“With my little eye.” -1-
女は怯えていた。手に握ったメスが震えている。
「なんで」
「悪いな。だが、さすがに気絶している間に解体されてるとは思わなかった」
カラスは少しも悪そびれた様子もなく、そう言った。
衣服を整えながら、手で腹をそっと閉じる。
「さあ、観念したまえ、女」
カラスは血だらけで帰ってきたが、本人 は怪我 1 つしていないようだった。
こっちだ、と彼が案内したのは、小さな物置小屋のような家。そこに女が 1 人、縛られたまま眠っている。彼女も血だらけだが、どこも怪我はしていないようだ。
それはカラスが囮になってから、幾日も経っていなかった。
カラスがどこへ行き、どのように行動していたのかは誰も知らない。カナリアはただ探偵事務所で待機していた。そろそろ事務所の中も探索し飽きてきたころに、カラスは帰ってきた。誰もが血だらけの彼を不審に思ったが「犯人を捕まえた」という一言でその思いは吹き飛ぶこととなる。
女を目の前にして、真っ先に飛び出したのはアオサギだった。
縛られた女の胸倉をつかんで一気に持ち上げた。
「このアマ! 自分が何したか、わかっとんのか!」
女はそっと目を開ける。
細い木みたいだ、とカナリアは思った。今まで見た誰よりも精気が無い。青白く細い手足がブラブラと揺れている。
「あなた、誰」
「俺はお前が殺した女の彼氏だ! お前のせいで…!」
「ああ…そう」
女はそう言って、目を閉じた。全てを悟っているような雰囲気だった。
「ごめんなさい」
アオサギの歯ぎしりが聞こえた気がした。女を掴んだ逆の手は、握り拳が固く握りしめられていた。怒りからだろうか、拳も震えている。
苛々した呻り声をあげて、アオサギは女を投げ飛ばした。
女は壁に頭を打って、小さく悲鳴を上げ、そのまま丸くなった。気絶はしていないらしい。
「ごめんなさい…」
彼女はまだ、小さくそう呟いていた。




