Future story-0002
編み物教室に通い始めて数カ月、マフラー、帽子、手袋、コースター、を編むのに夢中で、彼女の指先は経験値を積み重ねて、上達を知らぬうちに獲得していたのだった。
教室で出会った仲間たちと作品を見せ合い、意見交換、情報交換、失敗談などの時間もかけがえのない、楽しい時間になった。
教室では、”りーちゃん”という愛称で呼ばれていた。
「りーちゃん、めっちゃ上手、凄いね。同じ、感覚で編むのが難しいのよ」
「ありがとう、まだまだだと思っていたんだけど、そうやって、言われるとうれしい」
仲間たちの言葉はりのの心の支えの一つ。
ある日教室で先生から声をかけられる。
「りーちゃん、教室に教えに来てくれない?」
「えっ、私! そんな教えるなんて・・・・・」
「大丈夫、教え方は、私が教えるし、みんな喜ぶわよ」
先生に背中を押され教室の助手として、教え始めることにした。
初めの数回は、緊張していたりのは、回数を重ねるうちに、段々と教え方に慣れていき始めた。生徒たちの作品の完成までの過程が、成長を見ているようで、ワクワクしていた。そして、完成は自分の事のように嬉しい気持ちでいっぱいになる。
「りーちゃん、何回やっても、間違えて、何回もほどいて、でも、こんな素敵な、座布団カバーが完成したよ」
生徒たちからの笑顔に、りのは自分の存在意義をほんのり感じた。
自信と喜びを与えてくれた編み物、作ったマフラーを身に付ける夫の姿を想像しながら、微笑した。
今、生きていたら、応援し、支えの中の中心になってるだろう・・・・
"多くの人を喜ばせたいな・・・もっと、上達もしたい"と、自分の心を確認したりの。