
「弟、殺したの、私。何も、できなかった」
少女は、噛みしめるように言う。
カナリアは何も言い出せなかった。




