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Phantom World〜力を得た者たちのレクイエム〜  作者: 薪ストーブ
無色 空①

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19/22

撮影

 「不遜(ふそん)君、今変な声しなかった?」



 俺の嗚咽を聞いた戸色(としき)が不安げに声をかける。



 「急にカラが気持ち悪くなって、吐きおったわ。俺が掃除したるわ」

 「うん」



 戸色は疑うことなく納得した。



 「お前、何汚してんねん。自分でふけや」



 傲岸は俺の髪の毛を掴んで耳元で呟いた後、俺の顔面を雑巾の代わりにして吐瀉物(としゃぶつ)に擦り付ける。酢のようなツーンと鼻につくようなにおいが、嗅粘膜を刺激して、再び胃の滞留物が込み上げそうになるがグッと堪える。



 「おいおいお前、雑巾よりも役に立たんわ」



 吐瀉物は床に広がるだけで、綺麗に無くならないのは当然であった。



 「しゃーないわ、お前脱げや」

 「……」



 俺は無言で首を横に振る。



 「口で言ってもわからんのなら、また蹴り飛ばすぞ」



 俺は再び蹴られるのが怖くて服を脱ぐ。



 「全部や。全裸になってパンツで拭けや」

 


 傲岸は上着だけでは満足しない。しかし、俺は全裸になりたくないので首を横に振って拒んだ。



 「うぁぁ~」



 再び、傲岸の蹴りがみぞおちに炸裂する。俺は嗚咽をあげてお腹を抑えながら悶え苦しむ。



 「なに、なに、なに、不遜君何をしているの」

 


 俺の嗚咽が隣の部屋まで響く。



 「カラ、かなり気分が悪いみたいやわ。ちょっとうるさいけど我慢してや」

 「うん」



 傲岸は扉を一枚挟んだ場所で、ジキルとハイドを演じる。



 「カラ、次は顔面を潰すぞ」

 「やめてください」



 傲岸の感情のない冷たい視線が、脅しではなく本気であるとヒシヒシと伝わってくる。



 「はよ全裸になってパンツでゲロを拭けや」

 「わかりました」



 俺は傲岸が怖くて従うことにした。ズボンを脱ぎ始めた時から、傲岸はスマホを手に取り撮影をし出すが、俺は気付いてはいなかった。



 「おりこうさんやな」



 傲岸は俺が全裸姿で衣服を雑巾代わりにして、吐瀉物を拭く姿をスマホのカメラ越しで見ながら愉悦の笑みを浮かべていた。



 「終わりました」

 「おもろい動画が撮れたわ。このことは絶対誰にも言うなよ。もし誰かに話したらこの動画を拡散するで」


 「誰にも言いません」



 脅迫されなくても誰にも言うつもりはなかった。全裸で自分のパンツで吐瀉物を拭かされたなんて、恥ずかしくて誰にも言えない。いや、誰かに言っても誰も信じない。傲岸はクラスメートや先生からの信頼を得ている優等生だ。それに比べて俺は真逆の人間だ。俺よりも傲岸の話を信じるのは必然だ。


 「聞き分けの良いヤツは好きやで。素直になったお前へご褒美をあげるわ」



 傲岸をそういうと、いきなり扉を開けた。



 「キャー――。いきなり扉を開けないでよ」



 扉を開けた先には、ベットに座りバスタオルで体を包んでいる戸色の姿があった。バスタオルで体は隠されてはいるが、胸の谷間が見え、太もももミニスカートよりも大胆に露出している。制服姿の戸色しか知らない俺にとって、バスタオル1枚で体を隠している姿は、全裸と同じくらいの性的興奮を誘発した。



 「え!なんでカラが裸なの?3Pなんてしないわよ」



 全裸姿の俺を見た戸色は、汚物を見るような蔑んだ目で拒絶する。



 「そんなんせえへんわ。カラは体調が悪くて部屋に戻ってきたみたいやねん。ゲロ吐いて服が汚れたから全裸やねん。でも、やっと体調は良くなったみたいやわ」

 「そうなの。カラが部屋で休むのなら私着替えるわ」


 「ちょっと待ってや。部屋を使わせてもらったお礼に、カラに修学旅行の思い出作らせたろや」

 「カラとHは無理よ」



 戸色は全力で拒む。



 「ちゃうわ。その姿のままでええねん。見てみいや。カラは興奮してチン〇立ってるやろ」

 「イヤ~~~」



 戸色は俺の股間を見て顔を真っ赤にして恥ずかしがる。俺は恥じらう戸色の姿と声を聞いてさらに興奮度が上がる。



 「カラ、俺からのプレゼントや。存分にシコれや」



 傲岸はハイドの顔を戸色に見せないように俺を睨みつけた。



 「イヤや。そんなん無理や」



 俺は泣きながら拒む。すると、傲岸は足を少しあげて俺のみぞおちを蹴る動作をした。



 「やめてくれ……」



 俺は両手でお腹を抑え付けて蹴りをやめるように懇願する。



 「ほら、見てみいや」



 傲岸は戸色の隣に立ち、少しだけバスタオルを取り上げた。戸色は座る込みすぐに両手で胸を隠した。


 

 「いやん」



 戸色は艶めかしい声を上げる。俺は恥ずかしくて、戸色から視線をそらしていたので、生のおっぱいを見ることはできなかった。しかし、欲望を抑えることができずに戸色のほうに視線を戻すと、手ぶら姿のエロい裸体が目に映り、無意識に股間に手がいった。



 「きも」



 俺が自慰行為を始めると戸色は軽蔑した目で俺をけなし、傲岸はスマホで撮影をしていた。


 


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