第84話 転生後の最悪な家族【ミリア視点】
この世界が前世でやった乙女ゲームの世界だと気づいたのは、近所に住んでいたリーニャにあってからだった。リーニャは屈託がなく、私と違ってキラキラしたものを持っている。やはり彼女がそのゲームのヒロインだったからだろうか。
私の家はリーニャの家と違って、兄を差し置いて魔力を持って生まれてしまったことを母に常に罵倒され、そんな母の態度を見て、父や兄も私を見下すようになっていた。兄は愚かな質ではなかったように思うが、そんな母の態度ゆえにうぬぼれが強い性格となっていた。
私とリーニャがもうすぐ学園に入学する頃、兄とこんな会話があった。
「あの娘はかなりの美少女になったな。ここを離れる前に俺のもんにするために口説いといたほうがいいかな」
何をとち狂ったことを!
兄は顔がそこそこ良かったうえにうぬぼれも強いので、口説けば女は誰でも自分になびくと思っていたようだ。
「あのね、私やリーニャがこれから行くところは貴族の子弟が多く集まっているところで、すごい人がゴロゴロ集まっているのよ。そもそもリーニャは貴族の子弟と結ばれれば永代貴族となることができるの。下手に兄さんが手を出してそれがつぶされたらクルージュ家の人に恨まれるわよ」
丁寧に説明したつもりだが、それが兄の癇に障ったようだ。
「なんだよ! つまりお前もそうだと言いたいのか! 俺を差し置いて自分が魔力持ちに生まれたからって偉そうにしやがって!」
立ち上がった兄はさっきまで座っていた椅子を蹴飛ばして倒し、そのまま部屋を出ていった。おそらく母に言いつけにいったのだろう。
しばらくすると母がやってきてすごい剣幕で私を罵倒する。
いつもそうだ。
兄と口論になると、どちらの言い分に筋が通っているかどうかに関係なく、私が責め立てられる。兄もそれが分かっていて、自分に勝ち目がないとなると母に言いつけに行く。
転生後の家族は最悪だった。前世の家族は愛情の示し方もその恩恵も平々凡々としていたが、生まれ変わった今もそちらに情を感じるくらいだ。
ただ最悪家族でも国の決まりには逆らえないので、私が学園の寮に入るのは止められない。支度金は最低限しかくれなかった。でも、制服は一着だけ支給されるし、食費もただなので寮生活で何とかやっていけている。
そして入学後、会うことができた。
ゲーム攻略対象者であるエミール王子やその側近に。
淡い色の金髪に碧玉色の瞳、整った顔立ち、エミール王子はさすがに別格。
でも、横暴なフェリシアのせいでエミール王子は生徒会の活動ができなくなっている。こちらがしっかりフォローすると何度も言うが、リーニャすら積極的になってくれなくなった。
本来なら、今は悪役令嬢とその取り巻きの嫌がらせが続くところだ。
持ち物を壊されたり水をかけられたり一番ひどいのは階段から突き落とされるだったかな。こちらは相手が行動するのを待って証拠集めをすればいいだけだったのだが、万が一動かなければそれに対応せねばならないだろう。
乙女ゲームのシナリオ通りに事が進行しているのを実感している時だけが、灰色の人生が虹色に変わったように感じることができた。私と違ってキラキラしているリーニャ。彼女が王子を攻略して第二部が始まったら、私も同じようにキラキラになれるだろうか。
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次回から新章です。




