表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

君の為に私を捧げる

作者: 尚文産商堂
掲載日:2011/03/14

気付いた時には、私は見知らぬ部屋にいた。

「えっと、これでいいんだね…」

さらに、目の前には、見知らぬ男が膝をついて私をじっと見ていた。

「おはよう。といっても、もう午後だけどね」

苦笑いをしながら、彼は立ち上がった。

そして、小さな私の脇を持って、棚へと座らせる。

「君の名前は…」

「私は、H-3993。AI搭載の電子レンジです」

「うん、じゃあサンだね」

「サン…」

「そう、君の名前はサンちゃん。初めまして。僕の名前は戸賀月戸(とがつきと)、君を買った本人だよ」

私は、その時初めて、彼をじっと見た。


狭いワンルームのキッチンの片隅で、私は部屋の全景をいつも見ていた。

すぐ横には、コンロのコンさんがいて、いつも何かに燃えていた。

率直に言えば、熱い男といったかんじだろうか。

私が座っている棚の下には、冷蔵庫のレイちゃんがいる。

冷え症だという彼女は、電気カイロで温まっていた。

その熱は、私のところまで伝わってくるときもあるほどだ。

さらに部屋を見回せば、テレビのテーちゃん、カーペットのカッくん、机のツーくんと個性豊かな面々がそろっていた。

テーちゃんは、なんでも知っていて、即答をモットーとしていた。

カッくんとツーくんは、同じところからもらわれてきた子たちで、とても仲良しだ。

いつも一緒に並んでいる。


「ただいまー」

彼が帰ってくると、私たちは声を潜める。

それまでいかに騒がしくしていても、それを彼の前で晒すことはできない。

そんな決まりだからだ。

「さて、今日の飯でも作るか」

そう言うと、レイちゃんが抱きしめていた冷凍食品を受け取ると、私に渡した。

「温めてくれるかい」

私はコクンと頷いて、冷凍食品を受け取り抱きしめて温めだした。

ギューッを抱きしめていると、一気に温まっていく。

「できました」

「うん、ありがと」

彼がそう言って、私から温まった食品を受け取った。

そして、ツーくんの上に置くと、テーちゃんからいろいろと情報を聞いていた。

カッくんの上に座りながら、ご飯を食べ、情報を見ていた。


それからしばらくの間は、テーちゃんを見ていた。

だけど眠くなってきたようで、彼は布団を敷き始めると眠り始めた。

「…お風呂とかは」

「いいんじゃない」

私が言うと、下からレイちゃんが声をかけてくる。

「私たちは、ここに基本的にずっといることになるけど、彼はあちこち動くからね。疲れたんでしょ」

私が答える。

「まあね」

レイちゃんが答えるけど、とろんとした眠そうな声だ。

「そろそろ私も眠くなっちゃった。おやすみ」

スッと声が途切れると、下から感じる熱がわずかに減っていく。

どうやらスリープモードに入ったようだ。

「お休み」

私はレイちゃんに言ってから、部屋の中を見回す。

全員がすでに眠っているようだ。

「おやすみ」

そこに見えるみんなに私がボソッと言ってから、ゆっくりと眠りに入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ