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Prologue
「なんだよ・・・こいつ」
目を疑った。最初は夢とまで思った。それぐらいに目の前の光景は異常だった。
一人暮らしを始めて2年。大概のことは経験してきたつもりだったが、これは初めてだ。
玄関の前で、見知らぬ褐色の少女が倒れているなんて。
「おい、大丈夫か?」
彼女に近づき声を掛ける。
「んぅ・・・」
意識はあるようだ。
額に手を当てる。熱はない。
念のために脈を測る。脈拍正常。
ひどい状態ではなさそうだ。
医大のお荷物でも、基本ぐらいはできる。
「しかし・・・」
袋状にしたボロ布に穴を開けて、頭を通しただけの衣服とも呼べない格好。
春先の冷えた空気に晒されて、体は冷え切っているようだ。
「・・・ひでぇ格好だ」
少しだけ湧いた同情の心に今は従っておこうか。
いつもこのお人好しな性格のせいで貧乏くじを引かされるが、学習しないのがオレの悪いところなんだろうな。
「ぃよっと」
軽い。何を食ってきたんだろうか。
まともに食事を出来ていたとは思えない。
虐待だろうか。
とりあえず、布団に寝かせて部屋を温めることにした。
元気になりゃ良いんだがな。