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悪役令嬢のサラは溺愛に気づかないし慣れてもいない  作者: 玄未マオ
第7章 断罪イベントの果て
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第94話 ミリアの処遇と良心の呵責

「記憶を消す薬は、忌まわしい経験によっていやしがたい心の傷を負った者にも使用されることがある。その場合は悪しき記憶の時点から消すのだが、経験が新しければ新しいほど消す記憶は少なくなるので緩い効果の薬を使えばいいし、副作用も軽微で済む」


「乙女ゲームの記憶って前世ですよね」


「ああ、そうだ。前世までさかのぼって記憶を消さなくてはならない。これには相当強い効果の薬を使わなければならないんだろう」


「そんな薬を使ってミリアは大丈夫なのですか?」


「命に別状はないよ。それに最近は副作用をうまく抑えるよう調整ができるようになっている。昔ならそこまでの薬を使えば魔力はゼロになる場合もあったが、今はそこまではいかない。しかし、ミリア・プレディスとしての記憶はすべて失われる」


「ミリアが別人になるということですか?」


「率直に言えばそうだ」


 この措置に自身のエゴが全く反映していないと言えばうそになる。


 それに、この手法を使うと本人が持っている魔力が減少するという副作用がある。

 ミリアの六属性すべてまんべんなく使える稀有な素質を消すことは、社会全体の損失ともいえる。

 だが、それでもやろうとしている。

 他にもっといい方法があるなら教えてくれ、と、開き直りながら。


「この薬の使用はご家族に報告し了承を得なければならない。記憶を失った後のミリアとのかかわりあい方などを相談しておく必要があるんだ」


「記憶を失い別人となった娘にどう接するか、複雑でしょうね」


「君は事件の被害者なので、加害者をどう処置したかは聞く権利があるし、同時に彼女の友人でもあったので、少し意見を伺いたいと思ってね」


 エゴだからこそ、その決定権を別の人間にゆだねようとする。そうすることで自責の念を打ち消そうとしているのかもしれない。


「ご家族がどういった反応をされるかわからないですね。私も正直言って複雑です。あんなことがあったけど、自分の中ではミリアはやはり友達ですし……」


「そうか……」


「その、サラ様はご自身でミリアの家に行かれるのですか?」


「そのつもりだ。この措置を提案した公爵家のものとして、そして学園の生徒会長として、ご家族には私が直接行って説明をする責任がある」


「私も同行させていただいてよろしいでしょうか?」


「そうしてくれるかい!」


 家族ぐるみの付き合いがあったと聞いていたので彼女の申し出はありがたかった。


 その日の夜、ミリアの家族が全員家にいるであろう時刻を見計らい、私たちは彼女の家に向かった。あの事件の後、一家は別のところに引っ越しており、リーニャはそのことを知らなかったようだ。


 隣家の娘にけがをさせ、しかも公爵家の娘にも冤罪を吹っ掛けようとしたのだから、元居た場所はいづらかったのだろうな。ミリアの母親は、訪問者の中にリーニャが混じっているのに気づくと、苦々しそうな表情を浮かべた。


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