第90話 エミール王子追放
「今回の件に関してはエミールの軽率が過ぎる。こいつには王族としての甘えと驕りを捨てさせる場所が必要だ。どれだけ相手に非情な振る舞いをしても自分は許される、そんな認識を、特に母上、あなたがそれを助長させてきた」
ジークの言葉には反論を許さない迫力があった。
国王の方は思うところがあったのか、ジークの言葉に同意の気配を見せた。
しかし、王妃の方は反論しようとなさっている。
「母上は黙ってていただきたい!」
ジークは厳しくそれを一蹴した。
怒鳴りつけられた王妃は口をパクパクし、その後、憤懣やるかたないという表情になった。
「ブリステル公爵、それでよろしいでしょうか?」
あっけにとられたような顔をしていた公爵が、ああ、と、短く返事をする。
隣に座っていたフェリシアもぽかんとした顔をしている。
ブリステル家との話し合いはそれで終わった。
公爵家の面々が退出され、部屋には王家の方々と私が残った。
「そもそもフェリシア嬢の優しさにエミールが間違った形で甘えていた時に、もう少し厳しい対応を取るべきだった」
ジークが再び厳しい口調で話し始める。
「何を言うの。生徒会室への出入り禁止を告げられてあの子はどれほど落ち込んだか!」
王妃が反論する。
それを決めた私にもきつい視線を送りながら。
「確かに、あれはそれなりに厳しい措置だったかもしれない。だがそれをもって反省させる機会をあいつから奪ったのは他ならぬ母上です!」
ジークがさらに反論する。
「駐屯騎士団の中でも、王宮に最も近い安全なところに派遣させるから心配はいらん。そこなら設備や教育施設も整っておるからな」
二人の議論に国王が割って入った。
国王陛下は頭の中でもうエミールの派遣先を決めたようだ。おそらくバルドリックも送られた中央の駐屯所だろう。
王宮から一番近い中央駐屯地はもっとも安全な駐屯地と言われ、ここ十数年死者は一人も出していない。新米騎士の教育施設、けが人の手当てをする医療施設、そして我が家門が運営する魔物をより効率よく倒すために研究施設なども併設され、一つの街のようになっているところだ。
夫である国王も自分サイドに立ってくれないことを知った王妃は泣きながら部屋を出ていった。
そして、王宮は翌日には早々にエミールを送り出した。
時間をかけると、王妃がどんな妨害工作を仕掛けてくるかわかったものではなかったからだ。
それにしても今回の件で完全に王妃の私への心証は悪くなったな。
破滅を回避しジークと結婚したとしてもやっていけるのだろうか?




