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“With my little eye.” -4-



 そうして何度か名前を間違われながら、3日後にはだいぶ意思疎通ができるようになっていた。

「カナリア、ごはん」

 今では少女はテキパキと働いて、ごはんまで作るようになっている。最初は毒でも入れられているんじゃないかと不安にも思っていたが、その意思は無いようで少女も同じ皿から食事をしていた。

 美味しいという意味でカナリアが親指を立てると、少女は頷く。ただ初日以降、笑った顔は一切しなかった。

「ホント料理上手だよな、ここの料理は順番制度だから日によってマチマチなんだよ…」

 カワセミがそう言ってまた一口、口に食べ物を放り込む。

 カワセミもまた、カナリアと一緒に少女といた。カナリア一人では危険かもしれないと思ったらしい。フットの仕事は断って、カナリアと一緒にいることに徹していた。


「しっかしわかんないよな、なんでお前、あんな事件起こしたんだ?」

 カワセミが唐突に呟いた。満腹になって気が緩んだのかもしれない。


 一瞬にして緊張が走った。

 カナリアはカワセミを睨み、カワセミはただやっちまったという顔をしている。少女は一瞬目を見開いて、ヒュっと息を飲んだ。

「悪い、ごめん、今の無しな」

 しかし少女は身体を硬くしたまま動かなかった。

「…やっぱし、何か考えてんだよな、あの事件について」

「……」

 少女はカワセミを見る。


 ピリピリとした嫌な空気だった。

 少女がそっと口を開く。

「怖い?」

 か細い声だった。

「私、怖い?」

 カナリアとカワセミは顔を見合わせた。2人とも何も言えなかった。

 少女は目を伏せる。

「私、なの」

「え?」

 反射的にカワセミはそう返していた。少女は目を開いて、カワセミを見た。


「私、見つけた。私が、見つけた。死体を、見つけた」


 ――死体を、見つけた?


「家で死んでた。女の人が、死んでた。だから…」

 ここで少女は、ゆっくり1度呼吸をした。


「赤ちゃん、助けたかった。昔、教えてもらった、お腹を切れば、助かる。だから切った、何度も切った。赤ちゃんいない時もあった。失敗も何度もした。でも切った、どこかに赤ちゃんいるかもしれないから。赤ちゃんいたら、出した。でもみんな…死んじゃった。みんな、みんな…死んじゃった」

 少女は泣き出す。

「ごめんなさい…ごめんなさい…!」

 まさか。少女は何度も切ったと言った。もしかしたらずっと、それこそ少女が幼い時から、人を切っていたのかもしれない。



 それよりも怖いのは。

 カナリアは嫌な予感がしてカワセミを見た。さすがのカワセミも何を言いたいか分かっているらしい。


 ――家で女の人が、死んでいた。


「おい、お前、家で1人で住んでるのか?」

 焦ったカワセミの声が響いた。

「私…」

「誰だ、誰がいるんだ!」

 少女は困惑したように黙る。しかしカワセミが少女を揺さぶり、少女は観念した。

「…私の、弟」

 聞くや否や、カワセミはカナリアの手を引いて小屋を飛び出す。


 何するんだ、とカナリアが手を振りほどくとカワセミは「待てよ」とカナリアの腕を掴んだ。

「俺は小屋へ行く、でもお前1人であの女の傍にいるのは危険だ」

 カナリアは首を振った。

 ――あの人は悪くなかったじゃないか。

「バカか! 真犯人は今ノーマークでうろついているんだぞ。最悪、あの時の俺たちを見て付いてきていたかもしれない。それでなくてもきっと、そいつはあの女を探してるかもしれなんだ。こっちへ来るかもしれない。カナリアはフットと一緒にいろ!」

 カワセミにしては凄い剣幕だ。


 カナリアは一瞬圧倒されたが、それでも隙をついて走り出す。カワセミが呼ぶ声が聞こえる、けれどカナリアはそれを無視して少女の手を掴んだ。

 ――わかってるんだよね。君も。

 少女はただ無表情のままカナリアについていく。けれど、カナリアが少女を引っ張る必要はなかった。どこへ行こうとしているのか、少女もまた、理解している。


 ――止めに行こう、ボクも行くから。もう1人じゃないから。



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