“I saw him die.” -3-
それから数十秒経ったころだろうか、カナリアには正確な時間がわからない。
小屋のドアが開いて、カワセミが入ってきた。フットと、ウィルが一緒にいる。
「カナリア!」
フットとカワセミは同時に叫ぶと、カナリアに駆け寄った。そしてカナリアを抱き起した。
「ああ、何があったんだ。おまえは…全く!」
フットはカナリアの顔の血を優しく拭う。顔からして、ひどく心配させたのだろうということが分かった。少し申し訳なく思い、カナリアは縮こまる。
「おい、フット、こっちはどうする」
ウィルにそう言われたフットは振り返ると、少女を保護しろとだけ言った。
「カナリア、お前がここまでだとは…正直俺も想定外だ」
フットはカナリアを抱えると、そのまま立ち上がる。右腕に相変わらず力が入らず、ブラブラと垂れた。フットはそれを見て一瞬顔を歪めたが、治す方法を知っているのか、気にせず歩き出す。
「帰ろう、我が家へ。カワセミ、お前はその少年を連れてくるんだ」
「わかった」
3人はそれぞれの馬に乗ると、一斉に駆け出した。
少年は、隠れ家へ帰ってから治療が施された。しかし正確に臓器と血管を傷つけており、最終的には命を落とすこととなる。
そんな少年の傍を片時も離れずにいたのは、少女だった。ずっと手を握りしめていた姿が、カナリアの頭から離れない。
少年が死んでからは、少女は気の抜けたような抜け殻のようになってしまった。
少年の存在は、少女の中で大部分を占めていたのだろう。
ある日、少女が少年の寝かされていた場所に1人立っているところを見つけた。
細く、白い手足が妙に浮世離れしていた。
「…カナリア」
そっとカナリアは少女の隣へ立った。
ここで少年が死んだ。
カナリアや、アオサギを苦しめた犯人が死んだ。
少女の唯一の家族が死んだ。
少女はただベッドを見つめていた。まるで何かを探すかのように、穴の開くほど見つめていた。
シーツに薄らと残ったシミの上を、少女の指が走る。少年の血の跡だった。
「死んじゃった」
ぽつり、少女は呟いた。
「私、1人になっちゃった」
少女は目を伏せた。彼女の長い睫がふわりと動く。
身体が、口が、全てが重いようで、彼女の動きはゆっくりとしていた。
「知ってた。悪い事、してた。でも、あの子は、もう自分では止められない。私も止めないまま。だから、ずっと、ずっと、続けていた」
ただ少女の瞳からは大粒の涙が流れ落ちている。
「言い訳しない。でも、私達、それが正しいと思っていた。本当に」




