表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Phantom World〜力を得た者たちのレクイエム〜  作者: 薪ストーブ
無色 空①
21/22

淫魔

 「初めは危機的状況に陥った時、防衛反応として力に目覚めるの。か~くんは(ひいらぎ)君に襲われ時、身を守るために力が発動したんだよね」

 「そうやな」


 「力に目覚めたら、次からは心で念じることで、自在に力を発動できるようになるわ。でも、力を自在に使いこなすには、自分の力の特性をきちんと理解することも大事ね。特にか~くんの力は、7王に匹敵する力があると思うの」

 


 たしかに時を操作する系の力は、ドラマやアニメでは、主役級やラスボス級のキャラが使う力である。雑魚キャラで時を操作するキャラは皆無であろう。



 「7王ってなんだ」



 傲岸も同じようなことを言っていた。



 「不遜(ふそん)君がいうには、この世界を統べる強大な賜物(カリスマ)を授かった7人のことを指すみたい。不遜君は7王の1人で傲慢の賜物(カリスマ)を持っているわ」

 「俺達の力とは全然違うのか」


 「うん。か~くんの賜物(カリスマ)はすごくレアなんだけど、7王の賜物(カリスマ)は全くの別物なの。7王の賜物(カリスマ)には()()()()()()という2つの権能が備わっているのよ」

 「眷属化と名付け」


 「うん。おそらく柊君は、暴食の王に眷属化されて泥人間(マッドマン)になったと思うの」

 


 確かに道路には柊の死体はなく泥だけが残っていた。



 「傲岸は俺を泥人間にするつもりか……」



 傲岸が下僕になれと言った言葉の真意は、泥人間にしてやると言う意味だったのか?



 「違うわ。7王はそれぞれ独自の方法で眷属化をするの。それに、賜物(カリスマ)を授かった人間は眷属にできないの。でも、そのかわりに名付けをするのよ」

 「名付けされたらどうなるのだ」


 「賜物(カリスマ)の力が増すのよ。私の眠りを誘う力は、不遜君に淫魔と名付けられたことで射程範囲が広くなり、効果も強くなったの。名付けをしていない時は、半径1m範囲の相手にしか睡眠効果がないうえに、即効性がなくてウトウトと眠気を誘う程度の力しかなかったのよ」



 確かに半径1mの範囲で即効性がなければ、あまり意味はないだろう。ウトウトした程度の眠気しかなければ、男性から襲われた時に、逃げる時間を少し稼げる程度で、撃退をするのは難しい。しかし、即効性があれば話は違う。昨日のように柊に襲われても身を守ることができる。



 「悪い点は?」



 物事は表裏一体だ。良い面があれば必ず悪い面もあるはずだ。そんなに世の中甘くはない。



 「眷属化は王には逆らうことができない奴隷になるけど、名付けの場合は自分の賜物(カリスマ)の効果が王に対しては無効化になるくらいかな」

 「そうなのか」


 「うん。か~くんは不遜君に名付けをしてもらわないの」

 「……」



 傲岸に名付けをしてもらえば、俺の力はより強大な力になり得るだろう。しかし、傲岸には俺の力が通用しなくなる。



 「迷っているのね」

 「あぁ」



 甘南備にとっては、名付けをしてもらうということは、仲間になるという解釈になるだろう。しかし、俺は知っている。先ほどの傲岸の態度からして、対等な仲間ではなく、王と奴隷のような天と地の差がある扱いになるのは明確だ。



 「不遜君は20歳の誕生日の日に賜物(カリスマ)の力に目覚めてからは、賜物(カリスマ)のことをずっと調べているの。この2年間で多くの人と会い、多くの場所に行ってるわ。私も協力できる範囲で協力しているの。か~くんも一緒に賜物(カリスマ)のことを調べようよ」

 「……」



 甘南備と仲間になるのは嬉しいことだが、傲岸が王として君臨している場所には行きたくはない。しかし、生殺与奪の権利は傲岸が持っている。



 「そうようね、少し考えたいよね。強引に誘うようなマネをしてごめんね」

 「……」



 甘南備は何も悪くはない。でも本当の俺の気持ちは言えない。



 「不遜君には少し待ってくれるように言っとくね」

 「あぁ」



 傲岸は欲しい物を全て手にしてきた男だ。長くは待たないだろう。



 「少し話がずれたよね。か~くんは力の使い方を知りたいのよね」

 「あぁ」


 「さっきも説明したけど力を使うには心で念じるの。私の淫魔は体から甘い香りを発して、その香りに睡眠効果があるの。だから、心で念じれば体から甘い香りが舞うの」

 「今も甘い香りがするんやけど力を使ってるのか」


 「これは香水よ。でも、普段から淫魔と似た香りの香水をつけていることで、カモフラージュをしているの。これは不遜君からのアドバイスね」

 「そうか」



 傲岸からのアドバイスと聞いただけでイライラしてしまう。



 「インちゃん、出ておいで」



 と甘南備が呟くと、甘南備の肩の辺りに10㎝ほどの揚羽蝶のような綺麗な黒い羽根を持つセクシーな妖精のような生き物が現れた。



 「な……なんやそれ」

 「可愛いでしょ」



 甘南備は愛くるしく笑った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ