其の一
朽ちていく星ような、貴女の諦めた目が好きだと友人は私に笑いかける。破滅願望が有るのかと問うと、首を横に振る。
そのくせ、ふと思い出したように死にたいという。私もまた、希望と活力に満ちた友人の壊れた素顔を愛している。
私が友人と出会ったのは、高校を卒業してからだった。
半ば気が違ったようになりながら、坂を転がり落ちる心境で学生を終えた。私は進学も就職もしなかった。
学びの道を逸れてからは、当たり前のように白い服を着た他人にあれやこれや身の上話をして、ああだこうだと沢山名前を貰った。そして、色の着いた薬を渡されて、すっかり病人のつもりでふらふらとしていた。
病院の帰りに何度か同じ女性を見かけたが、そのことをさして気に留めてはいなかった。
ある朝起きると、薬が尽き、日付が3日も過ぎていた。
そして、部屋は散乱し字とも記号とも判別の付かぬものを書き連ねた紙が机に置いてあった。
私はいつの間にか、人である事を放棄していた。
死のうとしたことだけは無いというのが、未来と自身との僅かな鎹であると思っていたのを、あっさり破壊してしまっていた。
水気の無い体は、立ち上がるだけでミシミシと音を立てる。カーテンの隙間、細い光の棒が床へ真っ直ぐ伸びている。冷えた床もそこだけ暖かい。きっと外は暑いだろう。
私は部屋を片付けて身支度を整えてから、一先ず外へ出てみることにした。
玄関のドアを少し開き、外の様子を覗うと、空がとても綺麗だった、太陽が眩しかった。その鮮やかな生命の強さみたいなものは、目から心を突き刺して私を罵倒する。「命は弱さを許さない」独裁者の言葉を思い出し、ポツリと呟くと情けない気持ちになった。
私は、その日死のうと決めた。