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喋る電柱  作者: 兼平
7/9

「二本目」~電柱と犬~5

翌日、何故か電柱掃除をしなくてはいけなくなった僕は、電柱を磨きながら推理を繰り広げていた。

「だから、犯人は犬を攫って実験に使おうっていうつもりだったんだよ。それで町の犬を攫っていったんだよ。きっと、薬の実験には大型犬の方が良いとか言う理由で、安藤の家のラムが狙われたって言うわけ。どう?」

「映画か何かで聞いたことがあるような話ですけど、まあ可能性の一つとして、取っておきましょう」

「結構自信あるよ。この推理。それじゃあ、電柱はどんな推理をしたか聞かせてよ」

「そうですね。私の推理では、犯人はその安藤という女の子です。いわゆる自作自演というやつですね」

「は?何を言ってるんだよ。何で安藤がそんなことしなくちゃいけないんだよ」

「さあ。動機は分かりませんが、第一発見者を疑うのは基本です。動機なら、例えば、ラムさんを間違って殺してしまい、その証拠を隠滅するために、巷で話題になっている犬攫いの犯行に見せかけることで罪を逃れようとした、とか。ラムさんをほかのところに隠しておいて、犬攫いの振りをして両親宛に脅迫状を送りつける。脅迫状には、身代金の要求などが書いてあるのです。そして、見事両親から身代金を手に入れた彼女は、ラムさんが戻ってきたことを喜ぶ振りをしながら、影で身代金をお小遣いとして利用していくとかですかね。安藤さん、何か最近欲しいものがあるとか言ってませんでしたかね?」

「おい。何を突拍子も無いことを言ってるんだよ。推理はするって言ったけど、そんなことあるはず無いって」

「私が知っている推理小説などではこういった話が多かったんですがね」

電柱のくせになんで推理小説の内容を知っているのかって言う話は、ひとまずおいておいて、

「オッケー、わかったよ。本気で考えよう。さっきの僕の案も一旦白紙で。結局、動機が分かったって、ラムの居場所が見つからなければ意味ないもんな」

「お、私少し関心しましたよ。ちゃんとしたこと考えられるじゃないですか。その通りですね。まずはラムさんを助けることが一番ですからね」

電柱にほめられてもあまりうれしくないけど。

「では、考えましょうか。まず考えなければいけないことは、ラムさんがどこに居るのかということですね。それに繋がりますが、犯人がどこに居るのかということも知る必要があります。どちらも重要ですし、どちらかがわかれば、どちらも見つけることができるはずです。そのためには、まず犯人に近づく手がかりとなる、ヒントを集めていかなければなりません」

「ヒント?例えば?」

「それを今から一緒に考えるんですよ。答えだけを求めてはいけません。世の中には解答集がない問題もたくさんあるんです。そうですね、例えば、今まで起きた事件の場所を調べてみるというのはいかがですか。もしかしたら、傾向があるかもしれません。後は犯行が行われた時間帯、曜日、日付、なども。攫われた犬の種類なども知っておくと何かわかるかもしれません。どうでしょうか」

「すごい。それだけ分かれば何か一つくらい手がかりになるかもしれないよ。わかった。出来る限り調べてみるよ。でもどこで調べればいいんだろ」

「そうですね。まずは安藤さんから詳しい事情を聞くのが早いかと思いますよ。後は大人の人で信頼を置ける方、しかも子供の話でもしっかりと聞いてくれる人を探して味方につけることですね。子供だけでは限界があるでしょうから。それ以外ですと、事件にまつわる過去のニュースや新聞記事なども有効な資料になるんじゃないかと思います」

「うーん。こうやって聞くと、大変そうだな」

「当たり前じゃないですか。相手だってきっと捕まらないように考えているはずです。それを見つけようっていうんですから、大変じゃないわけがありません。しっかりと行動して、答えを出そうじゃありませんか。それではさきほどもお話したように、情報収集をお願いします。資料が無ければ方向性の見当もつけることができませんから。新しいことが分かり次第、随時報告ということで」

「了解。分からないことがあったらまた来るよ」

掃除で使っていた雑巾を絞って丸め、スーパーのビニール袋に入れながら、僕は電柱に別れを告げて学校に向かう。

途中、なんとはなしに振り返って電柱を見る。心なしか電柱はいつもよりもどっしりとしているように見えた。


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