“With my little eye.” -2-
カラスが帰り、アオサギが家から出て行ってからどれくらい経っただろう。
今いるのは、カナリアとカワセミだけだった。他の面々は今アオサギが呼びに行ってるのではないだろうか。
女はすでに何も言わなくなっていたが、起きているようだ。ぽろぽろと目から涙を流している。
よく見ると、女はまだ幼いように見えた。カナリアよりは年上だろうが、カワセミと比べるとどうだろう。同い年くらいかもしれない。
じっとカナリアが見つめていると、女も見返してきた。
ドキリとした。女の目は冷たく、寂しい。
「カナリア、離れろ」
カワセミがそう言ってカナリアを引っ張った。それでもカナリアは彼女が気になって、見ていた。
火事による影響で、声が出なくなってからというもの、カナリアは人の感情に敏感になっていた。自分が喋れない分、相手の事をよく聞くようになったからかもしれない。もしくは孤児院を失ったあの火事が原因で、人の悲しみにまで敏感になっただけかもしれない。
カナリアはまだ、じっと女を見た。
“やっぱり、悲しそうだよ”
「はぁ?」
持ち運び用の羊皮紙に書いたカナリアの言葉を見て、カワセミはきょとんとした。
「どこが」
“そんな気がするだけ”
「泣いてるからじゃないのか?」
カナリアは少し唇を尖らせた。カワセミは元々カナリアの言う事を素直に聞き入れたことがない。
“だけど、あの人がやったとは思えない”
「だから、根拠は? 思っただけとかは信じないぞ」
“だって、そもそもおかしいじゃん。あの人、素手で人の首を絞められそうにないよ。解体してたのはあの人かもしれないけど、何か理由があるんだよ、きっと”
カワセミは首をかしげた。
「確かに、あんな軽そうだし…絞め殺そうとしても、逃げられるか。それに、コイツ女なんだよな」
“そうだよ! 男が犯人の可能性が高いんでしょ、ほら”
カワセミがじっと女を見つめた。女は何も感情が無いかのように、虚ろな目をして見つめ返している。女、とカワセミは考えるように呟いた。
「仲良くランデブーでもするか」
“は?”
今度はカナリアがきょとんとする番だった。
カナリアが何を言ったのか理解するかしないかのうちに、カワセミはひょいと女を持ち上げた。カワセミはやけに力持ちなので、苦痛ではないらしい。むしろ予想以上に女が軽くて、カワセミは驚いているようだった。
「行くぞカナリア、みんなが戻ってきたら厄介だ。逃げよう」
だから何だってば。
カナリアが質問しようとペンを取り出すや否や、すでにカワセミは走り去っていた。急いでカナリアも後を追う。血だらけの女を担ぐカワセミという構図に、異様な怖さを感じる。
誰にも見つかりませんように。
カナリアの祈りが届いたのか、誰にも見つからずたどり着いたのは、知る人ぞ知る、フットの隠れ家だった。




