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悪役令嬢のサラは溺愛に気づかないし慣れてもいない  作者: 玄未マオ
第7章 断罪イベントの果て
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第95話 ミリアの毒家族

「どんな薬かは知らないけど、勝手にしてくれ。公爵家ににらまれた娘なんて、うちだって邪魔でしかないんだ。記憶がなくなれば縁も切れるからありがたい限りさ!」


 ミリアの父が怒鳴った。

 酷薄なセリフにリーニャはショックを受けたようだ。


「どこまで疫病神なんだろうね。兄の力を奪った挙句、ここまで迷惑をかけるとは!」


 ミリアの母もうんざりした表情で言う。


「あの……、ミリアが兄の力を奪ったというのはどういう意味ですか?」


 言っていることが少々意味不明なので私は思わず質問を返した。


「わからないのかい? 兄のファヴォリットが魔力を持って生まれていたらうちはすべてうまく行ってたんだ。後から生まれた子のくせに……」


「平民の場合、魔力が現れるにしても、同じ家族内でそうなる子とそうでない子に分かれる場合があります。でも、それは魔力持ちの子が他の子の能力や運を奪ったわけではありません」


 平民の家に現れる魔力持ちの子について何か勘違いしているのかな、この人たち?

 私はつい真面目に説明してしまった。


「御託はいいんだよ!」


「長子が魔力を持たずに生まれたのは、後から生まれた子の責任ではありませんよ」


「ああ、やだやだ、お貴族様っていうのは屁理屈ばっかり。ミリアは後から生まれた上に女でもあったんだ、そんなのが魔力を持って生まれてきたからって何だというんだい?」


「ミリアが婿を取って貴族位を得る道だってわが国にはあります」


「婿は他人だろう」


 彼らの言葉からミリアが家族からどんな扱いを受けていたかがよくわかった。


「やめましょう、サラ様。この方たちにはいくら説明しても無駄です」


 私たちの会話を聞いていたリーニャが私に告げた。


「やっと、わかったわ。ミリアはあなたの真似をしていただけなのよ。自分が描いた理想に固執して、目の前にある相手の姿も心も見ようとしない!」


 ミリアの家族に対しては怒りを抑えきれなかったようだ。

 まず、母親に対し声を荒げる。


「いくらミリアに当たっても現実は変わらないのに、みっともない! そんな妻をたしなめず同調する父親も、母親の口車に乗って妹を下に見ている兄もみっともないことこの上ない!」


 なんだと、と、ミリアの父と兄が大声を上げたが、私たちの護衛として手練れの騎士が数名同行しているので、それ以上のことは何もできない。そして最後に彼女は静かにこう言った。


「サラ様、ご家族の了承を得るという目的は果たしたのだから帰りましょう」


 リーニャは泣くのをこらえている。確かにこれ以上の議論は無駄なようだ。


「あなた方にとってミリアと縁切りは『良い』ことのようで何よりです。ミリアにとってもあなた方と縁が切れるのはとっても良いことでしょう。では、失礼いたします」


 最後に言い捨て私たちはプレディス家を後にした。


 帰りの馬車の中でリーニャは泣きながら語った。


「もしかしてミリアは、乙女ゲームのシナリオ通り王族の妃となれば、家族も見直してくれると期待していたのかもしれません。そんな幻想にすがるしかないミリアの環境を、本当の意味では私は理解していませんでした」


 確かにそういう心理もあったかもしれないな。


「自分と同じ家族構成だからと思い込み、かんじんなことは何もわかってなかったんです。わかったうえでミリアと接していれば、今とは違った展開になったかもしれない。ごめん、ミリア……」


 あんな目にあわされたのに、やはりヒロインは優しいな。

 私は泣きじゃくるリーニャの抱き寄せて慰めるしかできなかった。

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