老猫モン
今度の正月は仕事があって帰省できず、私はアパートで一人淋しく年を越すことになった。
大晦日の夜。
こたつに入って寝ころび、テレビで歌番組を見ていたときだった。
ニャアー。
背後で聞きなれた猫の鳴き声がする。
――えっ?
驚いて振り向くと、そこにはモンがちょこんと座っていて、私をじっと見つめていた。
――これって夢なんだ。だってモン、ここにいるはずがないんだもの。
モンは私が小学生のとき、学校からの帰り道、雨でびしょ濡れになって鳴いていた。その捨てられた子猫を私が拾って連れ帰り、両親に泣いて頼み込んで飼い始めた。
実際、今も実家で飼われている。
ニャアー。
モンが哀願するような声で鳴く。
実家で一緒に暮らしていた頃、モンはコタツに入って私に甘えたいとき、よくこうして訴えるように鳴いていたものだ。
これは夢の中だと思いつつも、私はこたつ布団をはぐってモンを中に入れてやった。
モンが嬉しそうに身体をすり寄せてくる。
モンのやわらかな毛。
手で触れると、夢ではないように思えてくる。
私は急いでコタツ布団をはぐった。
だけどコタツの中は空っぽで、今の今までそばにいたモンは消えていた。
――もしかしたら……。
モンは人間の歳にしたら百歳に近い老猫。
何かあったのではないかと胸騒ぎがして、私はすぐに実家に電話を入れた。
「イヤな夢を見たんだけど……」と、電話に出た母に前置きしてから、「ここにモンが来てね、でもすぐに消えちゃったの」と、先ほどの不吉な夢のことを話して聞かせた。
母が言う。
「それって、たしかに夢かもしれないけど、モンは最期に会いに行ったのかもね」
「じゃあ、やっぱりモンは……」
「ええ、たった今」
母はそう言って、モンが死んだことを涙声で話した。
モンは死の間際、最後の力をふりしぼって、私に会いに来てくれたのだろう。
モン、ありがとう。




